第7話 全ての決着
決勝リーグともなると応援の数も違い、体育館がまるで地鳴りのような感覚に襲われる。と俺は感じていた。
決勝リーグの大歓声の中、俺はこの後のことで頭がいっぱいになっていた。今、思うとあの時は何も考えてはいなかったのかもしれない。
そんな中、始まった決勝リーグ。俺らのクラスは順調に勝ち星を増やしていくのであった。俺はとあることに気がついたのであった。
(あいつとの約束って順位で勝負とか言ってなかったか?もし、同じ順位だったらどうする気なんだ。)
(とにかく俺は優勝しないと話が進まないし。久々に全力で運動してやるか。)
俺は久々に全力で運動することになった俺は自分で言うのもあれだが凄かったのだ。
そうしているうちに決勝リーグはついに勝ち星が同じ同士の戦いになるのであった。
「では、決勝リーグの最後の試合は10分後から開始いたします」
係りの女がそう言った。
「アウラ。ちょっと、飲み物でも飲みに行こうぜ」
「あぁ。じゃ〜自販機でいいな」
俺と聖人は自販機へと歩いていくのであった。体育館の裏口の階段から俺たちは降りていた。
「ってか、今日のアウラなんかヤバいな。部活でも見せたことないくらい動きが凄いんだけどさ。」
「そうか。聖人の勘違いだろ。いつもと同じにしか動いてないさ」
ジュースを飲みながら聖人は俺へ聞いてきた。
「んで、アウラ。もう、決勝リーグも終わりだし浦城問題の解決方法は決まったのか?」
「あぁ。作戦Aに決まった」
「作戦A?なんだ。それ?ま、何か手伝うことがあったら・・・。」
「わかったって。何度も言わなくてもちゃんと聖人の手が必要だったら手伝ってもらうからさ。」
そう。言い終わると俺らはあの体育館に戻るのであった。灼熱と大音量の木の箱の中へ。
「さぁ。注目の男子バレーボールの決勝リーグ。この1戦は目が離せませんね。この1戦で優勝が決まってしまうといっても過言ではないでしょう」
(はぁ?あの解説何を言ってんだぁ?過言じゃなくて、確定だろうがぁ。)
ま、俺はそう心の中で思ったが口には出すことはなかった。
それもそのはず、決勝リーグは4クラスで行っている。そして、俺らのクラスと相手のクラス共に2戦2勝なのだから。
必ず、どっちかが3戦全勝となるのだから間違いない。
そして、試合時間は20分と長かったが決着はついたのであった。
決勝リーグは見事うちにクラスが優勝した。デュースまでもつれ込み。俺のスパイクが2連チャンで決まったのだ。
(ふぅ。久々に全力でやると疲れるんだよな。ま、これで俺の作戦Aの半分近くは成功だ。)
女子のバレーボールの決勝リーグも決まり万能女こと浦城のクラスは準優勝という結果に終わった。
(よし。これで俺の作戦Aは半分成功だ。)
他の競技も決着がついた。そして、時間は15時をまわったところで各競技の授賞式が行われた。
「いやぁ〜。今日は疲れたな。アウラ?」
「あぁ。確かに疲れた。こんなに疲れたのは久々だ」
「アウラ。この後の予定は?」
「大事な1戦がまだ、あるんだな。」
「あれか。頑張れよ。」
聖人は俺の大事な1戦という言葉で何かわかったようだ。
「しっかり、解決してくるから問題ない」
「その戦いが終わったらどうなったのか聞かせろよ」
「あぁ」
俺はそう、聖人に告げると浦城のクラスへと向かった。
この球技大会で俺の最後の戦いが今、始まる。
浦城のクラスの前に俺は立っている。そこで俺は浦城のやつを探すことにしたのだ。
(あれ?浦城のやつがどこにもいない。じゃ〜誰か知り合いでも。おっ。あいつは。)
「すいません。ちょっと浦城のこと探してんだけどどこにいるか知りませんかね?」
俺が訪ねたのは球技大会前日に浦城の隣にいた。聖人が可愛いと言っていた女だった。
(名前は確か・・・。篠田とか篠本、いや篠原とかたしか篠なんとかだった気がするんだが。)
