過去、My Desire
母「厨二病!なんでこんな点数取ってくるのよ!お母さんを裏切るつもり!?」
厨二病「違うよ、僕頑張ったんだよ?」
母「結果が全てです。今日はおやつ無し、部屋でずっと勉強してなさい。」
あれは小5、確か夏休み前だっけ。
98点、俺の模試の結果だ。俺は小学校から塾に通い、毎日勉強漬け。遊ぶ暇なんてない。学校でも塾の宿題ばっかしてた。俺の母は教育熱心で、自分が歩んだ受験失敗の途を、俺に歩ませたくなかったんだ。
母「よくやったわね厨二病!あなたは天才だわ!!好きなもの買ってあげる」
厨二病「ありがとう、僕本が欲しいな」
1週間後のテストで俺は市で1番を取った。ご褒美にファンタジー本を買ってもらった。
それが面白くてたまらなかった。ドラゴンがいて、魔法があって、みんな自由に旅をして、仲間と語り合って、俺とは真逆の生活。
それから毎日休み時間には学校の図書館でファンタジー本を読んだ。いつしか自分にもファンタジーの力があるって思うようになった。
いや、そうしたかった。そうすれば勉強から逃げられる。ここが俺の居場所。ボッチは悲しいし、指摘されたら怒っちゃうけど、これさえあれば1人でも楽しかった。
中学生になった。毎日塾で授業中は寝てた。でも授業にはついていけた。授業が塾の復習だったからだ。
席替えで横の男子と仲良くなった。俺の妄想にも付き合ってくれて、楽しそうに聞いてくれる。
昼ご飯を一緒に食べた。屋上ではいつも社会や英語の単語帳を読んでいたから、これが中学生の昼食かと嬉しくてたまらなかった。
夏休み初めの週、そいつと裏山で遊んだ。昼食のラーメンはクソ美味かった!だって向こうが言ってくれたんだぜ、「友達になろう」って。
夜まで遊んだ。本当に楽しかった。時間を忘れた。忘れたんだ。そう、「夏期講習の時間」をな。
母「こんな時間まで何やってたのよ!!」
厨二病「友達と遊んでたんだ。初めてできた友達でさ、裏山でカブトムシやクワガタを…」
母「だまりなさい!明日から外出禁止です。連絡手段も与えません!!」
俺は絶望した。やっとできた友達を、自分の孤独を受け入れてくれた友達を、自分から失ってしまった。
バカバカバカバカ、俺のバカ。なにも、考えたくない。
夏休み中は1日も外出できなかった。夏休み最終日、夏期講習のテストだった。母親の車で向かった。
テストを受けていると、左目が疼いた。エンシャントダークドラゴンが俺の脳内に語り掛ける
龍(あいつに、会いに行かないのか。)
厨二病(俺は友達を裏切った。会う義理なんてない。)
龍(人間は愚かだ。自分の心に素直になれず、血縁関係があるだけの他人の言葉に縛られる。真の友情に、永久なる絆に、まだ気づかないのか)
厨二病「うるさい!!」
先生「どうしたんですか、突然」
厨二病「……っ!」
先生「どこへ行くの!?」
俺は無意識に走り出し、塾を抜け出した。チャリを漕ぎ、あいつの家まで行く。あいつの家がどこにあるかなんて知らない。でも諦めたくない!名字だけでも気合で探す。
龍(やっと、気づいたか)
厨二病「だまれよ、責任取ってもらうからな!!」
その時思い出した。あいつの家が分かった。あいつこの前
「僕の家川の近くにあるからハエならよく飛んでるよ。」
ここらへんで川といえばあそこしかない!
俺はゴールを目指して漕いだ。まるで龍がうねり地を這うように。