表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/95

第72話 【視点変更あり】みんなで新宿ダンジョン探索③

 ☆★☆【side:思川(おもいがわ)(たまき)】☆★☆



(う〜、こーちゃん。また強くなってる……)


 新宿ダンジョン18階層。


 あたしたち目の前にミノタウロスが現れたが、こーちゃんは、いつの間にか覚えていた【気配遮断】で背後に回り込み、【空中剣技】で斬りつけていた。


(すごいよ……)


 もうすっかり、トップ層と変わらない動きだ。


「ブモオオォォォォ!!」


「おタマちゃん! とどめを頼む!」


「あ、うんっ!」


 いけない、こーちゃんに見とれてしまっていた。


 あたしは刀の(つか)を握りしめ、右足で地面を踏み込む。


「いくよ……、水流居合い斬り!!」


 シュッ、スパッ!!


 横一文字の斬撃は、ミノタウロスの胴体を両断した。


 ドサッ!!


 ミノタウロスの体は黒い霧となってダンジョンに溶けていく。


「やった!」


「さすがだな、おタマちゃん。かっこよかったよ」


「あ……」


 気づけば、こーちゃんがあたしの側に来ていた。


 いろんな意味で嬉しくなり、あたしは感情のままにこーちゃんとハイタッチをする。


「いえーいっ!」


 パチーンッ!


 こーちゃんも嬉しそうに、ハイタッチで返してくれた。


「えへへ……、ナイス連携だったね」


「あ……」


 こーちゃんはなぜか照れくさそうに自分の手のひらを見つめてから。


「お、おタマちゃん、ごめん! あそこのクモ捕まえてくる!」


 そそくさと部屋のすみに行ってしまった。


 あたしは、その場に取り残される。


 う〜……。


(こーちゃんはあたしのことを何とも思ってないのかな……? ただの友達なのかな……? あたしはこーちゃんが近くにいるだけで、こんなに嬉しいのに……)


 そんなことを考えていると。


 ピコーン!


 変な音がして、頭の中に声が響いた。


『実績――《ダンジョン内で、特定の対象に一定時間以上片思いをする》を達成。スキル【赤い糸】を取得しました』


「は、はあ!?」


 いきなり変なことを言われたせいで、間抜けな声を出してしまった。


「どうしたの、たまちゃん?」


「なんか異常があったのか?」


「う、ううん! なんでもない! なんでもないの、あははー!」


 しーちゃんとまなみんから心配されてしまったので、うまくごまかす。


 こんなこと、ここでは話せない。


(え、え? 赤い糸……? スキル……? これって、前に覚えた【水使い】とか【レンタル】と同じってこと……?)


 状況がつかめないまま、とりあえず試してみる。


(スキル【赤い糸】発動……。これでいいのかな?)


 すると。


「あ……!」


 あたしの左手の小指から【赤い糸】がスルスルと伸び、虫取りをしているこーちゃんの方へ向かっていった。


「ダ……ダメっ!!」


 なんでこーちゃんの方に行くの!?


(今ここでスキルがバレちゃったら、スキルの名前とか説明することになっちゃう! 絶対ごまかしきれない!)


 そうして【赤い糸】を消そうとすると。


「……たまたま、さっきから何を騒いでんだ?」


「たまちゃん、状態異常回復(ディスペル)する? 何かミノタウロスから攻撃を受けたのかな?」


「え……?」


 ふたりとも、あたしの方を見ている。


 でも、【赤い糸】については何も言わない。


(え、え……? 見えてないのかな……?)


 試しに左手を胸の前まで上げてみる。


【赤い糸】は二人にも完全に見えているはずだが……。


「なんだたまたま、芸能人の結婚会見のマネか? ひとりでイヤらしい妄想でもしてたのか?」


「し、してないよっ!」


「……大丈夫そうだね。もし何か異常があったら言ってね」


「う、うんっ! ありがとう、しーちゃん! あははは……」


(ふたりには見えてないんだ……)


 安心した。


(でも、こーちゃんは……?)


