実らぬ恋の話。
彼女と同棲中の主人公の気持ちを描いたストーリーです。
好きなのに、彼女はほかの男に目を向ける。
それなのに、何もできない主人公・・・。
シリアスっぽいお話です。
とあるマンション。
駅近の10階建て。
小綺麗なエントランスにオートロック。
ここの8階、1DKの部屋に僕等は住んでいる。
"僕等"という事はもちろん一人暮らしではない。
斎藤美香―。
僕のパートナー。
いわゆる"同棲"ってやつだ。
彼女はもうすぐ大学四年生。
同棲し始めたのは、彼女が大学生になってから。
もう丸々三年になる。
僕達は今でもラブラブだ。
喧嘩も殆どしない。
たまに僕が拗ねて機嫌が悪くなる時があるが、彼女に優しく抱きしめられると、すぐに許してしまう。
彼女は大学から帰ったらいつも真っ先に僕を抱きしめる。
いい加減鬱陶しく感じる事もあるが、好きな女に毎日抱かれるのだ。悪い気はしない。
それから彼女は夕飯を用意する。
いつも、好き嫌いの多い僕の好みを考えて、二人別々のメニューを作ってくれる。
彼女も同じ物を食べれば楽なんだろうけど・・
彼女もやはり好き嫌いが激しいのだ。
完全に食の好みが違う。
それでも、彼女は嫌な顔一つせず別のメニューを用意してくれる。
いい彼女だ。
夕飯を食べたら、二人でソファーでくつろぎながらテレビを見る。
正直、テレビは好きじゃないんだけど。
それでも、二人で体をスリ寄せて過ごす時間は、僕の大好きな一時だ。
寝る時はもちろん一緒。二人抱き合いながら寝るのだ。
僕が生きている中で、これ以上は無い、と思える程の至福の時間。
朝はいつも僕の方が早く起きる。
彼女は朝が弱いのだ。
あまりに起きてこない時は起こしてあげる。
彼女は朝出掛ける時にも僕を抱きしめる。
そしてキス・・。
正直、毎日これは鬱陶しい。
ただ僕が鬱陶しい顔をすると、彼女は悲しむ。
だから僕は彼女に応える。
そんな日常。
僕は何をしているって?
そこが問題なのだ。
彼女は毎日大学・アルバイトと忙しくしているが、僕は何もしていない。
俗に言う"プー太郎"だ。
一応、趣味はある。
街を徘徊する事だ。
さすがに彼女に申し訳なく思うが、それが僕だから仕方ない。
さて、こんなお気楽でラブラブな毎日を送っている僕だが、悩みもある。
最近、彼女が家に帰らない日がある。
・・あの男に会っているのだろうか。
今年の夏頃だったか、彼女が一度部屋に男を連れてきた。
男は僕を見るなり怪訝な顔を向けてきた。
おいおい。
気を悪くするのはこっちのほうだ。
いきなり僕と美香の愛の巣にずかずかと入ってきたと思えば・・
なんて失礼な奴だ。
美香も美香だ。
よりによって彼氏がいる時に他の男を連れてくるか?
心底腹が立つ。
男は男で、ぬけぬけと僕に握手を求めてくるじゃないか。
僕は我慢できなくなり、その場で男を叩きのめし、追い出してやった。
美香は・・男を追って出て行った。
そんな奴、放っておけばいいのに。
夜、帰ってきた美香は僕にこう言った。
「ヒロ!なんてことするのよ!!
彼、悪い人じゃないんだよ。」
彼?
そんな風にあんな奴のこと呼ぶなよ。
それから一週間、僕は美香と一言も口を聞かなかった。
夜も一緒に寝ない。
僕はソファーで一人で寝た。
一週間が経った頃、彼女が無理矢理僕をベッドに連れ込んだ。
最初は嫌がったが、やはり彼女の温もりは心地よい。
その夜、僕達は仲直りした。
それから彼女が部屋に男を連れてくることは無かった。
ただ、たまに家に帰らなくなった。
あの男と会ってるんだろうとは思ったが、それを美香に尋ねることは出来なかった。
捨てられるのが怖いから。。
家では変わらずに僕を愛してくれる。
僕もそれに応える。
ただ、彼女が夜家に帰らない時は無性に寂しくなる。
そして、いつも僕に愛しているように、あの男を愛しているんだろうと思うと、いたたまれなくなる。
彼女を独占したい。
僕だけの美香であってほしい。
その手で僕以外の男に触れないでほしい。
わかってる。
本当は僕よりもあの男の方が美香には似合ってる。
それでも、分かってほしい。
僕の愛の大きさを。
この世に美香以外はいらない。
そこまで思える、僕の気持ちを。
そう。
わかってる。
これが決して実らぬ恋だということも。
だって・・
僕は・・
"猫"だから。
猫オチ・・
もし、自分が猫で、大好きな人に飼われていたら・・・と想像して書きました。
僕は猫好きで、小さい頃から猫を飼ってます。
猫って気まぐれで、普段は人に媚びず、プライド高い生き物です。
ただ、猫を飼ってよく観察していると、さりげなく甘えたり、実は寂しがり屋だったり・・
プライド高く、人に懐かない。
そう見えても実はしっかり飼い主を愛してる。
猫のそんなところが大好きです。
みなさんはペットを飼ってますか?
飼ってるなら、そのペットの目線で色々考えてみると面白いかもしれません。
まぁ、真意を確かめる方法はありませんが(笑)