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もう一人の俺  作者:
12/12

マルチエンディング②サチコ

目が覚めた。

よく見ると、隣でミホが眠っていた。

体を確認すると、サチコだった。


安心するとサチコは泣き出した。

その泣き声でミホが目を覚ました。


「サチコどうしたの?」

「ミホ~」


サチコはミホに抱きついて大泣きした。


サトシに戻った話をすると、ミホが慰めてくれた。


どうやら夢だったらしい。

日付もミホと寝た翌日だった。


「サチコはもうサチコなんだから大丈夫」


そう、私はサチコ。

サトシではない。


相変わらず楽しい日々が続いた。

しかし、ここで問題が発生した。

進路のことだった。

サチコは何も考えていなかった。

もちろんミホも考えていなかった。

ユウトに聞いてみると同じだった。


基本的に遊んでばかりで勉強などまったくしない彼女らにとっては同然のことだった。


ことろが、アキは違っていた。


「私?短大行くよ」


アキは同じ人種だと思っていたが、最低限のことはしていたらしい。

さらに、サヤカに聞いてみた。


「実は美容師になりたいんだよね、だから専門学校に行くよ」


サヤカに至っては将来の夢、希望というのをしっかり持っていた。


サチコはなにもない。

ただ、毎日楽しく過ごすだけ。

それしか考えたことがなかった。


将来の夢、私は何がしたいんだろう…



「ユウトは将来なりたいものとかないの?」


学校の帰りに待ち合わせして、ユウトとマックに行ったサチコが聞いた。


「将来ねぇ、サチコの旦那になりたい」


サチコはユウトを蹴っ飛ばした。


「痛て、なにすんだよ」

「真面目に聞いてんの!」

「俺だって真面目に答えたよ」

「バカ!そういうんじゃなくて、高校卒業してからのこと聞いてるの」

「まだわかんねーよ」

「あと半年で卒業なのに?」

「とりあえず卒業してから考えるよ。

 適当にフリーターでもしながら」

「そんな彼氏嫌だ」

「え?ダメ??」

「ダメダメだよ、私今日は帰る」

「お、おい…」


サチコはユウトを置いて帰った。

すぐに電話がかかってきたが、出る気にはなれなかったので無視した。


その夜、サチコは真剣に考えた。

サトシの頃は何かなりたいものとか、進路希望とかあったのだろうか?

恐らくなにもなかった。


サチコでもサトシでも結局なにもないんだ。

原点は一緒なんだ。


サチコは天井を眺めた。


世間的に高校を卒業すると、多いのが大学…

この頭じゃ無理だ。

………ホントに無理なのかな?


