第64話 勇者になりなさい
ダークマターによって壊滅状態になったタナケンオールスターズ。いよいよ、俺とシャルだけになってしまい、本当に最終決戦と化した。
『あとは貴様だけだ、タナケソ』
辺り一面を覆い尽くす黒い雲から声が聞こえる。無数の目玉が俺を見ていた。
「タナケンだ! お前! というかこの作品の登場人物達! わざと間違えているだろ!( `ᾥ´ )」
俺が激おこぷんぷん丸になったところで、ダークマターは不気味に笑うだけであった。
「ねぇ、タナケン」
「うん? どうした、シャル(´・ω・`)」
「どうしてダークマターはタナケンを狙っているの?」
「あ、裁判に夢中で五大スキルの弱点をシャルに話していなかった!Σ(´・ω・;`)」
俺はシャルにこれまでのことを超早口で話した。俺が死んだらシャルにあげた五大スキルが消滅してしまうこと、裁判で勝ったこと、爺さんのヘソクリが消えたことを。
「というわけなんだ。だから俺がやられるわけにはいかないんだ(´・ω・`)」
「わかった! タナケン、手を出して! ひとまず安全な場所まで運ぶから!」
シャルはそう言って手を差し出す。
「うぅ……クロ、アイリ、爺さん、ウサ太郎……すまない(´;ω;`)」
俺は3人+1羽に別れを告げて、シャルの手を握った。
「瞬間移動スキルで移動するから絶対に手を離さないでね」
「うん……ってえええええ!!!!!!(´⊙ω⊙`)」
次の瞬間、俺の身体は超高速でダークマターから離れるように移動した。というかシャルに引きずられる。
「あばばばばばばば!!!!!!(´⊙ω⊙`)」
何度も地面にぶつかり、俺は悲鳴を上げるもシャルの耳には全く届いていなかった。ダークマターと思われる黒い雲が覆っている大地から太陽の光が当たっている場所に出た。
そして俺は……ズタボロになっていた0(:3 )~ ('、3_ヽ)_
「タナケン、大丈夫!?」
「もうダメポ……0(:3 )~ ('、3_ヽ)_」
「これ、使って!」
シャルは自身の体からスキル玉を取り出して、瀕死の俺に正拳突きするかのような勢いで突っ込んだ。
それは五大スキルの一つ、『両生類の自己再生(ウーパールーパー・セルフ・リプロダクション)スキル』だった。
「うおおお!!(´⊙ω⊙`)」
自己治癒能力によって、ズタボロになっていた俺の体はみるみる治っていく。地面にえぐられた皮膚も、おでんを掴んで火傷した手も、先日ウサ太郎とサッカーしていたときに転んだ傷も、裁判で寝不足になっていたことが原因の倦怠感も、全て治った。ありがとう、ウーパールーパー。
「復活!!!!!( `ᾥ´ )」
俺はスキル玉を取り出して、シャルに返そうとする。
「ねぇ、それタナケンが持っていた方がよくない?」
「うん?(´・ω・`)」
「だってタナケンが死んだら五大スキルなくなっちゃうんでしょ? だったら防御系スキルはタナケンが持っていた方が……というより全てタナケンが持っておいた方がいいと思う」
確かに(´・ω・`)
「でも、それだと俺がダークマターと戦うことになるし、俺じゃ五大スキルを使いこなせないよ( ᷄ᾥ᷅ )」
「タナケンならできるって! 主人公でしょ!」
「うっ……でも俺は勇者的な主人公じゃなくて、どちらかと言えば日常系の主人公なんだ。活躍の場は欲しいけど、向いていないというかなんというか……(´・ω・`)」
おでんツンツンが勇者だった頃に結界を破壊してしまったことを思い出す。あんな強大な力を持ちたいわけではないし、そもそも俺は戦いたいわけではない。日常と戦闘の比率が9:1で、たまに活躍できればいいタイプの主人公なのだ。
「そんなこと言っている場合じゃないでしょ! 世界は滅びるかもしれないんだよ!」
