番外編その1 ハロウィンと異世界人
「ピギィー! ピギィー!」
ウサ太郎は中指を立てながら、お菓子の山の上で踊っていた。
「これ、ウサ太郎。それは子供達に配るお菓子じゃ。踏んづけてはダメじゃよ」
今日はハロウィン。爺さんは「ぶっちゃけ年金生活で苦しいし、物価高でお菓子を配る余裕なんてないんじゃがの」と愚痴りながらも子供達にお菓子を配る気でいるようだ。
ピンポーン(チャイムの音)
「早速、だれか来たようじゃ。ウサ太郎、ドアを開けてやっておくれ」
「ピギィー! ピギィー!」
ガチャ!(ドアを開ける音)
「おなかすいた」
ドアを開けた先に立っていたのは――クロだった。
「ピギィ……」
「ウサ太郎、ちょっと退いておくれ」
ガチャ!(ドアを閉める音)
ガチャチャ!(鍵を閉めてチェーンをかける音)
「今のは見なかったことにするのじゃ。あの食いしん坊ガールはあればあるだけ食べてしまうからの」
爺さんはクロを見なかったことにした。
ピンポーン! ピンポーン!(チャイムの音)
「ピギィー! ピギィー!(うるせー!)」
「無視じゃ! 絶対に開けてはならんぞ!」
「ムシャムシャ……(咀嚼音)」
「……ん? この咀嚼音はなんじゃ?」
爺さんが振り返ると、先程まであったお菓子の山が消えていた。その代わり、お菓子を頬張るクロの姿があった。
「!? 食いしん坊ガール、いつの間に!?」
「ムシャムシャ……ハロウィン仕様ジャンボチョコ棒は美味しいね〜」
「それは子供達にあげるお菓子じゃ! 一人で食べるんじゃない! ついでにその格好はなんじゃ!」
クロは大きな傘を頭から被っており、顔と手の部分だけ切り抜いて出している。
「これ? からかさ小僧のコスプレしているの。これでお菓子貰えるってタナケンが言っていた」
「また地味なお化けをチョイスしたのぉ……」
ピンポーン! ピンポーン!
「じゃあ、さっきからチャイムを鳴らしているのは誰じゃ? ウサ太郎、開けてやっておくれ」
「ピギィー!」
ウサ太郎が玄関のドアを開けると――
「お菓子! お菓子くれー!!!(´;ω;`)」
タナケンが勢いよく入ってきた。
「お主か! た、タナ……名前が思い出せないが主人公の男!」
「タナケンだよ(´;ω;`)」
「いいところに来た! この食いしん坊ガールを引き取って、さっさと帰るのじゃ!」
「え? 俺達はお菓子貰いに来たんだけど?(´・ω・`)」
「なんじゃと!? 食いしん坊ガールは百歩譲って良いとして、お主は貰う側じゃなくて配る側じゃろ!」
「心は少年のままだぜ( ‘ᾥ’ )」
「そんな乞食の仕方があるか! お主はダメじゃ!」
「そ、そんな……今日のために一週間飲まず食わずで我慢したのに(´;ω;`)」
「ハロウィンに命かけすぎじゃろ!」
タナケンは膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んでしまった。
「やれやれ、主人公の自覚を持ってほしいものじゃ……って食いしん坊ガール! いつまで食べているんじゃ!」
「ムシャムシャ……(咀嚼音)」
「ピギィー! ピギィー!」
ウサ太郎がクロに飛びかかって止めようとするが、クロはお菓子を食べるのをやめない。
「あ、言い忘れていた。お菓子くれないとイタズラしちゃうぞー」
「もう食っているじゃろ! 既にイタズラより酷いことされておるわ!」
「ムシャムシャ……ごちそうさまでした」
クロはお菓子を全て食べてしまった。
「わ、わしの個人型確定拠出年金で買い集めたお菓子がーーーー!!!!」
爺さんは膝から崩れ落ち、タナケンの上に仰向けで倒れ込んでしまった。
「ぐぇっ!(´;ω;`)」←潰れるタナケン
「食べたら眠くなってきた。おやすみ」
クロはそのままドカ食い気絶してしまった。
「なに寝ているんじゃ! お主のせいでお菓子なくなってしまったのじゃぞ! 子供達が来たらどうするのじゃ!」
「どうせ俺達しか来ないって(´・ω・`)」
「うるさいのじゃ! そもそもお主らは旅に出たんじゃなかったのか!?」
