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もう一人の俺  作者:
7/12

デート前日

カラオケで吹っ切れたことを学校でもしてみた。

サチコをあまり意識せず普通にしていたら、

最初はみんな「?」な感じだったがすぐに気にしなくなり、溶け込んでいった。


そんな深く考えることなかったじゃん。


サトシは毎日が楽しかった。

孤独だったサトシのときとは違い、

みんなと話していても楽しいし、家に帰ってもメールや電話をよくした。

ユウトとも電話をしたりした。

いつのまにか大好きだったゲームの存在を忘れていた。

サトシは今の生活が好きだった。


ただ、朝の準備だけは時間がかかった。

メイクをするのはやめたが、眉毛だけは書く練習をした。

おかげでなんとか普通にみえるように書けるようになった。



土曜になった。

午後、ミホと駅で待ち合わせをした。

なんでもデートに着ていく服を買うとか。

なんでそんなことをと反論したが結局行くことになってしまった。


サトシはデニムのショートパンツを履き、上はTシャツを着た。


駅に行くとミホがいた。


「ちょっと~なんでスッピンなの?しかも格好もラフすぎ」

「メイクなんて出来ないもん、それにあんな派手な服なんて着れないし」

「はー…、買い物して正解だった。

 それと帰ったらメイクの練習ね」


そういってミホは歩き出した。


早速服屋に入った。

ギャル服ばっかの店だった。


ミホがいろいろと手に取る。

「これなんかどう?」


丈が短いワンピースだった。


「無理」

「じゃあこれは」

「無理」

「これは」

「無理」


ミホは怒った。


「ちょっと、やる気あんの?サチコのために選んでるんだよ!」

「だってこんなの着れないよ。

 ジーンズにシャツでいいじゃん」

「そんな格好でデートいく女いないから」

「だからデートじゃないって」


ミホは何を言っても無駄だと思い、ある行動に出てみた。


「もういい、サチコがそんななら私帰る!

 もう友達もやめる!さよなら!!」


怒って出て行った。

サトシは慌てた。


ミホはサトシにとって今は一番の友達だ。

そのミホが友達をやめるなど考えられなかった。


「ごめん、悪かったよ。

 ホントごめん」

「じゃあ言うこと聞く?」

「うん」

「ちゃんと服選ぶ?」

「うん」

「メイクの練習する?」

「うん」

「明日のデートでユウトくんに気に入られるように努力する?」

「うん」

「ならいいよ」


ミホは心の中で舌を出した。


ミホが選んでいるとサトシはワンピースを手にしてみた。

黒をベースにした花柄のワンピースだった。

なぜかサトシはなんとなく気に入った。


「あ、それいいじゃん。

 ちょっと大人っぽいけどかわいい感じもちゃんとあるし。

 なんだ、サチコちゃんと選ぶ気あるんじゃん」

「そ、そういうわけじゃ」


結局、そのワンピースを買った。


次にアクセサリーを見に行った。

ピアスとネックレスを買った。


次は下着屋だった。


「一応勝負下着買わないと」


なんの勝負だ?


