第1話 プロローグ
「今日何日だったかな。」俺はふと考えた。そして、これが俺の一日の始まりでもあると同時に終わりでもあるのである。常にダラダラとした時を生きる俺にとっては日常茶飯事だ。そう、俺の名前は美崎亜羽羅二十歳である。今の俺はとある大学に通う三年生である。
中学・高校・大学と今まで何も考えずヒトに興味もなく、過ごしてきてしまった。
俺はいま、大学三年生になってやっと自分というものに向き合うことになった。向き合うにあたり、自分の価値とは何なのかそれを考えている。
人の価値とは何か?「財産?経験?恋愛?家柄?学歴?」などと色々と考えてしまうのである。その考えた自分の価値観を自分と照らし合わせてみる。そうすると、何ともピタリと一致しないのである。それもそのはずである。今まで俺は何も考えずヒトに興味もなく、過ごしてきてしまったのだから・・・。
周りの人からみたら確かに俺はリアルを充実しているのかもしれない。しかし、そこに充実感が存在しないのだ。それはその一つ一つに俺の「心」、いや、「魂」といってもいい。
それが俺の中に存在しなからだ。そんな、俺には絆と呼ばれるものは誰とも存在しない。いや、絆になりかけつつあるものが昔、俺にはあったはずだ。
しかし、それが全くと言っていいほど思い出せない。と考えつつ俺は眠りについたのであった。
夢の中・・・。ここはどこだ。あ、ここは見覚えのある景色。しかし、建物の名前が思い出せない。でも、ここには来たことはある。あれは誰と来た時のものだろうか?
そうだ。俺の昔の彼女と着た場所だ。初デートの場所に間違いない。初デートになるまでも大変だったのだ。彼女の名前は何といったか・・・。確か「浦城麻美」という名前を記憶の片隅にある。
俺はすでにその頃から何にも興味のない生活を送っていたのだからデートになる前も半年以上すっと携帯のメールをやりとりのみであった。学校で同じ授業になっても話すこともない。ただただ、授業を受けているだけの仲だった。
俺は何と声をかけていいのか分からなかったのだ。人と接するということから遠のいていた俺の引き出しには何も詰められてはいないのであった。
引き出しに唯一入っていたのは「相手の様子を見る」という一枚のカードだけだったのを今でも覚えている。そんな俺はいつもこう考えてしまうだ。もし、俺がこの人と話をして仲良くなる。その後、付き合うことになるかもしれない。
しかし、何も入っていない引き出ししか持っていない俺にはこの人を幸せにすることはできないんじゃないか?いつか必ず不幸にしてしまうのではないか?そう考えている内に俺はまた、自分の「不安・恐れ」という殻に閉じこまってしまうのだ。
しかし、俺のそんな殻を徐々に砕いてくれる人と出会うのだ。相手にはそんなつもりではなかったかもしれない。でも、俺にとってはそう感じたのだ。そんな昔の彼女を思い出していた。
そして、ここからアウラとアサミの物語は始まっていくのであった。