第一章「カタリテ」
気まぐれな更新です。初心者なので暖かく見守っていただけると嬉しいです。
誤字脱字、言葉の表現が間違っていることがあるかもしれません。その都度訂正します。
おはようございます。こんにちは。それともこんばんはでしょうか。初めまして、お久しぶりです。そんなよくわからないという顔をなさらないでください。私とあなたはもしかしたら、初対面かもしれないし、旧知の仲かもしれません。だから挨拶がヘンテコになっても良いのです。どちらにしてもお互い自己紹介でもしましょうか。それでは改めまして。私の図書館に足を運んでいただきありがとうございます。私はカタリテと申します。あなたのお名前は?
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素敵なお名前ですね。私もそんなお名前だったら、よかったんですが。え?「カタリテは名前じゃないのかって?」残念ながら。これは「役割」を示す名詞でしかありません。語ることが私の役割です。私自身を示す名前ではありませんが、役割を請け負う者としての私のことは「カタリテ」とお呼びください。本当の名前はそうですね・・・あなたがこれから触れる物語を「全て」読み終えることができたらお教えいたしましょう。それまでの楽しみにとっておいてください。
さて。私のお客人様。あなたにはこれから一つの役割を担っていただきます。それは「ヨミテ」という役割です。これから始まる物語の「読み手」になり、その行く末を見守ってください。そして物語を進める「トウジョウジンブツ」が分かれ道にきた時、彼らの運命を「選択」してください。その選択によって物語の結末は変わるでしょう。あなたは物語の中で様々な感情や出来事に触れ、選択をしなければなりません。それがどんな結果になってもどうか広い心で受け止めてくださいね。それがあなたの「役割」なのですから。
それでは物語のあらすじについてお話しましょう。これは仕事に疲れ、人と関わることに疲れた女性のお話です。名前は春瀬桜琴。昔から小説や童話など物語をこよなく愛し、少しでも本に関わりたいという思いから小さな出版会社に就職しました。しかし待っていた現実は残酷なものでした。やってもやっても終わらない仕事。理不尽に怒る上司の怒鳴り声。仕事を押し付けて来る同僚。彼女の心は病み、もう何者にも傷つけられず、すべてを終わらせたいと日々思っておりました。彼女はもう人に心を砕くことを、動かすことに疲れ果ておりました。その日は自分がやってもいないミスを同僚からなすりつけられて、「私はやっていない」と上司に伝えました。そんな上司の一言がきっかけになったのです。
「お前は頭が悪いのだから、黙って言うことを聞け」
そこからは全てが早いものでした。書きなぐった辞表を上司の机にたたき付け、仕事を辞めました。そしてその足で登山用の靴と服、鞄を購入して、”とある山”に向かいました。そこは紅夜山という行方不明者が多いと噂される山でございました。 ここから彼女の物語は始まります。
「記憶」を失くしたお客人様。心の準備はできていますか?どうかその瞳を閉じす、一つ一つの「トウジョウジンブツ」の心に触れてください。そうすることで見えて来ることが必ずありますから。
もしも、心の準備ができましたら、その「本」を開いてください。少しの間、意識は遠のきますが、次に目を覚ました時にあなたはー…いえ、私からは何も言わないでおきましょう。
ああ。私の愛するお客人様。そんな不安なお顔をなさらないで。大丈夫。私はいつまでもあなたの帰りをこの図書館でお待ちしております。
きっとお客人様は私のことを不思議に思っているでしょうね。「本を読むだけなのに、送り出すかのような態度をとられている」ことに不思議に感じているのではないでしょうか。
私の言う「本を読む」ということは普通に文字を目で追い、理解することということではございません。
言ったでしょう?あなたには「トウジョウジンブツ」が分かれ道に来たとき、選択してほしいと。その行く末を見守ってほしいと。
そのためにはあなたは「トウジョウジンブツ」のそばにいなければなりません。
何も知らない真っ白なキャンパスのようなお客様。
きっとこの物語の先にあなたの答えがあります。
私の言葉を信じて、その本をお取りになってくださいませ。
…次に目覚めた時にはあなたの隣には運命を共にする「トウジョウジンブツ」がいることでしょう。
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物語を始める準備はできましたか?……よい、お返事ですね。
それでは、いってらしゃいませ。
私の大切な愛しいお客様。どうか自分を見失わないできだいね。