「あぁ〜。美崎君。麻美ならさっき、屋上の方に上がって行ったわよ」
「麻美??・・・ん?誰だ?」
「だから、浦城よ。浦城。浦城麻美よ。」
「あいつ、麻美っていう名前だったのかぁ〜。」
「美崎君口から言葉が漏れてるわよ」
「やべ。悪い。」
「何で私に謝るのよ。謝る相手が違うのよ。」
「あと、美崎君。秘密とかを簡単に人に話すのはどうかと思うぞ。」
「って、そんなこと言われても俺は浦城の秘密なんて知らないぞ」
「勝負に勝ったらお互いの言うこと何でも聞くっていう約束したんじゃないの?」
「そうなのか?」
(浦城は賭け(かけ)の内容言う前に走っていたからな。)
「俺はただ、浦城に勝負しましょう。って、言われただけだぞ」
「麻美のやつ。また、勘違いしたな。ちょっと待って、麻美に伝えるから」
「いや、気にするな。俺が直接伝えるからいい」
「ホントに。あの子、すぐ勘違いするのよ。じゃ〜美崎君から伝えてもらっていいかしら。」
「あぁ。伝えておくわ」
俺はその篠なんとかにそう言うと、急いで屋上に向かった。
「ガチャ」
俺は屋上のドアを開けて柵の近くにいる浦城に気がついた。何かぼんやりと空を見上げているようだ。
(浦城は俺に気づいていない。)
俺は浦城の近くまでより、浦城に声をかけた。
「おい。こんなところで何してんだ。」
「あっ。美崎君。別になんだっていいじゃない」
そういうと浦城は俺の横を通り屋上から出ようとした。
そして、出ようとする浦城の腕を俺は掴んだ。
「ちょっと待てよ。どうして、逃げるんだよ。」
「それにお前に聞かなきゃいけないことがあるのによぉ。」
「何よ。聞かなきゃいけないことって。」
「俺たちは賭けをしていたよな。俺はまだ、お前から賭けに勝ったときの話を聞いてないんだけど」
「えっ。美崎君。知らなかったの?」
浦城はとても驚いている。そして、逃げようとする素振りもなくなったので俺は手を離した。
「あぁ。知らない。」
「だって、体育館でお友達と騒いでいたじゃない。」
「あれは単純に決勝リーグに出場が決まって騒いでいただけだ」
「じゃ〜全部私の勘違いだったの?」
「そういうことになるな。」
「ごめんなさい」
「あぁ。いいよ。誤解も解けたみたいだしな」
「そうじゃなくて、ここで美崎君を叩いたことよ」
「あの時、お前。結構本気でビンタしたろ」
「だって、裏切られてと思って。つい、本気で」
「ホントにすまないと思っているか」
「思っています。」
「じゃ〜何でも言うこと聞くな?」
「はい。・・・えっ?」
驚いた表情で浦城は俺を見つめた。
「え? 許してくれたんじゃないの?」
「あぁ。ただで許したんじゃ、浦城も心が痛むだろ。」
「それはそうだけどぉ。」
そして、俺は考えているふりをした。そして、思いついたように浦城に要求をいった。
「じゃ〜今回の一件はなかったことにする。だから、浦城も今回のことを忘れてくれ。」
そう。これが俺の要求だったのだ。むしろ、俺は勝負に勝っても何も要求するつもりはなかったのだ。
だいぶ前から人に何かを求めるのはやめにしたのだ。
そして、俺は浦城に感謝の言葉を言われた。
「ありがとう。」
「ま、また何かあったら言ってくれ。」
俺はそう言うと、屋上を出ていったのであった。
「ガチャ」
「ドターン」
そして、屋上のドアは閉まった。
「あの〜美崎君。」
またもタイミング悪く浦城は俺に話しかけ、浦城の声は俺に届かなかったのである。
皆さん今日もあついですね〜〜。
そして、眩しい。
ついに球技大会編が終わりましたね。
アウラが浦城を許してしまったという。他にももっと色々な要求があると思うんですけどね。w
次はどんな話になるんでしょう。
みなさんも期待していてください。
あと、よかったらコメントや評価の方をお願いします。