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3 「ビクッ☆ すでにラスダン目の前!」

 話はわかった。

 つまりこの世界では、おっぱいこそパワー。

 胸の大きさが強さの証、そして魔王は巨乳にして美乳というダブルのパワーを誇っている、と。

 聖女ミリシラは胸が大きくなる年齢に達しても、この通りちっぱいのままだが、それが神の天啓を引き起こす。

 相手のお胸の脂肪吸引という、聖女ミリシラにしか使えない特殊な魔法で、魔王を弱体化させて討伐する、と。


 わかった。

 よーくわかった。

 しかしわからんことが一つ。

 なんで討伐した後に、金髪イケメンの勇者エンディミオンと俺が結婚しなくちゃいけねぇんだよ。

 お前くらいイケメンで勇者という肩書きがありゃー、引くて数多だろ。

 さてはお前、やっぱりロリコンだな?


 お互いの自己紹介、というか。俺が一方的に全員の自己紹介をさせたわけだけど。

 ふむ、なるほど。

 それはそれとして、俺達は近くにあった湖で小休憩を取っている。

 その水鏡に映った自分の姿を見て、俺は一人静かに納得していた。


 薄紫色の長い髪、俺も納得の可愛い顔、白いローブには金色の刺繍が施されていて、サラサラの生地。これはシルクか? 清浄を具現化したみたいな、そんな衣装に身を包んでいる俺は確かに聖女と言われても納得するような姿をしていた。

 しかし、つるぺた……。

 いや、いいのよ?

 お胸大好きの俺は、別に大きいだけが全てだと思っていない。

 ささやかなお胸も、ほぼ何もないお胸も、それはそれで魅力的だと思っているさ。

 でも、胸の大きさこそ力って言ってる世界でこれはないだろうに。

 

 俺が自分を憂いて大きなため息をついていると、マーズさんがやって来て声をかけてきた。


「どうした、疲れたのか?」

「いえ、なんだか大きな使命を背負っているなぁと思ったら。気持ちが重たく……」


 マーズさんは俺の側に腰を下ろして、肩を抱いた。

 これは変ではない。おかしいことではない。もちろん他意はない。

 なぜなら俺は14歳の少女なのだから!

 女同士で肩を寄せ合って何が悪い?

 健全だろう!

 しかしマーズさんのとてつもなく大きな胸が、俺を柔らかく刺激してくる。

 むにむにと、わざとですかって思うレベルで押し付けられて、俺は顔が真っ赤になってきた。


「大丈夫だ。お前は今まで通り、私達が隙を作って相手の胸を吸引するだけでいい」


 そうは言われましても、俺はついさっき目覚めたばかりの、いわば心はレベル1の状態ですぜ?

 現段階でどれだけの死線をくぐり抜けて、どれくらいレベルが上がってるのかわかんねぇけどさ。

 するとマーズさんは、ある方向を指差した。

 俺はその方向へ目をやると、なんだかとても大きなお城が見える。

 周囲には大きな鳥が飛んでいて、どことなく不吉で不気味な雰囲気を醸し出している城。


「魔王城はもうすぐそこだ。あとはあそこへ乗り込んで、魔王をぶっ倒して、それでおしまい。きっとあっという間だ。魔王を討伐すれば、私達の旅は終わる。私はまたギルドへ戻って戦士として戦いに明け暮れる日に戻るだけだが、お前は一人の少女として、エンディと結婚して幸せで平和な家庭を築くといい」

「?」


 ちょおおおおお!?

 今なんと!?

 あれ、魔王城なの?

 最終目的の場所なの?

 ラスダン目の前って、マジで言ってんのか!?

 え? これまでの旅ってどこ行った?


「色々あったな。お前達とギルドで知り合って、旅に同行して、2年といったところか。レベルもだいぶ上がったし、もう一踏ん張りだ、ミリシラ様。共に魔王を倒そう」


 締めくくりに入ってるううう!

 あんたらは2年の歳月を共にして、たくさんの思い出があるでしょうよ!

 苦楽を共に、泣いたり笑ったり、時に喧嘩したり、仲直りしたりしたでしょうよ!

 でも俺、ついさっきミリシラとして目覚めたばかりなんすよ!?

 目覚めて次の目的地がラスダンとか、余計気が重くなるわ!


 あとエンディ!

 お前がミリシラといつ婚約したのか知らんが、初めて会った年齢を考えたらやっぱりお前ロリコンじゃねぇか!

 嫌だあああ!

 俺はもっとマーズさんとコノハちゃんと一緒に旅して、もうちょい戦い方を学んでから魔王城に行くんだあああ!

 街でのドキドキお買い物編は?

 お城に招かれて、ダンスパーティーとかは?

 魔王討伐の傍らで、ギルドから他の依頼を受けて、色んなエピソードを繰り広げる的なやつは?

 コテ入れの温泉回は?

 全部もう終わったの!?

 苦痛しかもう残されてないとか、そんなの嫌だあああ!


 俺が思い切り拒絶反応を起こしてる時、ふと今夜寝泊まりするテントを張ってるコノハちゃんとエンディが目に入った。

 俺が水鏡の湖でマーズさんとお話ししてる間、二人は夕食の後片付けをしたりテントを張ったりしてくれてたんだが。

 ちょっと待て。


「ほら、コノハ。これはこうして、こうだ」

「そうでしたね。では、こちらを私が持ちますので、こっちお願いします」


 手と手が触れ合う二人。


「あっ……」

「いいんだ、気にしないで」

「エンディ様……」


 見つめ合う二人。


 コノハちゃん?

 何を頬染めて作業してんの?

 え? あれ?

 エンディ、お前婚約者である俺の目の前で何イチャコラしてんだ。

 は?

 

「ミリシラ、いつものことだ。気にするな」

「!?」


 マーズさん!?

 知って? え? わかってて、見て見ぬふりさせてんの? 

 はぁ? この世界、浮気はアリなのか!? は? 


 そしてコノハちゃんとエンディが、二人一緒に張ったばかりのテントに入っていく。

 テントの中で明かりがついて、二人の影が映る。

 おいおいおいおい、やめろ? 嘘だろ?

 二つの影が、横顔が重なり合う。

 はぁ?

 いや、マジわかんねぇ!

 もしかしてこいつら、破廉恥な奴らなのか!?

 は? 聖女ミリシラと違って、俺は許さんからなぁ!?

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