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第5話 予選と感情

 月曜日を迎えた俺達の学校はまだ、朝練を始めるくらいの時間だというのにおおいに盛り上がりを見せていたのだ。


部活がない俺がこの時間に登校しているのというと、今日の球技大会のせいなのである。俺が

出るのはバレーボールの競技なのだがみんな当日の朝は練習したい要望が俺によせられた。


そのせいで、俺は来たくもない朝練の時間に登校させられたのである。


(はぁ〜こんなことしたって何も変わらねぇよ。どうして、みんなこんなことやりてぇんだ)


「あぁ〜ねみぃ〜」


「リーダー。しゃきっと」


「あ?」


振り向くとそこには見慣れた顔が一つあったのだ。

しかし、聖人まさとのやつも眠そうだな。


「別にしゃきっとなんてしなくていいだろ。何でこんな早い時間から登校しなきゃいけないんだよ。」


「みんなでなんかわいわいやりたいんだよ」


「ふ〜ん。そういうもんなんだ。俺にはよくわからないが」


俺たちは歩きながらそのような話をして階段を上って行った。階段を上り終えたとこで俺らのクラスの男子がバレーボールで遊んでいた。いや、練習していた。


「美崎達やっと来たぞ」


そういいながら、そいつはこっちにボールを俺に向かって投げるのであった。俺はそのボールを避けた。後ろから声が聞こえてきたのだった。


「おい、アウラ。何でボール避けたんだよ」


「いや、つい反射的に。それより聖人、ナイスキャッチ」


はぁ〜やれやれ。って、言いたそうな聖人がボールを持ったまま近づいてきた。


「んじゃ、みんなで練習しますか」


聖人はみんなそう言って朝の無駄な運動がスタートしたのである。

かれこれ約1時間はバレーボールもどきをやっていたと思う。スパイクの打ち方を習ったり、トスやレシーブ。サーブの仕方など俺らから教わっていた。


(これで、みんなができるようになったらみんなはどんだけ、すげえんだよ。いや、そう考えると教えた俺らの方がすごいのか?)


そんなことを俺は頭の中で考えていたのである。そして、みんなを良く見てみるとだいぶ疲れはじめていた。

聖人のやつは熱中しすぎてそれに気づいていないのだろう。


「な、聖人。ちょっと休憩しないか?疲れちゃって」


「疲れちゃって。って、普段のアウラならこれくらい簡単にやってんだろ。」


「ん〜。しいて言うなら俺ではなく周りかな。」


俺の言葉を聞いて聖人は周りを見た。俺と聖人以外のみんなはアスファルトに倒れ込んでいる状態だ。


「そうだな。みんな休憩にするか」


「待っていました」「ノド乾いた〜」「疲れた〜」


などという声をみんながあげたのは言うまでもない。そして、俺は時計を見た。時計は8時10分を指していた。

あたりを見回してみると他にやっていたクラスの男達や女達も次々に自分のクラスに戻っている。


(そろそろ終わりにして、着替えてHRホームルームに行けばちょうどいいんじゃないのか聖人)


聖人がみんなを自分の方に集めた。そして、俺もみんなも近寄っていく。その光景はまるで甘いものに群がるありのような光景だった。


「そろそろ、終わりにしてクラスに戻ろうか」


(えっ。みんなを呼ぶほどの話ではないだろう。っと、俺は心の中で突っ込んだ。)


そうして、俺達はクラスに戻り始めた。




 「キーンコーンカーンコーン」っと、予鈴がなった。

いつものように大島先生が教室に入ってくる。「ガラー」っという、音と共に現れた先生の第一声はこの言葉だった。


「みんな気合い入ってるか?今日の球技大会は全種目1位狙ってくぞ」


「わかったな?」


(ふー。あの先生はバカか。このクラスの生徒が全員出るっていうのに全種目で1位なんて獲れるわけがないだろう。)


「今、ここで1位なんて獲れないって思ったやつ。そんな、気持ちだからダメなんだぞ」


(ドキ。大島のやつ心が読めるのか?前にもこんなことが1度あったような気がするな。)


そうしているうちに、球技大会の開会式のために全校生徒は体育館に集まった。体育館の中には人、ヒト、ひと。右から左まで人がずらりと並んでいた。そう思うと案外、この学校も人がたくさんいるなと感じる俺がそこにはいた。


「では、今から開会式を始めます」


司会の女がそう言うと球技大会の開会式は始まった。

俺はその言葉を合図に睡魔に襲われいつの間にかに眠りにつくのであった。

 

そして、気持ちよく眠っていた俺を揺らしてくる奴がいる。誰だ。せっかく俺が寝ているのにそう、思いながら俺は重いまぶたをあげた。


「おい。アウラ。しっかりしろよ」


「おう。聖人。おはよう」


「おはよう。じゃねぇよ。とっくに開会式は終わっちまってるぞ」


「おう。わりい。わりい。睡魔との闘いに負けちまってよ。でも、バレーボールでは負けないからよ」


「アウラ。お前って時々おかしくなるよな」


「そんなことはいいからバレーボールの準備をしろよ」


「ああ」




俺らのクラスのバレーは第1試合ということでみんなが体育館からどいた後ですぐに開始されることになっている。

そして、この試合は第1試合ということもあり、まわりに人がたくさんいる。


その中にはあの万能女ばんのうおんな、すなわち浦城の姿もあることに俺は気づいていた。


(大丈夫だろ。少なくても、俺らが1回戦で負けるなんてことはないはずだ。)


