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魂送り  作者: 緋夕 夜菊
プロローグ
8/14

死希送り (上)

「よし、(れん)。入口まで走るぞ」


 不意に詞音(しおん)がそう言った。


「は? いや、何故に!?」

「ここじゃ狭すぎて動けない」


 詞音はそう言うなり、漣の腕を無造作に掴んで洞窟の出入口に向かって走り出した。2人の靴音が洞窟内に反響して消えていく。それを追うように、魔物の群――恐らく最初に見たときよりも増えている――が轟音にも似た音を響かせながら2人についてきていた。



――――…



ようやく先の方に白い光が見えた。そこに飛び出した2人は、眩しさに目を細める。それもつかの間、後ろから響いてきた音でハッと我に返る。


「そんじゃあ、前衛ヨロシク」

「……りょーかい」


 漣がしぶしぶといったふうに返事をして手に持っていた槍を構えなおす。

 一方詞音は漣に隠れるようにして後ろに下がり、拝むように手を合わせて目を閉じ、小声で何か――恐らく呪文のようなもの――を呟きはじめる。

 その間に魔物の群は洞窟から外へ出ていた。これ以上数が増えることはないだろうとは思うが、どちらにせよかなりの数であって、正直一体一体相手にしていては埒があかないし、此方(こちら)の体力も持たない。よって、漣は襲いかかってきたものだけに攻撃を仕掛けることを決めた。

 そうこうしているうちに群の中から肉食獣のような姿をした数体が漣に向かってきた。

 魔物は大抵、その外見で大体何に特化しているのかが分かる。分かりやすい例を挙げれば、人型(ひとのすがた)ならば、知能が特に優れている反面、動きはそこまで素早くはなく、どちらかと言えば鈍いといった具合だ。

 今連に向かって突進している獣のような姿をしたそれは、動きが早く、まともに攻撃を食らえば致命傷にもなりうると言う厄介な相手だが、人型に比べればそこまで知能は高くない。それゆえ、行動パターンが単純なので攻撃が読みやすい。


「さて、どこから相手をしたものか……」


 考え込んだのもつかの間、獣の姿をした魔物が漣に飛び掛ってきた。どうしてやろうかと考えていた漣にとっては不意打ちもいいところだったが、彼の反応の方が早く、魔物の横腹めがけて槍を力任せに一閃し、空中から叩き落した。地面に激突した瞬間に奇妙な鳴き声があがったが、漣はそれを無視し、続いて突っ込んできた二体目に槍の穂先を突き入れる。それは吸い込まれるようにして魔物の額に命中し、こちらは声を上げることなく絶命。引き抜いた槍に付着していたねばねばした液体を振り落とし、彼は再び槍を構えた。

 詞音の詠唱(?)はまだ続いている。漣はいつまた襲ってきてもいいように油断なく群を見据えた。

 むこうもどうやら此方の様子を伺っているらしく、一体も向かってくる様子はない。


「こっちから突っ込むわけにも行かないもんでな」


 「待つのは性に合わないけど……まぁ、出来れば来ないでくれると凄くありがたいんだけどな」と、誰に向けたわけでもなくそう続けた。独り言を言いながらも視線は逸らさない。逸らした瞬間に攻撃を食らえばひとたまりもないからだ。

 ――と、漣はまたもや数体のみ群から離れて此方にやってくる姿を確認した。いっその事こっちに来なければよかったのに、などと考えながらも彼は槍の柄の部分をぐっと握り締めた。


「ちょっと下がって」


 もう自分から此方へ向かってくるあの数体を倒してこようかと考えて、漣が一歩を踏み出そうとしたその時、聞き慣れた声が彼の耳に届いた。同時に体ごとぐい、と後ろに引き戻される。

 何事だと一言言ってやろうと思って振り向こうとすると、今度はあまり馴染みのない音が聞こえた。それはまるで、何十個もの鈴を一度に鳴らしたような、そんな音であり、それと同時に漣にあることを思い出させた。

 涼やかな音を聞きながら、漣は思った。



嗚呼、死希(しき)送りが始まる、と。

死希(しき)送りと魂送りは大体同じような意味でとらえていただければと


魂送りは死者の魂を送る

死希送りは魂送りに浄化(魔物に変化してしまった魂を元に戻す(?)みたいなもの)が追加された感じです

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