表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/95

第51話 ふしぎなアメ玉②

 ――翌日。


 俺たち、チーム《秘密基地》の4人は、プライベートダンジョンに集合していた。


「こーちゃん、アメまだ()めてないんだよね?」


「ああ、まだ残ってるぞ」


 結局、昨日みつけたアメは、()めないでとっておいた。


 ラムネの例もあるので、せっかくだから、みんなで一緒に楽しもうということになったのだ。


「アタシの分、売れるかな……」


「まなみん、売るつもりなの……」


「じゃあ、さっそく『家』にいくか」


「おー!」


 俺たちは、「家」の「客間」へと向かった。



 ☆★☆



「客間」の座卓には、変わらず竹かごがあり、その中には4つのアメ玉が入っていた。


「ねぇ、パパ……。アタシ、毒が入ってないか怖い……」


「はいはい、毒味しろってんだろ」


 まなみんに言われるがまま、【毒吸収】スキル持ちの俺は、アメ玉を手にとった。


 透明なフィルムが両端でひねってあり、ビー玉のような球体をつつんでいる。


 フィルムを両手でひっぱると、くるんっと球体が回転した。


「俺のは赤色だな……」


 アメ玉は、4つとも異なる色のマーブル模様が入っている。


 色は、赤、水色、黄色、緑だった。


「あたし、黄色にする! レモン味ならいいな!」


 おタマちゃんは竹かごからアメをとった。


「おい、たまたま。勝手にとるなよ」


「え、まなみん、黄色がよかったの? じゃんけんする?」


「いや、色で効果が違うかもしれないだろ。一番高く売れるやつをアタシに……」


「そんなのわかるわけないじゃん。あたしは今日食べちゃうもんね。ぜったい美味(おい)しいんだから。選ぶのは次からにしたら?」


「ぐぬぬ……」


 おお、めずらしく、まなみんがおタマちゃんに言い負かされている。


 と思ったら。


「しーちゃん……。たまたまがイジワルしてきた……。なでなでして……」


「え、え? ほ、ほら、まなみん。わたしのぶんなら好きに交換してあげるから……。ね?」


「う、うん……。たまたま、ひどかったの……」


「ちょ、ちょっと! ひとを悪者にしないでよ!」


「はは……」


 騒がしいやつらだ。


「じゃあ、さっそく()めてみるぞ」


「ごめんね……夏目くん」


「ま、俺なら【毒吸収】もあるし大丈夫だろ。それにマイナス効果のあるアイテムとは思えないしな」


「またエリクサーだったらいいね! そしたら、どうしようかな?」


「ま、そのとき考えようぜ。いくぞ」


 俺はフィルムからアメ玉を取り出し、口に含んだ。


 コロコロと舌のうえで転がす。


「夏目くん……、どう?」


「これは……」


 予想どおり……。


「すごく美味(おい)しい。いちご味だ」


「え、いいなー!」


 アメの透明な部分は、淡い甘さ。


 アメの赤い部分は、本物の果実のような瑞々(みずみず)しい甘さと酸味がある。


「毒はない。それどころか、力が(あふ)れてくる感じがある。ただ、この前のラムネとは違うな。もっと、こう、じんわりと体に染み込むというか……」


「もしかして……! 夏目くん、ステータスを見せて!」


「え? ああ……ステータスオープン」


 俺はステータスを表示させる。



 名前:夏目光一

 レベル:36

 経験値:0/3997

 HP:330

 MP:146

 攻撃:159(うちボーナス+28)

 防御:136( 〃 +14)

 速さ:238( 〃 +27)

 賢さ:98( 〃 +2)

 スキル:【童心】、【アイテムドロップ強化】、【水耐性(小)】、【睡眠技無効】、【水上歩行】、【斬撃強化(小+)】、【蝶の舞】、【警戒】、【毒吸収】、【友愛の絆】、【空中剣技】、【神速】

 特技:魔生物図鑑、集団襲撃+、魔生物捕獲ネット(Lv1)、虫相撲(むしずもう)(クワガタ)、応援、ワームホール、糸(Lv1)



「レベルアップシードだ……!」


「え……?」


 言われてみると、レベルがひとつ上がっている。


 昨日の時点では、レベル35に上がったばかりで、まだまだ経験値が必要だった。


「え、こーちゃん、こんなにレベルが上がってるの?」


「もうアタシは早期リタイアできるな……」


「早期リタイアどころか、まだ始まってないだろ……」


 まなみんにも一般探索者免許をとってもらわないと困る。


「けけ、冗談だよ」


「……本当か?」


 たぶん本気だったのではないか。


 ……まあいい、それより……。


「レベルアップシードって……?」


「あ、それはね……」


 しーちゃんによると、ダンジョンでは、不思議な力を持つ木の実がごくまれに手に入るという。


 それを食べるとレベルが上がったり、ステータスが上がったり……。


 今回のアメも、シード系のアイテムと同じ効果があるのではないかということだ。


「あたしもレベルアップしたーい! アメ、()めちゃうね」


 おタマちゃんは、黄色い模様がはいったアメを口に放りこんだ。


「あ……」


「あ……」


「なに? しーちゃん、まなみん?」


 おタマちゃんがアメを口に入れた瞬間、ふたりが同時に声を出していた。


「う、ううん、なんでもな……」


「てめー、たまたま、今のレベルと、レベルアップまでの経験値は把握してるのか?」


「え? 今のレベルは29で、レベルアップまでの経験値は覚えてないかな。あ、これ、レモン味だ! おーいしーっ!」


「このアホっ! あと経験値1でレベルアップするところだったらどうするんだ? アメがもったいねーじゃねーか」


「えー? あたしもレベル上がったばっかりだから、たぶん大丈夫だよ。なんかね、最近レベルが上がるのが早いんだよね」


 それは【友愛の(きずな)】の効果で、経験値を取得できているからだろうな。


「あー、おいしかった。さ、ステータスみてみよ!」


 そう言って、おタマちゃんはステータスを開いた。



 名前:思川(おもいがわ)(たまき)

