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第46話 変身願望と、4人の絆

「もーっ! 光一、遅いよ!」


「……は?」


 プライベートダンジョンに入ると、プリティアがいた。


 ピンクの浴衣のプリティア……、たしかティアフェスティバルである。


「見ててね! モリサゲーを倒してみせるから!」


「……はい?」


「私、負けない! それっ!」


 プリティアは高さ5メートルは跳躍(ちょうやく)し、くるくると回りながら少し離れた場所に着地した。


 身体能力が高い……!


「スパークルステッキ!!」


 まなみん……、いや、プリティアは腰からやたらとカラフルなステッキを取り出した。


「見ててねっ」


「あ、はい」


 もはや情報量が多すぎて耐えられない。


 たぶん、今の「見ててね」も俺に言ったわけではなく、決めゼリフなんだろう。


「プリティア……スターマイン・メモリーズっ!!」


 掛け声とともに、ステッキの先が白く輝く。


 そして。


「はぁ!?」


 どぉんっ!


 光の玉が空に向かって飛んでゆき、赤色の大きな花火を咲かせた。


「なんだ、あれ……。炎魔法か……!?」


 ゴブリンならまとめて倒せそうな威力だ。


「最高の思い出、忘れないでねっ」


「お、おい、まなみん! ステータスを見せてくれ!」


「まなみん……? 私のことですか?」


「う……。わ、わかった、フェスティバル、ステータスを見せてくれ」


「いいですよ、どうぞ。プリティア・ステータスオープン!」


 正直に言うと、クソめんどくさい。


 まなみんのステータスを確認する。



 名前:ティアフェスティバル((みや)(はら)まなみ)

 レベル:18(補正前:5)

 経験値:38/91

 HP:108

 MP:61/91

 攻撃:76

 防御:51

 速さ:58

 賢さ:88

 スキル:【変身願望】、【格闘術】、【身軽】、【勇気】

 特技:プリティア・スターマイン・メモリーズ



「レベル18……!? どういうことだ?」


 だが、これならもしかしたら……。


「まなみん、大切な話があるんだ。ちょっと聞いてくれ」


「私、ティアフェスティバルですけど……」


「しーちゃんにも関係する大切な話なんだ……! 頼む!」


 すると、ティアフェスティバル改めまなみんはピンクの髪のウィッグをとった。


「……なんかあったのか?」


「まなみん!」


 普通に話してくれるだけでうれしい。


「実は……」


 俺はしーちゃんから聞いた事情を話した。


 …………。


「……というわけなんだ。だから、できればまなみんには、次の試験で一般探索者免許をとってほしいと思っている」


「……なるほどねぇ」


 まなみんはプリティアの格好のまま腕を組んだ。


「ちょうどアタシも自分のスキルでいろいろ試したいと思ってたところだ。これ、めちゃくちゃ楽しいしな。試験は申し込んでみる。てか……こーちん」


「……ん?」


「お前……変わったな」


「そうか?」


 自覚はないが……。


「変わったよ。こーちん。頼もしくなったぜ」


「あ、ああ……。ありがとう」


 まなみんに、こんなことを言われると思ってなかったので、照れる。


「昔、しーちゃんが東京に引っ越した後……、お前、アタシたち3人をまとめる気がなくなってただろう?」


「それは……」


 事実だ。


 幼いころ、俺が犯した罪。


「頭のいいしーちゃんは東京に行った。運動神経のいいたまたまは徐々に才能が見いだされていく。こーちんは、ふたりほどのわかりやすい才能がなかった。お前はそのことに気づいて、気後れしてたんだろ? そして、気の弱いアタシは何も言えず、ひとりになっていった……」


「……悪かった」


 だが、まなみんだって、テストの点は俺よりだいぶよかった。


 俺は、最下位だと思ったのだ。


 4人の中で一番才能がなかったのが俺だ。


 おタマちゃんの横で笑うことも、少しずつ難しくなっていった。


 そんな俺にみんなをまとめる資格があるのだろうか?


 ……あの頃は、そんなことを思っていた。


「――今度は、守るんだな?」


 まなみんは、こぶしを前に突き出した。


 俺は。


「――ああ。守ってみせる」


 まなみんのこぶしに、俺のこぶしを合わせた。


 プリティアとやることじゃないけど……。


「けけ、それでこそパパだ」


「パパじゃねっつの」


 よし、これでまなみんも一緒に探索はできそうだ。


 てか。


「まなみん、レベル1じゃなくて5なのか? 最初からなのか?」


「いや……国民検査のときは1だった。おそらく、昨日ここに入ったときに上がったんだ」


「そう言えば、しーちゃんもそんなこと言ってたな……。なんでだろう?」


「――アタシに仮説がある。5個くらい検証すればわかるんじゃねーかな」


「マジか……」


 やはりまなみんも頭がいい。


 あの頃は自分と比較して、劣等感にさいなまれていたけれど、同じ目的を持つ仲間だと思うと、頼もしい。


「だが、その前にやることがある」


「やること……?」


「ああ、今度はティアミュージックになってくる」



 ☆★☆



 新しく出現したトンボを捕まえて、まなみんを待つ。


 ボワン!



 図鑑No.9/251

 名前:スカーレット魔トンボ

 レア度:0

 捕獲スキル:なし

 捕獲経験値:1(レベル3以上の者の場合は0.1)

 ドロップアイテム:魔石(微小)、???



 すると。


「こーちん、見てくれ!」


「うおっ!」


 水色のプリティアが田んぼの上を跳躍してきた。


 色が変わっても身体能力が高い。


 ズザザザッ!!


