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Ⅴ-④

実は私が事故などにあった時のために、恵の症状や私の意向を書き記した手紙が机の引き出しの中にあるのだ。私が生きている内は納得しないかもしれないが、私が死ねば恵も納得して一人で頑張って生きてくれるだろう。それに借金取りだってこの異常な状態の中で恵にすぐにはひどいことをしないだろう。

そうだ。

恵を手紙と一緒に外に送りださなければいけない。

 …

思考を絞った結果、ギリギリの状態の中で恵を助ける究極で唯一の方法を思いついた。私は出せるだけの力を使って着ていた物を全て脱ぎ全裸になった。寒いはずなのに寒さは全く感じない。

そして、私の奇行に驚いている恵に向かってこう指示を出した。


「恵。お姉ちゃんを食べなさい。」


久しぶりに出す声で掠れたこともあり、恵にどれくらいの理解ができたのか不明だったが、更に驚いている表情から、何らかの意図を汲み取っているのを見て取ることができた。

恵はしばらく考え込むように固まった後、ヨロヨロと立ち上がり、スケッチブックを持ってキッチンの方へフラフラと歩いていった。

 そう、そうよ恵。キッチンには包丁もライターもあるのだから、それを使って私を食べなさい。おいしくはなくても少しは動けるようになるはずだから。

痛いのは昔から嫌いだけど、多分もう痛みなんて感じないのだろうな。

でも多分私はもうすぐ死ぬ。だから、恵が戻ってきたら私の死後に食べるように指示しよう。そうすれば苦痛で苦しむ姿を見なくて済み、恵だって少しは罪悪感を感じなくて済むだろう。

 そんなことを考えていると、恵が同じようにふらつく足取りで戻ってきた。手に何か持っているように見えるが、もう目がかすみ遠くの物は良く見えなくなっていた。

多分私を食べるための道具だろう。

あまり想像したくなくて目を閉じた。

 恵がゆっくりと私の隣に座ったようだ。

体温が感じられ、手が私の肩に触れた。

「恵あのね、今じゃなく…」

「お姉ちゃん、はい。」

私が喋るのを遮って、恵は裸の私に自分の着ていたカーディガンを掛け、何かを手渡した。

ゆっくりと目を開けてみる。

そこにあったのはいつも飲んでいる、あの味のない薬の薬箱だった。

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