「シャル……(´・ω・`)」
正論に黙り込んでいると、突然シャルが大声をあげた。
「……! タナケン危ない!!!!!」
思いっきり俺を突き飛ばすシャル。
「ぐえーーー!!!(´;ω;`)」
100メートルぐらい吹っ飛ばされる俺。
「いててて……ってシャル!?Σ(´⊙ω⊙`)」
シャルはうつ伏せで倒れていた。どうやら俺を庇ってくれたようで、背中には暗黒物質が付着しているように見える。俺は彼女の元へ駆け寄った。
「シャル! 大丈夫か!?(´⊙ω⊙`)」
「うぅ……」
おかしい。本来なら『神の絶対防御スキル』が発動して無傷なはずなのにくらってしまうとは。
『ふふふ、わしから逃げられると思うな』
頭上にもくもくと黒い雲が発生し、すぐに周辺を真っ暗にした。
「くっ! 瞬間移動に追いついてくるとは!( `ᾥ´ ;)」
『今のわしは空があればどこにでも現れることができるのだ』
「ぐぬぬ……ってこんなことしている場合じゃない! シャル、早くウーパールーパーなんたらスキルで回復するんだ!( `ᾥ´ ;)」
『無駄だ。暗黒物質は状態異常攻撃だ。自己治癒力を向上させるウーパールーパーなんたらでは完全に回復させることはできん』
「そ、そんな……(´;ω;`)」
ダークマターは「状態異常を回復させるスキルがあったとしても、神話に出てくるような伝説級のスキルでないと治すことは不可能だ」と付け足す。
「あわわわわ、どうすれば……(´;ω;`)」
思い返せば、シャルは全て暗黒物質を避けるか、切っていた。第六感スキルで暗黒物質のヤバさを感じ取っていたのだろう。
「タナケン……」
シャルは絞り出すような声で、俺の名を呼ぶ。
「シャル! しっかりしてくれ!(´;ω;`)」
「早く逃げて……」
そう言ってシャルは自身の体から瞬間移動スキルの『神速の電光石火スキル』を取り出して渡そうとする。
「俺だけ逃げろってことか? そんなことできるか! クロ、アイリ、爺さん、ウサ太郎を見捨てて、さらにシャルまで置いていくなんてできない!(´;ω;`)」
『逃げるだと? 仮に瞬間移動スキルがあっても、貴様らはわしから逃げることはできない』
ダークマターは「だが念には念を入れよう」と言い、無数の目玉が光り出す。
「な、なんだ???(´;ω;`)」
俺とシャルの周りに結界が展開される。四方八方に展開された結界は俺達を守るというより閉じ込めるための檻と化していた。
「こ、これはまさか……!?( `ᾥ´ ;)」
『そうだ。自分の周り以外にも結界を展開することができるのだ。おでんツンツン魔王補佐は勇者だった頃、結界を好きなところに展開していた。それの応用として貴様らを捕らえる檻として利用させてもらった』
さらに結界の壁が左右からどんどん近づいてくる。
「まさか俺達を結界の壁で圧死させるつもりか!?( `ᾥ´ ;)」
『その通り。これが結界スキルの本当の使い方だ。おでんツンツン魔王補佐は防御に対するプライドが高すぎてカウンターでの勝利に拘りすぎていたが、わしはそんなプライドを持っておらん。タナゲソよ、ここで勇者と共に死ね! ちなみに「壁にして挟んだら強くね?」と気づいたのは今だ!』
「くっ……! シャル、起きてくれ! このままだと思いつきで繰り出される技によって殺される! 剣術スキルの……名前忘れちゃったけど、あの衝撃波が出るやつで壁を破壊するしかない!(´;ω;`)」
しかし、シャルは起き上がれない。
「タナケン……これを……」
シャルは自身の体から残り4つのスキル玉を取り出して、俺に差し出す。
「俺に戦えって言うのか……?(´;ω;`)」
そんなことは自分が一番わかっていた。シャルは戦える状態ではないし、絵面的にも俺が戦う流れだ。
