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Ⅱ-④

私が食べるのが遅いのは昔からの事であり、ちゃんとした理由がある。それは私が昔からお金のない家で育ったため、食べ物を良く噛んでしっかりと味わうようにお母さんから教育されていたためである。飽食のこの時代に、と笑う人はいるかもしれないが、それぐらい私たちは今も昔も貧乏だった。習慣というのはなかなかなおらないもので、私は春川君だけでなく、他の友達(今はほとんどいないが)と食事をする時にも、出来るだけ迷惑をかけないように、早く食べることを心がけているのだが、いつも私が最後に食べ終わり迷惑をかけてしまう。


 そんなことを考えていると、春川君がふいにこう切り出した。


「ねえ。星の王子様って読んだことある?」


唐突な話題で少しびっくりしたが、もちろん読んだことがある。


というか人生で読んだ本の中でトップ10に入るくらいの名作だと思っており、何度も読み返していた。


「もちろんあるよ。私の大好きな本だよ。


内容も素敵だけど、私はサン=テグジュペリの絵が簡素で幻想的でありながら、訴求力があって好きだなぁって思うの。」


「そ、そうなんだ。詳しいね。」


しまった。突然私の好きな本の話題が出てきたから語りすぎてしまった。普通の女の子はこんな表現使わないんだろうな。春川君は、私が予想以上に深い感想を述べたので驚いているようだったが、語りたいことがあるようで先を続けた。


「じゃあもしかしたら台詞も覚えてるのかな?俺も子供のころに母親に読んでもらってファンになって、今でも実家にはおいてあるんだ。その中に筆者の台詞としてこんなのがあるのを覚えてるかな?


『友達を忘れてしまうのは悲しいから。


友達は、誰にでもいるわけではないから。


そして僕だって数字にしか興味のない大人になってしまうかもしれないから。』


って台詞があってね。」


そういって彼は少し間を開けた。


「この台詞、今の俺にすごくあてはまると思うんだ。


俺は会社に入ってから数字ばっかり追いかけて、他のことなんか全く見向きもしなかったから、今じゃ表面上の付き合いの友達が数人いるだけで、親友なんて言えるような友達は一人もいなくなっちゃった。昔、それこそ小学校の頃とかにはもっといっぱいいたような気がするけど、それも忘れちゃったな。多分これからもどんどん忘れちゃうんだろうなって思う。数字にしか興味のないような大人にはなりたくなかったんだけどなぁ…大人になるってこういうことなのかな?」

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