第63話 倒れる仲間達
「く、く、クロー!!!!!!!(´;ω;`)」
俺の声が戦場に響く。しかし、倒れているクロは目を閉じたまま反応がない。全身に暗黒物質(黒い塊)が付着していて顔色も悪くなっている。
「クロが……(´;ω;`)」
「な、なんということじゃ……」
「と見せかけて、チョコ棒を残しておいたんだよね(`・ω・´)」
俺はポケットからプレミアムチョコ棒を取り出した。
「こんなときにチョコ棒を食べている場合か!」
「違うよ。クロはプレミアムチョコ棒が大好きなんだ。これを嗅がせれば起きるはずだ(´・ω・`)」
クロを起こすときに使っている方法である。これでクロが起きなかったことは一度もないし、毎回腕ごと噛まれている(´・ω・`)
「ほら、クロ! プレミアムチョコ棒だぞ!」
しかし、クロの返事がない。
「あ、アレ? クロ……?(´・ω・;`)」
クロの口にプレミアムチョコ棒を突っ込む。
しかし、なんも反応がない。
「クロ……? おい、返事しろって(´;ω;`)」
しかし、クロは目を閉じたままだ。
「これは……本当にヤバいやつだ! どどどどうしよう! あわわわ!(´;ω;`)」
「落ち着くのじゃ! まだ食いしん坊ガールは死んでおらん! 暗黒物質は触れた者のHPを吸収する恐ろしい技じゃが、即死するわけではない。早く取り除いてやるのじゃ!」
『無駄だ! その暗黒物質は取り除くことは不可能!』
「なんじゃと!?」
『今のわしの姿……第八形態だったか、第九形態だったか、わしも覚えておらんが、この形態は暗黒物質の性能を格段に向上しているのだ』
「暗黒物質が強化されているじゃと!?」
『そうだ。具体的に言えば、技の全体フレームが短縮され、後隙もほぼない。さらに暗黒物質が付着した相手のHPをこれまでの倍の速度で吸収し、ほとんどの状態異常解除スキルを受けつけなくなったのだ!』
「なんかよくわからないけど、ヤバそう(´;ω;`)」
「後隙がないのは反則じゃろ! 貴様、DLCキャラみたいな性能になりおって!」
※DLC=ダウンロードコンテンツ=課金キャラ=買ってもらうために無課金キャラより若干強くなっていることが多い。
「……いた」
「ん? クロの口が動いている!(´;ω;`)」
クロは目を瞑ったままだが、口だけ弱々しく動いている。なにか言いたいようだ。
「おなか……すいた……」
「クロ……いつもみたいに食べてくれ(´;ω;`)」
クロの口にプレミアムチョコ棒を突っ込む。しかし、噛む力がないのか食べることはなかった。
『ふふふ、このまま勇者と戦っても埒があかない。作戦変更だ! タパポン、やはりお前から始末してやる!』
その直後、俺の頭上に暗黒物質が発生する。
「ひぇぇー!!!(´;ω;`)」
けれど、暗黒物質は空中でバラバラの超細切れになって消滅した。
「タナケン! 早く逃げて!」
「シャル! 助かった!(´;ω;`)」
「ここはシャルに任せて逃げるのじゃ! お主もわかるじゃろ? 主人公らしい活躍がしたいとか言っとる場合ではない!」
それは俺もわかっている。ダークマターは俺がどうこうできるレベルの相手じゃない。
しかし――
「このままクロを置いて逃げるなんて……(´;ω;`)」
クロの全身は暗黒物質によって蝕まれている。下手に触れれば俺まで倒れてしまうだろう。だから、背負って逃げることはできない。
「食いしん坊ガールは諦めるのじゃ……」
「爺さん! これは主人公のプライドとかじゃなくて仲間として見捨てるわけにはいかないんだ!(´;ω;`)」
「バカモノ!!!!!! お主が死んだらシャルは弱体化。そうなれば、人類は滅んでしまう。今ここで救っても結果は同じじゃよ……」
俺を怒鳴った爺さんの瞳から涙が落ちる。それを見て、俺はどうしようもない状況であることを再認識させられた。爺さんもクロを見捨てたいわけではない。だが、どう考えても今は俺が逃げることが最優先すべきだと理解しているからこそ怒鳴ったのだ。あれだけ非常食を食べまくったクロに涙を流せる爺さんの器の大きさを今更ながら知る。なんか今までごめん。
『逃げられると思うな!』
「!?Σ(´;ω;`)」
俺の周りを暗黒物質(サッカーボールサイズの球体)が無数に発生する。
「させない!」
シャルによって瞬時に暗黒物質は木っ端微塵になる。だが、ダークマターはしつこく暗黒物質を飛ばしてくる。
「早く逃げて!」
「くっ! シャル、クロ、すまない!(´;ω;`)」
俺は決意を固めて逃げる。が、振り返った先に暗黒物質が発生した。気づいたときには手遅れだった。ほんの一瞬の油断。シャルはダークマターが直接飛ばしてきた暗黒物質を対処していて気づいていない。くそ、避けきれない。