けれど、俺は勇者になる資格はない。主人公らしい活躍にこだわるのもチヤホヤされたいという邪な気持ちによるもの。こんな本当に勇者なんて(´;ω;`)
――タナケン、今こそ勇者になるのです。
!?Σ(´;ω;`)
銀髪の女性の声が聞こえる。
「でも! 俺が勇者になっても結界を破れるかわからないし、下手したらシャルも巻き込んでしまうかもしれないんだぞ!(´;ω;`)」
――大丈夫、貴方ならやれます。
実際、やれるやれない以前に俺がやるしかない。そんなことはわかっている。
――私はずっと見てきました。貴方は勇者になる素質がある。
「うぅ……64話までの俺を見てきて、その結論に至るのはいろいろヤバいだろ(´;ω;`)」
俺はメタ的発言をしながら躊躇する。仮に五大スキルを身につけたとして、シャルが倒しきれない相手に勝てるとは思えない。世界の命運を背負うぐらいならこのまま死んだ方がいいかもしれない。俺はプレッシャーに弱いタイプなんだ(64話で明かされる主人公の性格)
「タナケンなら……できるよ」
「シャル……?(´;ω;`)」
「だってタナケン……優しいじゃん」
シャルは息苦しそうに話す。
「私が勇者になりたいと言ったとき止めたし、奴隷の子を助けたり、みんなの心配したり……勇者に向いていると思う」
「そりゃシャルの無謀さを見たら誰でも止めるし、クロに関してはなんか流れで買っちゃっただけだし、みんなの心配は……(´;ω;`)」
「私ね、本当はタナケンが勇者になるべきだと思ったの。スキルの持ち主だからじゃなくて、どんな困難にも立ち向かってきたし」
「うぅ……シャル……(´;ω;`)」
そうだ、俺は今まで困難を乗り越えてきた。ドラゴンに襲われたり、悪い市長と対決したり、脱税で差押になりそうになったり、大食い選手権にも参加して……いや、言うほど困難を乗り越えていない気もする。
――タナケン、勇者になりなさい。
再び銀髪の女性の声。
…………(´;ω;`)
『無駄だ。その壁は勇者の剣術を防いだ【絶対防御】スキルによって使っている。スキルを戻したところで、貴様の負けだ!』
結界の壁が迫ってくる。あと十秒足らずで俺達はペシャンコだ。
…………(´;ω;`)
「だから、タナケン。みんなを救うためにも戦って」
…………!( ;ᾥ; )
俺はシャルの持っていたスキル玉に手を伸ばした。
それと同時に結界の壁が俺達を挟み、壁同士がぶつかり凄まじい音がした。
バキバキバキバキバキバキ!!!!!!
『ふふふ、ついに勇者を始末したぞ! これで世界はモンスターだけの世界に生まれ変われ……!?』
ダークマターは驚く。黒い雲と化している奴に表情はない。無数の目玉からしか感情を読み取れない。それでも驚いていたことがハッキリとわかる。
辺りの空を覆っていた黒い雲に大きな裂け目ができ、そこから太陽の光が照らしていた。
その光の先に俺が立っていた。
シャルを抱えた俺が。
正直、眩しい。
『ば、バカな! お前達を閉じ込めていた結界だけでなく、わしの体(黒い雲)にも【絶対防御】スキルで守っていたんだぞ!? 一体、なにをした!?』
「なにって……そこら辺に落ちていた木の棒を振っただけじゃーーーー!!!!!( `ᾥ´ #)」
久しぶりに五大スキル全開になった俺、パーフェクトタナケンの再誕である。
次回、パーフェクトタナケンvsダークマター! 決着をつけたるわ!( `ᾥ´ #)
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その頃、暗黒物質によって死にかけていたクロは……、
「ムシャムシャ……」
意識を失ったまま口に突っ込まれていたプレミアムチョコ棒を食べていた!




