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Ⅰ-①

 私にはお金がなかった。

そして希望もなかった。

世の中お金が全てではないと信じたかったけれど、

私にとってはお金が全てだった。


2015年4月

「さあ、今日も頑張るぞ」

私、北原希望きたはら のぞみの一日は、ガヤガヤとした喧噪のオフィスで発せられる、この一言から始まる。

厳密に言えば目を覚ました瞬間から一日は始まるに決まっている。だが、朝日が昇るよりも早くに起きて洗濯物を干し、朝食の用意をして妹を起こし、質素な朝食を済ませてから、満員電車にゆられて会社を目指す、ろくに化粧をする時間なんてない、そんな時間は私にとっては一日の始まる前の時間なのだ。いや、そう思いたいのだ。

と言っても、私自身のために言っているのか隣の先輩のために言っているのかひどく曖昧なその一言に、一日を開始するだけの力があるはずもないことは、私自身十分分かっているつもりだ。それでも言わなければならない、そんな言葉が世の中にはある。

 隣の先輩社員、高野陽子は私の言葉を聞いているはずだが、一度も目をくれたことはなく、無言で携帯電話をいじっている。 私は持ったことが無いから分からないけれど、そんなに毎日、毎日見るようなものがあるのだろうか?少なくとも20年前には無くても社会は成り立っていたはずの物だから、私にはそこまで大事な物、必要がある物には感じられない。

こう言うと大層な思想を持って電話を不携帯していると思われてしまうかもしれないが、私が携帯を持たない理由はもっとシンプルで、単純に持つだけの金銭的余裕が無いというだけのことだった。だから、その結果として思想を持つに到ったというのが適切だろう。言ってしまえば単なる貧乏人のひがみだ。もちろん友人が持っていて羨ましさを感じたことは何度もあった。しかし、ドントではなくキャントの壁がそこにはあって、一般人が自家用ジェットを持てないのと同じくらい私には携帯電話を持つのは難しいのであった。

 ポーン

そんなことを考えていた私の耳に、短波ラジオから大きな、インターホンを鳴らすような音が聞こえてきた。そんな軽い音じゃなくて、『ドカン!』とか爆弾が爆発するような音にでもすればいいのに。私はその音を聞くたびに思う。



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