「タペペン! どくのじゃ!」
ドカッ! と横から爺さんが体当たりしてくる。俺は暗黒物質にぶつかる直前に倒れ込み、代わりに爺さんが暗黒物質に呑まれてしまった。
「ぐあああああああ!!!!!」
「爺さん!!!!!(´;ω;`)」
「ピギィ!?」
その場で倒れる爺さん。俺とウサ太郎はすぐに爺さんの元へ駆け寄った。
「爺さん、しっかりしてくれ!」
「ピギ! ピギィー!」
爺さんは虫の息になりつつも、言葉を絞り出す。
「わしはここまでじゃ……」
「爺さん……(´;ω;`)」
「悲しい顔をするでない……。わしは幸せじゃった。わしはな、子供の頃からカラオケ店の店長になるのが夢だったんじゃ。カラオケ店の店長になれば、ドリンクバーが年中飲み放題だと信じておったんじゃ。わしは20歳からカラオケ店で働き、店長になるためにあらゆる手段を使ったのじゃ。同じ志を抱いていた同僚達と騙し合い、奪い合い、そんなことを40年続けて店長になることができたのじゃ。しかし、従業員達は誰もわしのことを慕わなかった。当然じゃ。わしは店長になるために自身が働いていたカラオケ店のネットレビューに店長候補だったライバルへの苦情を書きまくっていたのじゃ。わしが店長になれたのは実力ではなく、ネットレビューを信じた偉い人の力のおかげだったんじゃ。そんな店長としての器がなかったわしに誰が慕ってくれると言うのじゃろうか。そのまま虚しく店長として過ごし、気づいたときにはヨボヨボのジジイになっていたんじゃ。因果応報というやつじゃな。このまま何の楽しみもないまま人生を終えると思っていたんじゃよ。そんなとき、お主が現れたのじゃ。ふふ、懐かしいのぉ……。覚えておるか? お主はわしにウサ太郎を押しつけてきたんじゃよ。最初はペットなんていらねーと思っていたが、飼ってみたら愛嬌のあるウサギでのぉ……。そらからもお主はわしに頼ってきて、食いしん坊ガールやアイリも連れてきて、とんだ迷惑じゃったわい……。けれど、悪くない日々じゃった……。生涯孤独で終えるはずだったわしはようやく気づいたのじゃ。本当に欲しかったのは店長の座ではなく、慕ってくれる仲間だと言うことをな……」
「虫の息なのに話長くて草(´;ω;`)」
「最後に仲間を救うことができて、わしは本望じゃ……ウサ太郎、タレミンのことを頼んだぞぃ……がくっ!」
「爺さーーーん!!!(´;ω;`)」
「ピギィー!!!」
爺さんの犠牲を無駄にするわけにはいかない。何としても俺は生き残らなければいけないんだ。
『お前ら、話長すぎだ!』
「!?( `ᾥ´ ;)」
再び俺の周りに暗黒物質が発生し、全方向から飛んでくる。避けきれねぇ!!!
「ピギィー!!!!!」
次の瞬間、ウサ太郎が俺を思いっきり蹴り飛ばした。
「ぎゃふん!!! ……う、ウサ太郎ーーー!!!(´;ω;`)」
今度はウサ太郎が俺を庇う形で犠牲になってしまい、胴体が暗黒物質に丸く包まれてしまった。顔だけ出ているがガントバシウサギの長所である手が暗黒物質に包まれてしまい、ダルマみたいな感じになっちゃっている。
「ウサ太郎! 大丈夫か!?(´;ω;`)」
「ピギ、ピギギギギギ。ピギィー! ピギ、ピギ、ピピピ! ピギィ……。ピギギ。ピギピピギギギピ。ピギピギピギピピィピー、ギピギピピピィイギピギィ。ピギピピピィィィ、ピギィー!(俺に、構わず逃げろ。早く! そして、世界を、救え! 俺はここまでだ……。悲しい顔をするな。俺は良いウサギ生だった。分かり合えないと思っていた人間に飼われ、毎日ゴージャスニンジンを食べさせてもらった日々は悪くなかった。お前達には感謝しているぜ、あばよ!)」
「なに言っているのか、全然わからない……(´;ω;`)」
『ふははは、モンスターだというのに人間を助けようとするからこうなるのだ』
「よくもクロとアイリと爺さんとウサ太郎を!(´;ω;`)」
『アイリとかいう娘は貴様の仲間を見て「キャアアア!!! 幽霊!!!バタッ!」と叫んで勝手に倒れただけで、わしは無関係だ。それはそれとして貴様を倒せば勇者は無力化できる。これで我々の勝ちだ』
「ぐぬぬ……(´;ω;`)」
ついに俺以外のタナケンファミリーが全滅してしまった。次、暗黒物質を飛ばされたら避けられない。絶体絶命や。
「タナケン、心配しないで」
「シャル!(´;ω;`)」
「絶対に守ってみせるから」
「うぅ……情けない主人公ですまない(´;ω;`)」
『フッ、次の回で無能な主人公を倒してくれるわ!』
追い詰められてしまった俺とシャル。次回、ついに最終決戦終盤のファイナルパートが始まる! はたして俺は無事に最終回を迎えられるのだろうか!? 続く!




