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2 「ゴクッ☆ おっぱいこそパワー!」

 お胸の暴力からやっと解放された俺は、状況を整理する。

 どうやら俺は、なんかよくわからんけどドラゴンの攻撃を受けて気絶してたらしい。

 ということはだ。それを理由に記憶障害、とまでは行かなくてもちょっと混乱してて頭の中が整理出来ていない、というていを装うことはできないだろうか?

 あと、俺がどういうことになってるのか早く知りたい!


「あの、すみません。ちょっとお聞きしたいのですが……」

「ん? どうした、ミリシラ。まだどこか痛いのかい?」


 金髪イケメンが先に返答する。

 おめえじゃねぇんだよ、俺はバインバインのお姉様方に話をしてんだ!

 野郎はお呼びじゃねぇ!


 だがとりあえず我慢して、何もわからないフリをしよう。

 いや、実際に何もわかってないんだが。


「あの、俺……じゃなくて、私……。ちょっと記憶が混乱しているのか、ひとつひとつ確認させて欲しいことがあるのですが、聞いてもいいでしょうか?」

「え、そうなのですか? 大丈夫ですか、ミリシラ様!? お聞きしたいことなら、何なりと!」


 ピンク髪の美少女が、可哀想と言いたげな表情で俺を見る。

 めっちゃ大事にされてるじゃーん、俺ー。


「えっと、ミリシラ……というのは、私の名前でしょうか?」

「そうだよ、自分の名前も怪しいのかい? 可哀想に! それじゃあこの僕、エンディミオンが君の婚約者であることも、まさか覚えてないと!?」


 お前、俺の婚約者なんだ……。

 え? じゃあ今の俺は一体何歳設定なんだ?

 見たところ、結構細っこい華奢な感じだったぞ。


「あの、すみません。もっと具体的に知りたいのですが……」


 ちょっと踏み込んでみよう。

 よっぽど大事な存在っぽいから、無下にしないと信じたい!


「私の名前、年齢、職業、目的。そしてあなた方のお名前、年齢、職業、胸囲……じゃなくて、私との関係をお聞きしたいのですが……」

「ミリシラ様、まさか記憶喪失というやつでは?」


 ショックを隠せない表情の、赤い髪の美女。

 いやだから、ややこしいから早くお名前プリーズ!


 まずは金髪イケメンが出てきた。

 いや、お前さっき聞いたからもういいって。


「僕の名前はエンディミオン。みんなからはエンディと呼ばれている。年齢は18歳、職業は勇者をしている。目的は聖女ミリシラ、君と共に魔王を討伐する為、ここにる彼女等と長い旅をしてきた」


 誠実そうなやつですなー。

 あと若い。若いけど、俺の年齢が女子小学生くらいだとしたら、お前完全にロリコンだからな。

 勇者か、勇者パーティー御一行様といったところか?

 異世界転生したというなら、貴族のご令嬢に転生して、何不自由ないスローライフを満喫したかったんだけどな。

 そこは残念だが、こんな巨乳美女に囲まれて、それはそれで悪くないぜ!


 次は赤い髪の爆乳美女が前に出た。

 衣装から女戦士といったところか。

 エンディが剣を装備している反面、彼女は斧を装備している。

 すげー、女性が大きな斧を扱うとかカッケェなぁ。


「私の名前はマーズだ。年齢は20歳、戦士として生計を立てている。私とは冒険者ギルドで知り合って、聖女ミリシラに感銘を受け、私自らが志願して貴女の護衛を引き受けた。目的はもちろん、魔王討伐の為に共に旅してきた」


 かっこいいいい!

 この美女、ひたすらにかっこいい!

 頼れるお姉様、守ってくれるお姉様、分厚い抱擁をかましてくれる最高の美女じゃないすかぁ!


 そして最後にピンク髪の巨乳美少女だな。

 可愛さに全振りしてる割に、スタイルはマーズさんに負けず劣らずといったところか。

 こういう大人しそうな回復系美少女は、ささやかなお胸がお約束に思えるが。

 いいですよ、大きくても無問題!


「私はコノハ、年齢は16歳です。職業はプリーステスです。枢機卿のご命令で、聖女ミリシラ様のお供として旅の始まりから、ずっと同行させてもらっています。目的……、枢機卿のご命令は聖女の護衛と、魔王討伐です」


 コノハちゃんか、可愛いなぁ。

 おっと、デレデレしてる場合じゃないな。

 俺に関してはコノハちゃんが説明してくれるようだ。

 そりゃそうか、この中で一番一緒にいるのが長そうだもんな。

 旅の始まりから一緒にいるって言ってるし。


「そしてミリシラ様、のことでございますね。ミリシラ様は、神の天啓を受けて聖女という役柄を拝命されました。聖女の使命は魔王を討伐することにあります。そしてミリシラ様は、この世界で唯一無二の力を持っているのでございます」

「?」

 

 もうちょい詳しくお願いします。

 俺がにっこり微笑んだまま固まっていることに気がついたマーズさんが、ばいんと立派なお胸をお揺れ遊ばせながら、コノハちゃんの言葉の続きを引き受けた。


「全部忘れている、という前提で話をさせてもらうと、だ。この世界では胸の大きさが力の表れとなっている」

「?」

「つまり、だ。こほん……、わ……私達を見ての通り、ほら……、自分で言うのもなんだが、胸が大きいだろう」

「ご立派です」


 真っ赤になるマーズさん、かわよ。


「この世界では胸の大きさが力、つまり胸が大きければ大きいほど、戦士として。そして魔法使いとしての力が増強されるのです。そういう風になっているのです。神は豊満な胸こそが、最も美しき力の象徴としたのでしょう」


 え、俺……は?


「ミリシラ様は今年14歳になられます。本来なら12歳の頃から、女性の胸はその力を示すかのようにどんどんと大きく膨らんでいくはずなのですが。ミリシラ様は……、奇跡的なまでのつるぺたにございます」

「それ、最弱って意味では?」


 俺はショックを受けた。

 聖女なのに、最弱なのぉ?

 そう口にしかけた瞬間、三人が食い気味に前に出てくる。


「とんでもない!」

「ミリシラ、君にはとんでもない力が宿っているんだよ!」

「聖女ミリシラ様にしか扱えない魔法、それは……おっぱい吸引!」

「おっぱ……、え?」


 力一杯、力説してくる。


「つまりです! どんなに圧倒的パワーを誇る敵も、ミリシラ様の特殊魔法『吸引』を用いれば、力の源たる胸の膨らみが奪われ、弱体化させることが出来るのです!」

「そしてその圧倒的パワーを誇る、巨乳にして美乳たる魔王を打ち倒すには、その魔法無くして討伐はあり得ない! ミリシラ! 共に倒して、結婚しよう!」


 なん、それぇ?  

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