 レベル:29

 経験値:539/2349

 レベル:29

 HP:227

 MP:107

 攻撃:150

 防御:100

 速さ:123

 賢さ:58

 スキル:【刀術】、【身体強化】、【愛嬌(あいきょう)】、【水使い】、【レンタル】



「レベルは上がってないようだな……」


「な、なんでー!?」


 てか、おタマちゃんのステータスを初めて見たな。


【水使い】を習得する前は、本当に、力押し一辺倒(いっぺんとう)のタイプだったんだな……。


「ええーっ! おいしかったし、力がみなぎる感じもしたのにー!」


 おタマちゃんのアメだけ効果がないとは考えにくい。


 おそらく別の効果があるんだろうが……。


 すると、しーちゃんは。


「た、たまちゃん! スキルの方!」


「え? スキル? いつもどおりだけど……」


「【身体強化】を見て!」


「前からあったスキルだよ……、あ」


 すると、おタマちゃんは空いた口を片手で押さえて。


(小)(かっこしょう)がとれてる……!」


「マジか……」


「やったぁーっ!! うれしーっ!!」


 おタマちゃんによると、【身体強化(小)】が【身体強化】になったらしい。


【身体強化】は攻守に使える万能スキルである。


 それが進化したということは、おタマちゃんにとってはレベルアップよりも恩恵があるだろう。


「スキルアップシードなんて存在するんだ……」


「おい、たまたま。やっぱりアタシも黄色がよかった。くれ。ベロチューしてでも分けてもらうぞ」


「や、やだよ! それにもうないよ! 食べちゃったから!」


「とりあえずベロチューだ。話はそれからだ」


「もうアメの効果が出ちゃってるから、ムダだってば!」


 おタマちゃんは、ササッと俺の後ろに隠れた。


【身体強化】のせいか、やたらと動きが機敏(きびん)である。


「ま、まなみん……、ほら、わたしたちの分もあるから。ね?」


「手遅れか……。ぐぬぬ……」


「まなみん、水色と緑、どっちにする? わたしはどっちでもいいよ」


「効果は運まかせ、か……」


 そして、まなみんは緑、しーちゃんは水色のアメを選んだ。


 ふたりともステータスを確認してから、アメを取り出す。


「あれ? まなみんは売るんじゃなかったのか?」


「たまたまを見てたら気が変わった。アタシも食べるぞ」


「うんっ、一緒に食べよ。いただきます」


「頼むぞ……、そらっ」


 ふたりは同時にアメを口に含んだ。


「わたしの方はハッカ味だ。おいしい……。頭がすーっ、ってする」


「アタシはメロン味だ……。うまい……。効果も頼むぞ……」


 しばらくして。


()め終わったから、ステータスを見てみるね」


「頼む……、たまたまにだけいい思いをさせたくない……」


「まったく、もう。まなみんは……」


「ステータス・オープン!」


 まなみんとしーちゃんは、ステータスをじっと(なが)めた。


「あ……。わたし、賢さが4も上がってる……。インテリアップシードだ」


「ああ……、HPが5上がってる……。バイタルアップシードじゃねーか……。あぁ……」


「けっこう効果が高いな……」


 永続効果だとすると、レベルアップシードより有用な気もするぞ……。


 まあ、俺にとっては、虫の初回捕獲ボーナスがシードみたいなものなのかもしれないが。


「すごいよ、まなみん。普通のシードアイテムでは、ここまで能力値は上がらないよ」


「最大でも3、ってのは知ってる……。でも、たまたまを見てからだと……」


「えへへ……、今回のラッキー賞だね」


「やっぱりベロチューしかない……。たまたま! じっとしてろ!」


「や、やだよ! ちょっと!!」


 おタマちゃんは玄関の方へ逃げていった。


 やはり速度が速い。


 まなみんは諦めたのか、その場に座り込む。


「お、おい、まなみん……」


「くそ……。しゃあない……」


 まなみんはのそりと立ち上がり。


家探(やさが)ししてくる。まんじゅうでもせんべいでも何かないか調べてくる」


「寝室」へと続く(ふすま)を開けた。


「……まったく、まなみんはしょうがないな」


「たまちゃんのシード、たぶん世界初くらいのレアアイテムだったから。悔しくなっちゃうのもしょうがないのかもね。あの時じゃんけんしてれば、って気持ちもあるだろうしね」


「寝室」の(ふすま)の奥からは、ガラガラ、とか、ピシャンッ!といった音が聞こえる。


「今度、黄色いアメがあったらじゃんけんだな」


 ――しばらくして。


「……何も見つからなかった」


 まなみんがガッカリした顔で帰ってきた。


「残念だったね、まなみん」


「今度アメ見つけたときも、みんながそろうまでとっておくからな」


「うう……。しゃあねぇ……」


 まなみんは暗い顔のまま言う。


「……気分転換したい。ふたりとも、アタシの変身を見てくれ。プリティアのほかに、とっておきのヤツを試してみたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
例のオリキャラコスプレ?
かなりロールが整ってきましたねぇ しーしーがタンクバッファーヒーラーとかなり忙しくなりそう たまたまの愛嬌の壊れ能力が楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