「すごいジャンプ力だな……」


「いや、そこじゃないんだ。見てくれ」


「何をだ……?」


「これだ。……《ドレスチェンジ》!!」


「え……!?」


 すると、まなみんの来ている服が白く発光した。


 いや、発光したというより、服だけが限りなく白くなっているというか……。


 そして。


「ティアフェスティバル!」


 ウィッグも含め、一瞬で衣装が切り替わった。


「おお……!」


 どういう仕組みなんだ?


「これは……?」


「《ダンジョン内で装備一式を取り替える》を達成したので、スキルをふたつ覚えた。早着替えの特技 《ドレスチェンジ》と、装備品専用のアイテムボックス【マジカルクローゼット】だ」


「すごいな……。プライベートダンジョンのおかげなのかな」


 どういう理屈かはわからないけれど。


 だが、まなみんは。


「いや……、これはこーちんのおかげだ」


「俺の? 何もしてないぞ?」


「こーちんが来る前に、アタシは一度ティアミュージックの服を着ている。だが、そのときはこんなスキルは覚えなかった」


「俺と一緒だからスキルを覚えたということか?」


「――そうだ」


「マジか……」


 おタマちゃんのスキル取得もそういうことなんだろうか。


 てか。


「まなみんは、着替えればスキルを覚えられると知ってたのか……? だから、俺が来てからもう一度試したとか……」


「そんなわけねーだろ。ティアミュージックのプリティア・メロディアス・サークルを見せてやるためだよ」


「お、おお……」


 俺は別に見たくはないが、まなみんがただ見せたかっただけだろう。


「……《ドレスチェンジ》はもう少し練習しよう……パーツごとに着替えができれば変身シーンを再現できるかも……」


「はいはい」


 変なこだわりまで出てきた。


「じゃあ、これで経験値増加の謎ときに取り掛かるのか?」


 なぜまなみんがレベルアップしたのか。


 なぜしーちゃんがレベルアップしたのか。


「ああ。てか、検証可能だ。たまたまを呼び出す必要もなさそうだ。ステータスオープン!」



 名前:ティアフェスティバル((みや)(はら)まなみ)

 レベル:18(補正前:5)

 経験値:88/91

 HP:108

 MP:56/91

 攻撃:76

 防御:51

 速さ:58

 賢さ:88

 スキル:【変身願望】、【マジカルクローゼット】、【格闘術】、【身軽】、【勇気】

 特技:ドレスチェンジ、プリティア・スターマイン・メモリーズ



「……さっきと強さは変わらないぞ」


「いや、よく見てみろ」


「ううむ……」


 さっき覚えたスキルふたつが増えているのはわかるが、ほかは……。


「あ……」


「気づいたか?」


「ああ」


 わかった。


 経験値が上がっている。


 先ほどはレベルアップまでまだまだ先という数字だったけど、今はすぐにでもレベルが上がりそうだ。


「けけ、そうだ。アタシの仮説が正しければ……《ドレスチェンジ》!」


 プリティアの服は白く輝き、ピンクから水色に姿を変える。


「――ステータスオープン」


 まなみんがステータスを開くと。



 名前:ティアミュージック((みや)(はら)まなみ)

 レベル:19(補正前:6)

 経験値:47/127

 HP:112

 MP:96

 攻撃:77

 防御:60

 速さ:61

 賢さ:81

 スキル:【変身願望】、【マジカルクローゼット】、【格闘術】、【身軽】、【勇気】

 特技:ドレスチェンジ、プリティア・メロディアス・サークル



「レベルが上がった……!」


「やはりな……。で、もうひとつ検証したいところだが……その必要もなくなったようだ」


「え……?」


「アタシの経験値を見てくれ」


 言われるがままにステータスを見ると。



 名前:ティアミュージック((みや)(はら)まなみ)

 レベル:19(補正前:6)

 経験値:49/127


 経験値:56/127


 経験値:59/127



 経験値が増えている?


 まるでガソリン給油時のメーターの数字のように。


「こーちんのステータスも開いてくれ」


「あ、ああ……」


 言われるがままに確認すると、やはり経験値が増えていた。


 何もしていないのに。


「けけ、わかったぜ。たぶんこれが【友愛の(きずな)】の効果……なかなかの便利スキルだぜ」


「本当か?」


「ああ。後で、この時間にたまたまが【水使い】スキルを使っていたか聞けば確定だ」


「で、どういう効果なんだ……?」


 すると、まなみんは。


「スキル【友愛の絆】は、おそらく2つの効果の複合スキルだ。ひとつは【童心】スキル由来のスキルを使用したときに経験値を得られる効果。言い換えれば、遊びを経験値に変える効果だ」


「……なるほど」


「そして、もうひとつ。遊びの経験値をパーティメンバーで共有できる効果。本人とメンバーの獲得量の違いは不明だ。で、これは空間が離れていても有効らしい」


「今の経験値増加はおタマちゃんのおかげ、ってところか……」


 そう言えば、プライベートダンジョン内調査のときも、おタマちゃんは【レンタル】スキルをずっと使っていた。


 あれが経験値になり、俺たち4人に加算されたのだろう。


「どうだ、当たってそうだろ?」


 まなみんはいたずらっぽく笑う。


「ああ――よくわかった」


 俺は青空を見上げ。


「――俺たちは離れていても【友愛の絆】でつながっているということだな」


 ――これならいける。


 俺たちは負けない。

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― 新着の感想 ―
童心スキルわかってるぅ! 変身願望で名前も補正されるのもシステムさんわかってるぅ! まなみん、こーちんが空気読んでるようだけど、あなた24歳ですよね… 永遠の13歳の方でしたっけ やはりまなPのマ…
今更だけど一応言うぞ? チートスキルじゃねえか!!!
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