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もう一人の俺  作者:
2/12

ミホはいい奴だった

サトシは部屋を漁ってるうちに

ある大事なものがないことに

気づいた。


生きがいのゲーム機がないのだ。

どうやらサチコはゲームをやらない

らしい。

女だからなくても

不思議ではないのだが。


最悪だ…


ショックを受けていると

ケータイが鳴りだした。

ミホだった。

サトシは無視した。

長い間鳴ってから切れた。


すぐにインターホンがなった。


ピンポーン♪


誰か来たみたいだが

気にしなかった。

下から話し声が聞こえる。

どうやら母親がいて、

出たみたいだった。


「サチコー、お友達よー」


サチコと呼ばれたが声は

いつもの母親の声だった。


ドンドンドン

上がってくる足音がした。


え?と思ったらドアを開けられた。


「ちょっと何なの一体!」


同じ年くらいの女の子が

怒りながら入ってきた。

よく見ると同じクラスの

大沢だった。

ギャルっぽくて接点もなければ

話したこともない。


「寝坊したなら寝坊したって

 言ってくれればいいのに

 電話しても人違いとか

 訳わかんないこと言って切るし

 メールも無視するし、なんなの」


大沢という女の子が一方的に

怒っている。


コイツか、ミホっていうのは。

下の名前なんて知らないし。


「なんで無視してんの?

 私なんか悪いことした?」


ミホは少し悲しそうだった。


サトシは困った。

無視もなにもなんて

説明していいのかわからなかった。


「サチコと縁切るよ」


そういうとミホは目に涙を

溜めていた。


サトシは慌てた。


「お、おい、大沢」


「なんで苗字なの?」

ミホは思わず聞き返した。

「サチコから苗字で呼ばれた

 記憶ない」


俺は大沢と話した記憶がないよ…


「なんか今日のサチコ変だよ!」


そりゃそうだ、俺はサトシだし。


サトシは考えたが言い訳が

まったく思い浮かばなかったから

真実を話すことにした。

どっちみち誰かに話したいという

のもあった。


だって…泣きたいのは

俺のほうだし…


「いいか大沢、俺の話を

 最後まで聞いてくれ」

サトシが話し出すとミホが

すぐに返してきた。


「なにその話し方」


サトシはイラッとした。

「だから最後まで聞けって

 言ったろ!俺が話し終わってから

 質問しろ!!」


サトシが怒鳴るとミホは驚いて

大人しく話を聞いた。


サトシは起きてからのことを

話した。

サトシという男だったのに

サチコという女になっていたこと、

どうやらサトシとサチコは

同一人物だということ。

サトシのときの交友関係のこと、

ミホとは話したことがないこと、

今現在わかっていることを

全部説明した。


「信じられないかもしれないけど

 以上が俺の起こった事実だ」


ミホは???状態だった。

当然なんだが…。


「つまりサチコであって

 サチコじゃないってこと?」

「そういうことだ」

「じゃあ誰なの?」

「だからサトシだよ」

「サトシって?」

「だから…」


サトシは何度も説明した。

ミホは半信半疑だが言ってることは

なんとなく理解した。


「じゃあ同一人物だけど

 中身が違うんだ。

 だったらホントのサチコは?」

「さあ?」


サトシはホントにわからないから

そう答えるしかなかった。


「確かに今のサチコ

 男みたいだもんね」

「まあ体以外男だからな」

「元に戻れるのかな?」

「わからん、でも戻らないと困る」


ミホは一緒に悩んでくれた。


コイツ以外といい奴なんだな。


サトシはミホみたいな人間は

好きじゃなかった。

うるさいしバカっぽいし。

おそらくサチコも嫌いなタイプの

人間だろう。

しかし話してみなければ

わからないもんだなと感じていた。


「とりあえずサチコが

 元に戻るまで私が

 友達になってあげるよ」


意外な言葉にサトシは驚いた。


「だって今のサチコのこと

 話しても誰も信じないと思うよ。

 かと言って誰か助けてあげないと

 キツいでしょ。

 このまま学校行っても

 不審がられるし」


ミホは真剣に言ってくれた。

サトシはミホに心から感謝した。

信じてくれたこと、

助けてくれることに。


「大沢、ありがとう!」


お礼を言われてミホは

少し照れていた。


「その代わりサトシはサチコを

 演じるんだからね」


ん?


「だって急変したら

 みんなおかしいと思うでしょ。

 全部は無理でもなるべく

 サチコにならなきゃ」


ミホが言ってることは

もっともだった。

今のままサチコの知り合いに

会えば誰もがおかしいと思うだろう。

「わかったよ…」

渋々サトシは返事した。


「とりあえずしゃべり方だね、

 まず私のことはミホって呼んで。

 サチコから大沢なんて

 呼ばれたことないよ」


サトシは女を名前で

呼んだことなどない。

それどころか女友達すら

いたことがないのだから。


「わかったよ、ミホ」

「うん、明日は学校だから

 今日は徹夜だな」

「徹夜?だったら休むからいいよ」

「ダメだよ!サチコ出席日数

 ギリギリだから

 卒業できなくなるよ!」


思わぬ話にサトシは驚いた。


「はい?出席日数ギリギリ?

 俺はちゃんと学校行ってるぞ。

 サチコは病弱なのか?」

「違うよ、サボって男と

 遊んでばっかなんだよ」 



やはりサチコはバカだった。

サトシは呆れた。

そしてサチコが嫌いなタイプから

大嫌いなタイプに変わった。


これから徹夜でサチコを

演じるためのレクチャーが

始まる。





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