「よし。アウラ、頑張りましょか〜」


「おう。任せとけ」


しかし、試合の結果は思わぬ方向へと動いていったのだ。

そう、俺らのクラスはまさかの1回戦で負け。みんなが緊張でいつも通りの動きが出来なかったのだ。


そんな時だった。あいつが俺に話しかけてきたのは。俺も運動部だ。勝負事に負ける方がいるのもわかっている。

そして、みんなは泣いている。しかし、俺にはどうしても涙が出るほどの悔しさがない。


そんなことを思っているうちに俺は体育館裏の階段で一人考えごとをしていた。そして、俺に1人近づいてくるやつがいた。


(やはり、俺は何も感じない人間じゃないのか悲しみや喜びの感情が不足しているんじゃないのか)


「美崎君は泣かないんですね」


(ん?誰だ。こんな気持ちがブルーの時に話しかけてきて。)


「よ。浦城。俺だって悔しくないわけじゃないんだ」


「ただ、出てこないんだよ」


「私はそうは思わないです。美崎君は人より感情の表現が苦手なだけです」


(急にそんなこと言われても、俺だってどう、対応したらいいのか分からねぇよ。)


「そういうものなのか」


「だって、そうでしょう。あんなに優しいあなたに心がないなんて。」


「何で俺が優しいなんてわかるんだよ」


「私、前にあなたを電車で見かけたことがあるの。その時のあなたの行動が忘れられないのよ。」


「いつのことだ。全然、思い出せない。」


「2人の老夫婦が電車に乗ってきてその時あなたは席を譲って隣にいた人も席を立たせていたじゃない」


「そんなこともあったのか。よく、覚えていないんだよ。昔のことは」


「今時、そんなことする人は少ないわ」


「って、言われてもなぁ」


「結局、お前はここに何しに来たんだ?」


「・・・」


俺がそのセリフを言った途端、浦城は目を押さえながら黙って体育館の方に走って行ってしまった。


(あいつは何がしたかったんだ。俺は心のなかでそうつぶやくのであった。)


「いた。アウラ〜」


「ん?どうした。聖人。」


「まだ、俺らにもチャンスがあるんだよ」


「負けたのに?」


「敗者復活の枠が決勝のトーナメントのところにあったんだよ。」


「ってことはだ。アウラ。予選が終わった後に敗者復活戦をやるってことなんだよな?」


「たぶん、そうだろうな。」


「これでまだ望みが繋がった」


「今度こそ勝とうな。アウラ」


「あぁ」


俺は敗者復活戦が始まるまで1人で色々な競技を見て回った。

外は男子のサッカー。女子のドッヂボール。中では男女のバレーとバスケ。必然的に中の競技の方が時間がかかる。


 俺は浦城のことが気になったのである。俺のあの言葉でなぜ浦城が黙って行ってしまったのか。

そう考えているうちに俺の足は体育館へと進んでいた。


「キャー。麻美。そこよ〜決めて〜」「頑張れ浦城」「キャー浦城先輩。」


などという浦城へ応援やら何やらが混じっていた。


「相変わらず、あいつは人気だな」


「そうだな。浦城は人気だ」


「おぅ。聖人。いきなり、出てくるなよ」


「だって、私〜アウラ先輩を見かけて〜急いでこっちまで見に来たんですよ。」


「おい。聖人。気持ち悪いから女子の真似なんかするな」


「いや、アウラが元気ないなと思ってさ」


「それにちょっと聞きたいこともあったしさ。」


「聞きたいこと?」


「あぁ。さっき体育館裏で浦城と何をしゃべっていたのかなってさ?」


「俺もよくわからん。」


なので、俺はそこであったことを聖人に話してみた。


「それって浦城がアウラを心配してきたんじゃねぇのか?」


「何で浦城が俺を心配なんてするんだよ」


「ふぅ〜。分かってねぇな。浦城はお前に気があるんだよ」


「聖人こそわかってねぇよ。俺と浦城があるわけねぇよ」


しかし、そう言われる不思議なもので今までそんなに気にならなかった浦城が急に気になりだした。


「あらあら、アウラちゃん。浦城のことを気になりだしちゃった感じですか〜?」


(相変わらず、良いタイミングで声掛けてくるな。本当にサトラレ気分だ。)




そうこうしているうちに俺らの敗者復活戦が始まった。結果は見事に俺らが勝ち上がったのだ。


(うれしいはずなのに俺の頭の片隅でひっかかって取れないモヤモヤが未だに存在していることに俺は気がついた。)


しかし、この後の出来事でそれはすべて解決へと向かうのであった。


「美崎君。ちょっと良い?」


俺らが、決勝トーナメントに出場が決まり、盛り上がっているところに浦城が話しかけてきたのだ。


「わりい。ちょっといってくらぁ」


「おぉ。なんだ。なんだ」「アツいね」「あの2人ってまさか」


などという声が聞こえてくるが浦城にはそんなことお構いなしで歩いて行く。

そして、俺は浦城が行く方に着いて行った。



(浦城のやつどこに行く気なんだ?)


この道は屋上にしか続いていないはずの道をひたすら上がっていく浦城。そして、それを追う俺。


そして、屋上に着くと浦城はしゃべりだした。


どうも、作者の新咲美羽です。

球技大会のところが長いですね〜。まだ予選です。そして、次回は決勝という形になると思います。


しかし、決勝の前にまさかの浦城からの呼び出し。アウラはどうなるのか?

楽しみです。


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