表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【ダーク】な短編シリーズ

大きな暖炉のある、小さな酒場

作者: ウナム立早


タイトルに反してダークです。


「よう親父、今日もやってるかい」


「また来たかタンザム、ここ最近はずっとじゃねえか」


「今の家は隙間風だらけでさ。いやあ、ここは暖炉が大きくてあったかいな。おっと、今日は強いヤツにしてくれ、ロックでな」


「おや、珍しいな。お前さんが蒸留酒スピリッツのロックだなんて、なんかいい事でもあったのかい」


「久しぶりにさ、デカい仕事にありつけそうなんだ」


「へえ、どんな仕事だい?」


「それがな……」




「こん……にちは」


「おう、来たか」


「……」


「そこに突っ立ってちゃ寒いだろう。暖炉近くの席に座りな」


「はい……」


「うむ、ディナ……ちゃんで間違いないな」


「はい、そうです」


年齢トシのわりには落ち着いているな。その感じでいけば、先方に目を付けられる事もないだろう」


「ありがとう、ございます」


「さて、さっそく本題だが」


「……」


「お嬢ちゃんが働いて親御さんの借金を返すには、おそらく7年はかかる」


「はい」


「長いと思うかもしれんが、短くなる可能性だってある。仕事ぶりが良かったり、この国の通貨の価値が上がったりすればな」


「はい」


「要は希望を捨てないことだ。仕事を終えれば、人生をやり直すチャンスはいくらでもあるさ」


「……はい」


「じゃあ、すまねえが……これからいんを付けさせてもらうよ」


「わかりました」


「暖炉のすぐ近くまで来てくれるか」


「……」


「あちち、ふっ、ふぅーっ。お嬢ちゃん、酒はいるかい」


「大丈夫です」


「この獣の皮は噛んどきな。痛みが和らぐ」


「はい……ありがとう、ございます」


「じゃあ、いくぞ。楽にしてな」


「……」


「……」


「ぎっ!」


「……」


「う、うう」


「……」


「……」


「……終わったぜ」


「……はあ、はあ」


「お嬢ちゃんは強い子だな。その強い心があれば、きっと生き延びれるだろう」


「あ、ありがっ……う……」


「夕方になれば迎えが来る。それまでゆっくりしときな。いいか、決して希望を捨てるんじゃねえぞ」


「……うん」




「よう親父、今日もやってるかい」


「待ってたぜタンザム。初めての仕事は上手くいったかい」


「ああ、馬車の護衛の仕事、大したトラブルもなくて楽勝だったよ」


「そうか」


「あまり深入りはしたくねえが、あの馬車は何なんだろうな。子どもが何人か乗っているのが、チラッと見えたが」


「そうか」


「……? どうした、親父」


「なあタンザム……ここの酒場、そんなにあったけえか?」


「何言ってるんだよ、あんなに大きな暖炉がある酒場なんて、どこを探してもねえよ」


「……そうか」



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