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5 「テヘッ☆ 来ちゃった!」

 もう嫌だ。こんな奴らと魔王討伐に行く位なら、このまま失踪してしまいたい。

 俺が婚約破棄を宣言したせいで、マーズもコノハも俺を気にすることなくエンディとイチャイチャし始めた。

 地獄だ! なんで俺がこんなハブられ方されなくちゃいけねぇんだよ!

 くそう、右手にマーズぱい、左にコノハぱいを携えやがって!

 

 その時だ。

 ぞくりと背筋が凍った。

 今まで感じたことのないものだが、はっきりとわかる。

 誰かから本気の殺気を向けられたら、こんなにも嫌な感じがするんだと。

 

「上です!」


 見上げると巨大なドラゴンが上空から降ってきた、つーかここに向かって突っ込んできた!

 殺られる!

 そう思った刹那、凛とした声が響く。


「止まれ!」


 その声に反応して、真っ赤なドラゴンは高い木々のてっぺんに触れる直前辺りで、軌道をずらしてあさっての方向へ飛んで行く。

 何が起こったかわからないが、今の声はどこからした?

 マーズ達が武器を構えて戦闘態勢に入った。


「まさか、そんな! 魔王城に侵入する前に気取られるなんて!」

「あのドラゴン、相応マズイのか?」


 もはや口調を気にしてられない。

 つーか14歳の女の子を演じるのも、もう飽きた。俺は俺だ!

 コノハは絶望顔して、声を振るわせる。


「そんな……、魔王自らこんな所まで来るなんて……っ!」

「魔王……っ!?」


 どこに?

 上空を飛び回るさっきの赤いドラゴンを見れば、背中に誰かが乗っている。

 それがドラゴンの背中から離れ、こちらへ落下してきた!


「来る……っ!」


 激しい衝撃。

 まるで隕石でも落下したのかって位の衝撃が、全身を震わせる。

 着地というより、これはもう落下でいいだろう。

 地面がひしゃげて浅いクレーターの中央に、炎のように真っ赤な長髪をたなびかせた少女が立っている。

 金色の瞳、不敵な微笑みをしている少女の口の端から牙が見えていた。八重歯?

 見たところ中学生か、高校生くらいの少女は自分の身長より遥かに長い死神のような鎌を持っていて、それを肩の上にとんと乗せる。

 赤と黒の鎧は、体にピッタリとフィットしていて、そして……でかい!

 あれはなんだ!? なんだあの美しいフォルムをした、見事なバストは!

 大きすぎて重力に負けて垂れているわけでも、デカすぎて胸の先が左右にそっぽ向いてるわけでもない!

 芸術作品かと思うレベルに、美しく、バランス良く、ハリのある大きな胸は、とにかくめちゃくちゃに綺麗な形をしていた。

 見惚れていると、魔王と呼ばれる少女と俺の目が合う。


 瞬間、三人が俺の前に立ち塞がった。

 これでも一応、聖女を守ろうという気はあるんだな。


「聖女ミリシラ! 僕達が牽制している間に、魔王の胸を!」

「吸引してください! そうすれば圧倒的なまでに強大な魔王の力は、貧弱なまでに弱体化しますので!」

「頼んだぞ、ミリシラ!」


 急に仲間意識出されても、なんか俺の心はすっかり萎えてしまっている。

 心が寒々しい。

 さっきまで俺のこと、散々バカにしてきたじゃん?

 堂々と浮気しちゃってるし、俺のことつるぺただの胸が抉れてるだの悪口言うし。

 なんだったらどうせこの旅が終わって婚約解消したら、エンディはマーズとイチャイチャするだけだろ?

 まさかとは思うが、コノハも付いて行って三人でよろしくやって行くつもりなんだろ?

 そう思ったらバカらしくなってくるよな?


 俺が白い目で三人を見ていると、クレーターの中心地から何かが飛び出した。

 いや、魔王が空高くジャンプしたんだ。

 そして魔王が俺の目の前で着地して、真正面からお互いの顔が向き合う。

 キラキラとした金色の瞳が綺麗だった。

 興味津々な表情で、俺のことを見つめてくる。

 俺は彼女の素晴らしいお胸を見つめてしまう。


「今です、ミリシラ様! 今がチャンスです!」

「彼女の胸を鷲掴みして、吸引と叫ぶんだ! そうすれば魔王が弱体化して、あとは私達がトドメを!」

「そうすれば僕と婚約を解消して、お互いにウィンウィンなエンディングを迎えようじゃないか!」


 イラッとした。

 最後まで自分勝手な奴らに、どうやったら一番嫌な仕返しが出来るのか考えた結果だ。

 俺は目の前の魔王の腰を片手で引き寄せ、あまり身長差がない為、彼女の豊かな胸が俺の可哀想なちっぱいにばいんと当たる。


「俺は、彼女と婚約する! 異論は認めない!」

『はぁ!?』


 三人の表情が、みるみる歪んでいく。

 そうかそうか、それがお前らの本性なんだな。

 怒り狂うかのように、彼等の持つ武器の先は、魔王ではなく俺めがけて突きつけられた。


「冗談を言ってる場合じゃありませんよ? ミリシラ様……」

「さっさと魔王の胸を吸引するんだ。さもないと、お前だってただでは済まない」

「そうだぞ、ミリシラ。お前は今まで通り、僕達の言うことを聞いて、敵の胸を吸引したら、それを彼女達に与えて強くしていけばいいんだ」


 ん? 今のはどういうことだ?

 すると抱き寄せた魔王が、お淑やかな口調で俺に話して聞かせる。


「彼等はこの世界の害悪、そのものだよ。聖女の力を悪用して、特殊魔法『吸引』で相手から奪った胸を自分達に与えさせてるの。君は利用されてるんだ」


 どういう、ことだ?

 魔王は魔族の王で、人間にとっての敵なんじゃ?


「人間全てが、彼等みたいなわけじゃない。おっぱい信仰の彼等は、おっぱいは全て自分達だけのものとしてるんだ。そしてこの世界で唯一、おっぱいの大きさを自在に操る聖女が誕生した。聖女の『吸引』魔法で相手のおっぱいを吸引して、それを別の人物に『譲渡』させることが出来るんだよ」


 コノハが胸を揺らしながら威嚇してくる。


「ペラペラと、この魔族風情が! 私達の希望でもあるミリシラ様をさっさと渡しなさい!」

「そうはいかない! ミリシラは、私にとってたった一人の大切な人なんだ! 初めてお友達になってくれた、優しい女の子なんだ! お前達なんかに渡さないぞ!」


 え? え?

 話が見えてこない!


「5年前、大きな胸が悩みだった私にミリシラは言ってくれた。とても素敵な胸だって! 魔族である私に、そんな風に言ってくれたのは、ミリシラだけだ! だからミリシラを悪用しようと考えてるなら、この私が許さない!」


 やっべー!

 話の中心が全部おっぱいだから、いまいち感動出来ねぇ!

 あと結構薄っぺらいぞ、これええ!

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