《赤い糸》の先では、こーちゃんが虫取り網を振って、クモを捕まえているところだった。


(気づいてないのかな?)


 じゃあ、いったいこのスキルは何なんだろう。


 ただ糸を出すだけのスキルじゃないだろうけど。


(こーちゃんがあたしのことを好きになってくれるスキルだといいな……。こーちゃんと結婚したいって、神様にもお願いしたし……)


《え、おタマちゃん……? 結婚? 俺と……!?》


「えっ……!」


 頭の中にこーちゃんの声が響き、びっくりして【赤い糸】を解除してしまった。


 糸は透明になって消えていった。


 こーちゃんは部屋の隅から振り返って、あたしを見ている。


「あ……」


 心臓がドキドキする。


 手のひらに汗がにじむ。


(もしかして、さっきの気持ち……聞かれてたの!?)


【赤い糸】は、もしかしたら遠隔通信(テレパシー)系のスキルだったのかもしれない。


「うう〜……」


 恥ずかしくて顔が熱くなる。


 ――告白しちゃったよぉ……。


 ――こんなタイミングで……。


(間違えちゃった……。うう……)


 泣けてくる。


 ずっと好きだったのに……。


(ふぇぇぇん……)


 涙をこらえながら、こちらにやってくるこーちゃんを見る。


 こーちゃんも顔が赤い。


 絶対聞かれてたよぅ……。


 うつむきながら、こーちゃんからの言葉を待つ。


 すると。


「あ、あの……、さっきおタマちゃんが俺に話しかけていたかな……?」


「え……?」


「こーちん、大丈夫か? たまたまは別に何も言ってなかったが……。しいて言うなら、少しひとりで騒いでたくらいだな」


「夏目くんも顔が赤いよ? たまちゃんとふたりで風邪をひいたのかな?」


「あ、いや……、たぶん風邪じゃないと思うんだけど……」


(あれ……、気づいてないの……?)


 こーちゃんは【赤い糸】スキルの存在に気がつかなかったようだ。


「あたしも大丈夫かなー、あはは……」


 とりあえず、知らないふりをしてごまかした。


「夏目くん、20階層のボス戦行ける? 体調不良なら引き返したほうがいいかも。たまちゃんもだけど……」


「あ、あたしは平気だよ! なんの異常もないし!」


「俺も大丈夫だと思うが……、ごめん、いったん20階層でボスを倒したら帰らせてくれ。幻聴かな……? やたらと鮮明だったけど……」


「けけ、芸能人の結婚会見の話してたからな。たまたまと結婚する妄想でもしてたか? 有名人のこーちゃんさん」


「べ、別に、そんなんじゃ……!」


「だ、だよねー!」


「……ふうん」


 しーちゃんはじっとあたしを見た。


 なんか、うすうす気づかれているような気がする……。


「まあ、ふたりが大丈夫だって言うのなら、20階層まで行ってみようよ。今日の目標だしね」


「……ああ」


「……うん」


(【赤い糸】スキルのことはナイショにしなくちゃ……。じゃないと、今日の告白が本当のことになっちゃう。告白は、もっとこーちゃんと仲良しになってから、ロマンチックな場所でしないと……)


 心のなかでは「好き」とか「結婚したい」とかいくらでも言えるのに、本人に伝えるのはなんて難しいんだろう。


 あたしは、ちらりとこーちゃんを見て、はぁ、と()め息をついた。


 そして、あたしたちは次の階層へと向かった。



☆★☆


【今日捕まえた虫】

 図鑑No.26/251

 名前:ブラックスパイダー

 レア度:0

 捕獲スキル:糸(Lv1)→習得済みのためLv2に強化。糸の最大強度アップ)

 捕獲経験値:15

 ドロップアイテム:魔石(微小)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
タマタマとコーチンだぜ?そりゃ一緒に決まってらあ!
タマちゃんよ、そやつは押して押して押し倒すぐらいしないとダメなんだ 他に童心が好きなシチュエーションどんなのがあるかな 4人で手を繋いだ合計時間的なのはありそう
あ、こーちゃんを横取りされるフラグ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