「今回は番外編だから時系列的には第一部のどこか適当なタイミングに起きた出来事……という設定になっているよ(´・ω・`)」
「適当すぎるじゃろ、この小説」
「それにしてもこっちの世界にもハロウィンがあったとは驚いたよ。俺の世界でもハロウィンがあってパリピ共が渋谷でお祭り騒ぎしていてさ(´・ω・`)」
「うむ、ハロウィンの起源には諸説あってじゃな。異世界から来た人間が広めたという説があるのじゃ」
「異世界から来た人間って俺のいた世界から来た人が他にもいるの?(´・ω・`)」
「その通りじゃ。お主と同じ世界かどうかわからぬが別の世界から来たと言う人間は数年に一度現れると聞いたことがあるのじゃ」
「へー、その人達は今どこにいるの? 会って話してみたいな(´・ω・`)」
「みんな異端者として国家に消されているから誰も生きていないのじゃ」
「ひでー! いきなりダークファンタジーみたいな設定出すなよ(´;ω;`)」
「お主もあまり公言しない方がいいぞぃ。誰も異世界の存在なんて信じておらんからの」
「本当に異世界あるもん! 俺、異世界から来たんだもん!(´;ω;`)」
「ま、わしは本当に異世界があってもおかしくないと思うのじゃ。この家にあるカブトムシがクリスマスまで生きる話の本は著者が不明のままなのじゃ」
「そういえば、そんな感じのストーリーの映画、俺の世界で見たことある気する(´・ω・`)」
「ハロウィンも起源は謎のままじゃし、異世界の文化が知らぬ間に入ってきているのかもしれないのぉ」
「というかほとんど俺達の世界の物じゃね? この間iPh⚪︎ne持っている人を見かけたぞ(´・ω・`)」
爺さんは「わしはAndr⚪︎id派じゃ」とスマホを見せつけてきた。
「あと奴隷にも出生不明の人が多くてのぉ。子供の頃の記憶がない大人などもいるのじゃが、この世界で作られた物とは考えにくい物を持っていたという噂も聞いたことあるのぉ。ひょっとしたらクロやアイリも異世界人かもしれないのぉ……ってそういえば、アイリはどうしたのじゃ?」
「アイリも来ているよ。ほら、部屋の端っこにいるでしょ(´・ω・`)」
「……いつ入ってきたのじゃ!? そしてその格好は!?」
爺さんが振り返った先には、赤面のアイリが立っていた。
「……タナケン、いつまでこの格好でいればいいの? 恥ずかしいんだけど……」
アイリは包帯テープで全身を巻いているだけの際どい格好だった。ヘソが出ているし、テープが解けないように包帯テープをおさえていた。
「これはミイラのコスプレさ。この作品が書籍化した際に挿絵になるようなサービスシーンが必要だと思って用意したんだ(´・ω・`)」
「この顔文字だらけの作品が書籍化するわけないじゃろ! ほら、アイリ、ワシの寝巻きを貸してやろう」
「……横書きなら顔文字だって書籍化できるもん(´;ω;`)」
アイリが爺さんから服を借りて着たことによって、サービスシーンは消滅することになった。
「そういや、アイリは小さいときの記憶あるの? さっきまで奴隷の中に異世界人がいるかもって話していたんだけど(´・ω・`)」
「私は記憶あるし、この世界で育ったわ」
「じゃあ、俺と同じ世界から来た可能性はないか(´・ω・`)」
「クロはどうなんじゃ? 謎に包まれているし、異世界人でもおかしくないじゃろ」
「ないない。それはない(´・ω・`)ノシ」
「なぜじゃ?」
「あんな食べる人間、俺の世界にいないもん(´・ω・`)」
タナケンは鼻で笑うように断言した。クロはこの世界の住民であると信じきっていたのだ。
「うむ。確かに食いしん坊ガールはスキルがなくても超食べるからのぉ……」
「そもそもクロの食欲はこの世界でも異常よ!」
「ひょっとしたら、この世界でも俺の世界でもない世界から来ていたりしてね(´・ω・`)」
「ピギィー(謎の少女だ)」
三人と一羽はすやすや眠るクロを見ながら苦笑いをした。
だから、誰もクロの寝言を聞いていなかった。
「むにゃむにゃ……マ⚪︎クのダブルチーズバーガー食べたい……むにゃむにゃ……」




