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Ⅲ―①


 私は仏教徒だった。それも厳格な。


だからと言って、仏教の教えに従順であることで救われるとも思ってはいなかった。


ただ、不殺生戒を含む数々の戒律や教えが、私の考えに一致していただけのことだった。





 2015年8月


お母さんが死んだ。


大好きだったお母さんが。


どうしようもないお父さんからいつも守ってくれた優しいお母さん。いつも自分のことよりも、私や恵のことを優先して考えてくれたお母さん。病気で苦しんでいるのに、病院に行きたいとは一言も言わなかったお母さん。


死因は急性心筋梗塞だった。おそらく病院に通えて、適切な処置と薬があればもう少し長生きが出来たんじゃないかと思う。病気で死ぬことは仕方のないことだと覚悟していたつもりだったけれど、実現してしまうと到底納得など出来るはずもなく、私はお母さんが死んだ事実を受け入れられずにいた。そして、お父さんが死んだ時には一滴も流れなかった涙という液体が沢山溢れ、私の心を満たしてしまった。それはまるで海に沈んだ電化製品のように機能を失い、あとに残ったのはからっぽの体だけだった。


私より感性の豊かな恵は赤ちゃんのように、泣いて、寝て、泣いて、寝てを繰り返した。おそらくそれはお母さんが死ぬときに一緒に家にいたことも影響しているのだろうと思う。私は仕事で家にいなかったから分からないけど、恵はきっとお母さんのひどく苦しんでいる姿を多かれ少なかれ見てしまったのだろう。


恵のことも気になるが、私も人の心配が出来る程の精神状態ではない。きっと私も恵も心が壊れてしまって、いくら上手に直そうとしても、二度と元には戻らなくなってしまったんだと思う。


 ああ。。お母さん。会いたいよ…




私は家から程近い流安寺というお寺に来ていた。私の懇意にしているお寺だ。お通夜もお葬式もお金のかからないように密葬にしてもらえたのも、ひとえに住職の田所さんのおかげだった。そうでなければおそらく金銭上の問題でお葬式を執り行うことはできなかっただろう。田所さんはお父さんの古くからの友人で、昔から良くしてもらっている。そして私が飲んでいる薬も住職から買っているものだった。

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