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Ⅳ-③

全然悲しくないのに涙が自然に流れてきた。

春川君に悟られないようにとっさに下を向いて隠そうとした、が遅かった。

「北原さん!?大丈夫?」

彼は本当に真剣な顔で問いかけてきた。

「大丈夫。なんでもないから。」

必死で取り繕おうとして声を絞り出した。

「俺、北原さんが苦しんでいるの知ってるから、無理しなくていいよ。家庭の事情みたいだからあんまり深入りするのは悪いと思うけど、みんな噂してるよ。お金に困ってるんでしょ?俺、力になるよ。」

真剣に語りかける彼の眼差しとその言葉を聞いて、弱り切っていた私の心は完全に折れてしまった。そして不覚にも泣き崩れてしまった。絶対に折れないって、一人でがんばるって決めていたのに…

私は泣きながら春川君に全てを話した。お母さんの事も、お父さんのことも、恵の事も、そして借金の事も。春川君は全てを包み込むように優しく聞いてくれた。そして全てを聞き終わるとしばらく考え込むように俯いた。少しの沈黙の中で聞こえる私のすすり泣きだけがとても恥ずかしかった。

「よし!分かった。俺に任せといてよ。俺はお金そんなに持ってないから助けてあげられないけど、俺の友達にそういうお金に困った人のために貸してくれることを仕事にしてる人がいるから、その人を紹介してあげるよ。今日仕事が終わってからちょっとだけ付き合ってよ。」

そう彼が提案してくれた。コネのない私にはこの上ない提案で、断る理由なんてない。私は無言でうなずいた。

「このことは俺と北原さんの秘密にしておくって約束するから安心して。」

春川君は優しくそう言って、涙を拭くためのハンカチを置いて屋上から立ち去っていった。私は落ち着きを取り戻しながら、仕事に戻ることにした。

なぜだか安堵感に包まれていた。

まだ、何も解決してはいなかったのに…

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