ミホが選んでいるとサトシの視界にひとつの下着が目に入った。

ピンクと白のチェックでレースがあしらわれていた。


あれ、かわいいな。


サトシはふと思ってしまった。


「なんかずっと見てるけど気に入ったのあった?」

「あ、いや別に」

「これ?」


サトシがかわいいと思ったのを手に取った。


「うーん、ちょっと可愛すぎるかなぁ。

 でも逆にギャップがあっていいのかも」

「いや、単にかわいいなと思っただけで」

「うん、これにしよう」


その下着を買った。



時間は夕方を過ぎていた。

夕飯を済ませると家に戻った。


「買ったの一回着てみようよ」


ミホが言ったので着ることになった。

ワンピースを着てアクセサリーを付けた。


「かわいいー、選んだの正解だったね。

 これならユウトくんも喜ぶよ」

「別に喜ばなくていいって」

「またそういうこと言う」

「それよりも着て気づいたんだけど、この服少し谷間見えるよね…」

「え、気づいて選んだんじゃないの?」

「全然、デザインだけで」

「いいじゃん、ユウトくんに少し見せてあげても」

「そういう問題じゃ」

「それより次はメイクの練習だね。

 私が明日してあげてもいいけど、落ちてきたときは自分で直さなきゃだから

 ちゃんとできるようになろう」


話は流され、メイクの練習に移った。


本格的なメイクは難しかった。

ファンデーションをぬるとムラが出た。

何度もやり直してやっと出来るようになった。

次にアイラインだが、これがホントに難しい。

目に入りそうでビビリながらやると全然引けてなかった。

これもなんとかクリアー。

アイシャドウもクリアー。

次に苦戦したのは、つけまだった。

すぐにズレる。

なかなか位置が合わない。

やっと何度やってもちゃんと付けられるようになった。

最後にリップ。


なんとか出来るようになった。

鏡をみると別人だった。

まさにギャルという感じだった。


「きっとユウトくんもかわいいって言うよ」

「別人すぎてビックリするんじゃん?」

「そんなことないって、むしろ惚れるよ」


ミホは笑っていた。


気がつくと12時を過ぎていた。


二人は慌ててお風呂に入った。

もちろん一緒に入った。


サトシはミホと入るお風呂が楽しくて好きだった。


午後から一緒にいて、散々しゃべったのに

お風呂でもずっとしゃべった。

なぜかミホとの会話はとまらなかった。


男同士の風呂とは大違いだ。

サトシは修学旅行とかで男同士で入っても会話などほとんどしない。

ほかの男もそうだ。

ほぼ無言。

それが女同士だとなぜこんなに会話をするのだろう。

サトシは不思議に思った。


お風呂を出ると、髪を乾かしベッドに入った。

いつも通り、ミホが胸を揉んできたので揉み返した。

ちょっとしてからミホが聞いてきた。


「なんかサチコ毎日楽しそうだよね」

「うーん、否定はしない」

「まだサトシに戻りたい?」


サトシは答えられなかった。

ただ学校行って、帰ってからゲームして、それの繰り返し。

友達もほとんどいないから話すことも少ない目立たない存在。

ケータイは持ってるけど鳴ることなどほとんどない。

もちろん親友もいない。

彼女なんていたこともない。

できる気配すらない。


今は友達がたくさんいる。

話す人がたくさんいる。

毎日頻繁にケータイも鳴る。

ミホという親友がいる。


比べると一目瞭然だった。

最近では女だということも違和感がなくなってきている。


黙ってるとミホが話し出した。


「私、前のサチコも好きだけど今のサチコも好き。

 前のサチコに戻ってきてほしいけど今のサチコがいなくなるのも嫌」


すごく複雑な心境だった。


サトシは本心を話した。


「私は…今の生活がすごく好き。

 友達なんていらないと思ってたけど実際に友達がたくさんいると友達って大切なんだと思った。

 親友なんて考えたことなかったけど、ミホと親友になれてホントよかった。

 ミホがいない生活は無理だよ。

 毎日会って、しゃべって、笑って…」


サトシは泣いていた。

今の生活がなくなる、ミホが親友じゃなくなる、

そういうのを想像したら涙が止まらなかった。


ミホも泣いていた。


「私だって同じだよ、サチコがいなくなるなんて」


二人は抱き合って泣いた。

しばらく泣いた。


落ち着くとミホが質問した。


「サチコはユウトくんのことどう思ってるの?」

「いいやつだと思ってるよ」

「好き?」

「うん、人間的に好き。

 ユウトとならミホみたいに親友になれると思う」

「そっかぁ、じゃあきっと付き合うね」

「なんで?」

「それって性別に関係なく惹かれたってことでしょ?

 でもいずれ性別を意識してくるよ。

 そうすると自然に付き合うんじゃないかな」

「そんなことないって、じゃあサトシに戻ったら

 ミホと付き合うの?」

「今のままの性格だったらありえるよ。

 でもサチコは女だもん」

「中身は違うよ」

「ううん、中身も女だよ。

 正確には女になってきてるよ」

「そんなことないって」

「あるよ、しゃべり方やしぐさも」

「それは慣れだよ」

「それだけじゃない、あそこまでしゃべるの好きな男ってそうそういないよ。

 もともと無口だったんでしょ?」

「それはそうだけど…」

「さっきの涙だってそうだよ、ああいう感情で泣くのって女だけだよ」

「…」

「服や下着だって結局サチコが選んだよね。

 ちゃんと自分の意思でかわいいのを」

「…」

「嫌だ?」

「…わかんない」

「そうだよね、でも無意識に変わってきてるのは事実だよ。

 きっと明日のデートでハッキリするんじゃないかな」

「どういう意味?」

「なんとなく」

「なにそれ?」

「だってなんとなくなんだもーん」


ミホが笑った。

つられてサトシも笑った。


「明日頑張ってね」

「うーん、頑張る…かも」

「かもじゃないの、おやすみー」

「おやすみ」


サトシはミホに言われたことを考えた。

中身も女…か。

まあいいや、自分じゃわからないし!


しかし、心の奥底では嫌な気持ちはしていなかった。




いよいよデートの日を迎えた。


「気合いれて準備するよ!」


サトシよりミホのほうが気合が入っていた。


サトシはまずメイクをした。

そのあいだにミホがコテでサチコの髪をいじった。


メイクが終わると髪も完成した。

ふんわり巻いてあった。


次に下着を着替えた。

ワンピースを着て、アクセサリーを付けた。

準備が終わった。


サトシが完璧と思ったが、ミホはなにか納得していなかった。


「そうだ!」


そういうとタンスを漁った。


「これ入れて」

「これなに?」

「パット、胸を大きく見せるの、こういうの大事なんだから」

「そうなの?」

「男の人は大きいほうが嬉しいでしょ」

「ああ、そんな気はする」

「でしょ、せっかくだから2枚入れちゃえ」


サトシの胸はボリュームを増した。

谷間が大きくなった。

サトシは恥ずかしかった。


「これ男が見たらやばいね」

「でしょ、やっぱパットはずそう」

「ダメ!これでいいの。

 少しはエロさも出さないと」

「少しどころじゃないし」

「大丈夫、自信もって!!

 それに常に谷間が見えてればサチコは自分が女だって意識し続けられるでしょ」

「それは確かに…」

「行こう、ユウトくんが待ってるよ」


家を出て途中でミホと別れた。


「いい、もう一度いうけどサチコはサチコなんだからね。

 サトシじゃないんだから、女なんだから。

 忘れちゃだめだよ。

 じゃあ頑張ってね、ちゃんと報告してね。

 もちろんいい報告を」


そういってミホは行ってしまった。


サトシじゃなくてサチコか…。

心でつぶやいて、胸元を見た。

女を象徴する谷間が服からこぼれている。


サトシは気合が入った。

よし!行こう!!!

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