翌日学校に行くと、担任の加藤に相談してみた。


「珍しいな、まさか進路の相談なんかしてくるなんて」

「これでも真面目なんですよ」

「悪い悪い、それでやりたいこととかあるのか?」

「それが何もないんです。

 でも行きたいところならあります。」

「どこだ?」

「大学です」

「は?本気で言ってるのか?」

「本気です!」


加藤は回答に困っていた。

それはそうだ、サチコの学力では間違いなく無理、誰もがそう思うだろう。


「本当に本気なら答える」

「だから本気なんです!」

「わかった、まず99%無理だ。

 成績はいつも赤点すれすれ、出席率も卒業ギリギリ。

 正直、俺は学校を辞めるとまで思っていた」

「辞めない、辞めたくないから毎日ちゃんと来てます」

「そうだな、ここ数カ月は無遅刻無欠席だもんな」

「やっぱり…大学は無理なんですね」


サチコは落胆していた。

加藤はその様子を見て何か言わなければと思った。


「い、いや今のままだとということだ。

 今から試験まで死ぬ気で勉強すればひょっとしたら。

 あとは浪人という方法もある」

「勉強すれば可能性はあるんですね?」

「かすかにだぞ!本気で狙うなら浪人したほうが」


加藤が言いかけてるのにサチコは立ち上がった。

「今から猛勉強します、先生ありがとう!」


言うとサチコは飛び出した。


教室へ行くと、ミホたちに大学に行くと宣言した。


「本気?無理に決まってるでしょ」

「先生が猛勉強すればひょっとしたらって言ったもん。

 そういうことで今日から勉強するのでみんなとは遊べなくなるから」


そう宣言するとサチコは図書室へ向かった。

みんなポカーンとしていた。


サチコは帰りに参考書を買っていった。

開いてみるとサッパリだった。

しかし、諦めずに取り組んでみることにした。


少しするとミホから電話があった。


「大学行くって本気なの?」

「本気だよ、やっぱりこのまま遊んでていいとは思えないもん。

 無理でも無謀でもチャレンジしてみたいの!

 私だってやれば出来るというのを見せたい!!」

「わかった…サチコには連絡しないようにするね。

 あ、誤解しないで、サチコの邪魔をしたくないからって意味だよ。

 試験終われば普通に今まで通り」

「ミホ…ありがとう」

「頑張ってね、私もサチコ見てなにかしなきゃって思えたし」


サチコの行動はミホの心を動かした。

きっとミホならいい進路を見つけられると思う。

問題はあと一人だった。


サチコはそのまま電話をかけた。

「なに?」


ユウトはふて腐れた感じで電話に出た。

マックでケンカして以降、無視し続けたのにムカついているのだろう。


「ユウト、私大学に行きたいの」

「はぁ、無理に決まってるじゃん」

「本気だよ、今から毎日勉強する。

 塾にも通うつもり」

「どうしたんだよ、急に。

 こないだから将来の夢とか言い出すし」

「ちゃんと考えたの、将来のことを。

 絶対にこのままでいいはずないもん」

「だからって大学なんか無理にきまってるじゃん」

「ユウトはやる前から無理って決めつけるんだ。

 ユウトなら背中を押してくれると思ってた」

「いや、そういうつもりじゃ…

 けど、それじゃ俺たち遊んだりできないじゃん」

「そうなるね、それに関しては本当に悪いと思ってる」

「だったら」

「ユウトが無理だっていうなら別れてもいいよ」

「それ本気で言ってるのか?」

「本気、それぐらい真剣に将来のこと考えてる」

「…わかった」


そういうとユウトは電話を切った。


ユウトならきっとわかってくれる。

サチコはそう信じて勉強に戻った。


半月後、サチコは塾に通った。

明らかに場違いな感じだが、他の人は勉強に必死でサチコのことなど気にしていなかった。

塾が終わり、帰ろうとすると肩をたたかれた。

振り向くとミホだった。


「私も大学目指してみることにした」

「ホントに?」

「サチコ見てたら私もやってやるって気になって。

 みんなを見返してやろうよ」

「絶対にね」


まさかの展開だったが、サチコとミホは真剣に勉強した。

最初はまわりも半信半疑だったが、二人を見ていて本気だと思った。

そうなると誰も邪魔をする人はいなかった。

アキたちもそんな様子を見守っていた。


久々にユウトから電話がかかってきた。

サチコは勉強を中断して出た。


「勉強頑張ってる?」

「うん、どうしたの?」

「俺もいろいろ考えたよ、将来のこと。

 シェフになる」

「え?」

「こないだテレビ見てたらシェフのかっこよさに吸い込まれちゃってさ。

 そうしたらいてもたってもいられなくて、家で毎日料理してるよ」


ユウトは電話で笑ってた。


「真剣だぜ、専門学校も決めた。」

「ユウト…」

「だからサチコも勉強頑張れ!!」

「ありがとう」


サチコは泣いてしまった。


「おい、泣くなよ」

「だって…」

「そのかわり、試験が終わったらちゃんと戻ってこいよ。

 待ってるから」

「ありがとう…」


やっぱりユウトはわかってくれた。

そして将来のことをちゃんと考えてくれた。

ユウト大好き!



