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4 「キリッ☆ 流行りの婚約破棄だぜ!」

 翌朝、何事もなかったかのようにテントから出てくるエンディとコノハ。

 俺はマーズさんの豊満な枕で一夜を過ごせたからいいけど、全然許してねぇからな?


「ミリシラ様、このまま魔王城まで前進あるのみです! 私達は聖女様の特殊魔法で、こんなにも強くなれたんですから! きっと魔王なんかも楽勝ですよ!」

「そうだな、我が未来の妻の力を以ってすれば、魔王など恐るるに足らん!」


 二人でキャッキャと笑い合ってるけど、なんで昨夜あんなことやこんなことをしておいて、涼しい顔をしてられるんだ? 頭ん中沸いてんのか?

 もっと恥じらったり、申し訳なさそうな顔とかしろよ。俺が童貞だからか?

 聖女ミリシラが見て見ぬふりしても、俺はしねぇ!


「あの、すみませんけど。ちょっといいですか」

「おいミリシラ」


 マーズさんが止めようとするけど、こんなモヤモヤした気持ちで魔王城に乗り込めるかよ!

 つーかこういうことがなかったとしても、いきなりラスダン突っ込む勇気なんて俺にはねぇ!


「エンディ、コノハ。あなた達、昨夜はずいぶんとお楽しみのようでしたけど……。あれは一体どういうことですか? 特にエンディ、あなたは私の婚約者だと言ったじゃないですか。婚約者がいるのに、そんな……他の女性とイチャイチャするなんて、恥ずかしいと思わないんですか」


 聖女の口調イコール敬語になっちまう俺。

 いや、なんかやっぱイメージというか。

 なんかまだこいつらが見知らぬ他人って感じするから、どうしても敬語になっちまう。


 二人はぽかんとした表情で俺を見たと思ったら、爽やかな笑顔で笑い出した。

 いや、この……っ! 陽キャ共めぇ!


「何を言ってるんだ、ミリシラ! 僕が他の女性とどんな関係になっても構わないから、結婚してほしいって言ったのは君の方じゃないか!」

「は?」

「ミリシラ様、私達は苦楽を共にする仲間なのです。心も体も仲良くしないと、戦いに支障が出ちゃいます!」


 頭、沸いてんのかぁ?

 コノハがここまで頭の中がお花畑とは思わなかった!

 いや、そもそもこのパーティーおかしいじゃねぇか!

 お胸の大きさがパワーになるなら、戦士のマーズやプリーステスのコノハが同行するのはわかる。

 だが男のお前! エンディが勇者として同行すんのおかしくね?

 男におっぱいなんてないから、パワーとかそういうもん関係なくねぇか?

 なのになんでこいつ我が物顔で一緒にいるんだよ!


 いや、それよりも俺の方からエンディと結婚してほしいって言ったのか。

 ミリシラ、男のツラしか見てねぇ!

 こいつ真性のクズだぞ絶対!


「だったらここで婚約破棄です! 私が結婚して欲しいと言ったのも、他の女性と夜を過ごしていいって言ったのも、前言撤回します! 今ここで、私とエンディとの関係を断たせてもらいます!」

「な、何を言ってるんだミリシラ! 聖女である君と婚約することで、僕は勇者の力を得ることが出来たのに!」


 全部お前の都合じゃねぇか!

 はぁ? なんだこのグダグダパーティー。

 お前、勇者の力とかそういうの元々持ってんじゃねぇのかよ。


「ミリシラ様、落ち着いてください? 確かにエンディ様は勇者の力を得たくて、ミリシラ様との婚約を了承しました。でもここで婚約破棄してしまったら、胸が全く無いミリシラ様を娶ってくださる殿方は、この世にいないも同然なんですよ?」


 可愛らしい顔で、残酷なことしれっと言うなぁこいつ!


「そうだぞ、ミリシラ? この世界は爆乳こそ正義! そんな中、君みたいなつるぺたを相手にする男なんて存在しない! 僕だから、君と結婚しようって気になったんだ! 例えつるぺたでも、胸が抉れていようとも、僕は君を妻として迎える心の準備は出来ているんだ!」

「さっきから二人して、つるぺたつるぺたって、失礼じゃねぇか!?」


 思わず普通の口調、出た。

 いや、もうこんな最低のクズ共にかけてやる敬語なんてねぇわ!


「お前等がなんて言おうと、こいつとの婚約は破棄させてもらう!」


 沈黙の中、エンディは神妙な面持ちで了承した。


「わかった、だけどせめて魔王を討伐するまで待ってくれないか? 聖女との婚約中なら、勇者としての恩恵が神より与えられるようになっている。それなら僕は君を守る為に、全力でこの身を捧げることを誓うよ」

「都合のいい力だなぁ」

「ミリシラ様が本気なら、仕方ありませんね。それではミリシラ様とエンディ様の婚約は、魔王を討伐するまでの間は継続……ということで、よろしいですね?」


 なんか、うまく言いくるめられた気がしなくもない。

 でも魔王を倒しに行くところは変わらねぇんだな、このまま全部なかったことにしたかったんだが。

 ずっと黙ってたマーズが、口を開いたかと思うとまた頭の悪いことを言い出した。


「魔王討伐後、ミリシラ様との婚約が解消されたら……。次は私と付き合ってくれるんだろう?」

「マーズ、僕は勇者としての力を失うというのに。それで本当にいいのかい?」

「私が守ってやるさ。だから、約束してくれるか?」


 お前らもデキてたんかぁい!

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