2学期の期末テストが行われた。

サチコの成績は信じられないくらい飛躍していた。

ミホはサチコほどではないが、やはり上がっていた。

担任の加藤は驚いていた。


「これなら本当になんとかなる可能性も出てきたぞ。

 お前たちはすごい!」


この言葉でやる気はさらに増した。


クリスマス、この日もサチコは勉強をしていた。


ピンポーン♪


誰もいないのでサチコは玄関に行った。

「はい」


開けるとユウトがいた。


「久しぶり、勉強の邪魔しちゃいけないと思ったんだけど今日クリスマスじゃん。

 だからプレゼント持ってきた」

「え?」


ユウトの思わぬ行動にビックリした。

「私なにも用意してない…」

「いいから、気にすんな」


そういうとユウトはプレゼントを渡して帰った。


帰り際にユウトが言ってきた。

「お返しは試験後にたっぷりしてもらうから」


笑いながらユウトは帰った。


サチコはプレゼントを開けた。

指輪が入っていた。

さらに手紙も付いていた。

手紙を読んだ。


「疲れたときに指輪を眺めてくれ、俺はいつでも側にいて応援してるから」


ユウト…


サチコは大泣きした。


その日から、サチコは指輪をはめて勉強した。


年が明け、センター試験がやってきた。

結果は思ったより悪かった。

ミホのほうも同じだった。


もっと頑張らなきゃ!!


そしてついに大学試験を迎えた。

サチコもミホもいくつか受けた。


やれるだけのことはやった!

あとは結果を待つだけだ。


「やっとユウトくんに会えるね」

「うん、長かった」

「今日会うの?」

「もちろん」

「よかったねー」


待ち合わせ場所に行くとユウトがいた。

サチコはいきなり抱きついた。


「わっビックリした」

「会いたかった」


サチコは強く抱きついた。


「おい、まわりの人たちが見てるぞ」

「別にいい、こうしたかったんだもん」


ユウトのぬくもりがサチコはとても心地よかった。


「おかえり、サチコ」

「ただいま、ユウト」




卒業式を迎えた。


サチコはミホとアキとサヤカの4人で校門を出た。


「今日でこの学校ともお別れか」

「みんなとも会えなくなるし、さみしいね」

「うん…」


みんなしんみりしていた。


「でもこれからもいつだって会えるじゃん」

ミホが明るく言った。


「そうだよね、バラバラにはなるけど遊んだりしようね」

サヤカも明るく言った。


「それにしても…サチコとミホが本当に大学に行くとは思わなかった」

アキが笑いながら言った。


サチコとアキは見事に合格したのだった。

お世辞にも頭のいい大学とは言えないが、

二人にしてみれば奇跡を起こしたようなものだった。


こうしてサチコの高校生活は終わった。

サチコになったとき、どうなることかと思った。

しかし終わってみれば最高の結果となっていた。

サチコはサチコになれたことを心から感謝した。


サチコはこの先、サトシに戻ることはなかった。

サトシになる夢を見ることもなかった。

サトシのときの知り合いが誰もいない、

本当の意味でのサチコとしての新生活が始まる。


サチコは心の中でつぶやいた。


さようなら、サトシ。

そして、これからずっとよろしくね、サチコ。


もう一人の俺、いかがでしたか?

最後はサトシに戻って終わりにする予定でしたが、

途中からサチコの終わりも書いてみたくなりまして

2つのエンディングを用意しました。

ただ、サチコ編は微妙になってしまいました。

大学とか話が飛び過ぎですよね(汗)

なんとかサトシ編と違う感じで前向きにしたかったんですが…

自分の発想力の足りなさを痛感しました。

とりあえず、サチコ編はオマケと思ってください(笑)


あとはミホの恋愛とかも書けばよかったと思ってしまいました。

サトシとのじゃなくて。

なんかいい人キャラだけで終わっちゃったんで…


などなど、いろいろ言い出したらキリがないほど反省点があります。

次回作はもっといいものを書けるように頑張りますので

読んでくださった皆様、今後ともよろしくお願いします<m(__)m>

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