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嘘つき男の英雄譚  作者: ベラシックス
2/12

厨二男と三つ頭の化け物

良くも悪くもマイペースに書いていきます。

よろしくお願いします。

「・・もしかして、あの後に俺は奇跡的に生き延びて捕まってここに運ばれたのか?」


錬太郎はおもむろに刺された腹と首の部分を触った。


「うん!?傷がない??どういう事だ?・・てか、徐々に暗闇にも目が慣れて来たが・・何も見えねぇな。それに色々確認しようにも灯りもねぇし、自分の状態確認するのにも鏡もない。・・とりあえず、状況を整理しよう。・・・・・・えーと、とりあえず俺は奇跡的に生き残っていて、なぜか俺は刺されたはずなのにその傷が回復したのか、既に消えている・・そしてなぜか全裸・・・・・・マジで意味が分かんねぇ~よ!!これは一体・」


次の瞬間、


    「ゴルァ~ア~ァ~~!!」


洞窟の暗闇の奥の方から聞き慣れない何か獣のような叫び声が聞こえて来た。


「うぉ!?なんだ?・・今の音は?というより唸り声か?・・まさか獣でもいるのか?この洞窟の中には・・」


すると、巨大な空間の洞窟の奥から、先程の鳴き声と共に駆けて来るような大きな音が聞こえてくる。その方向を見ると三点の大きな松明ような物が見える。揺らめきながら、ものすごいスピードで迫って来る。


(うん??もしかして?何かの捜索隊みたいなのが俺を探しに来たんじゃないのか?)

「お~い!!助けてくれ!!俺はここにいるぞ!!お~~い!!・・!?」


次の瞬間、目の前に現れたのは3つの頭を携えた巨大な筋骨隆々な狼犬の姿であった。口からは絶えず炎が洩れ出でいる。

松明に見えたのはその炎であったようだ。それを見た錬太郎は恐怖のあまりに腰が抜けてその場で固まってしまった。


(嘘だ!!・・こんなの現実な筈がない!!こんな化け物が存在するはずなんて・・・・そうだ!!そうだよな!!これは夢!!きっとそうに違いない!!)


その三つ頭の化け物は、錬太郎にゆっくり顔を近付けるとスンスンと鼻を鳴らしながら錬太郎の臭いを嗅ぎ始める。その生暖かい鼻息が錬太郎の肌をくすぐる。


(・・夢と決まったら、こんな化け物どうって事ねぇ!!こんな犬ッコロやっつけてやるぜ!!)


すると、錬太郎は三つ頭の化け物に向かって威勢良く言い放った!!


「はぁ~っはははは!!」

「ガウ?」


突然大笑いし始めた錬太郎に三つ頭の化け物は困惑しているようである。そんなのお構い無しに錬太郎は続ける。


「おい!!犬ッコロ!!・・俺様に出会ったのが運の尽きだな。これは夢!!つまり俺のフィールドだ。お前に俺に・・いや俺様に勝つ術はない!!・・食らえ!!俺の究極必殺奥義!!スーパーかめはめ波!!!」

錬太郎は昔から大好きだった漫画「ドラゴンボール」の主人公になりきり、その必殺技を放った。

・・いや、つもりだった。放ったつもりの錬太郎は一人悦に入っている。


(ふっ・・所詮俺に勝とうなんて百年早いんだよ。・・・・うん?・・あれ??)


目の前にはポカンとした。表情を浮かべた三つ頭の化け物がいる。


(あれっ・・くそっ・・夢とは言え、思い通りには行かねぇもんだな・・こうなりゃ、やけくそだ!!てぃや~!!)


錬太郎は拳を思い切り振りかぶると、目の前にあった三つ頭の一つの頭の鼻柱目掛けて思い切り殴り付けた。

「グワァ~~!!」

殴られたその頭は苦しそうに頭を仰け反らせた。


(よし!効いた!やっぱり夢だぜ!!)

「へへぇ~ん!どんなもんだい・・必殺技は出なくても、この拳で倒して、や、る、ぜ・・えっ!?」


錬太郎の前には、先程と違い明らかに激昂し、殺気に満ちた三つ頭の狼犬の化け物の姿があった。


「グガァ~・・ガウ!ガウ!!」

「あれっ・・なんかこれ・・これ明らかにヤバい雰囲気が・」


次の瞬間、三つ頭の狼犬は息を大きく吸うと、口から炎のブレスを3つの頭から同時に放って来た。


「うおっ!?やべぇ!!」


錬太郎は素早く三つ頭の狼犬の足元に逃げ込んで、なんとか炎のブレスを躱した。


(ふぅ・・あぶねぇ、あぶねぇ・・あんなの食らったら即丸焼きだろうが・・っておい!!)


足元に逃げ込んだ錬太郎を容赦なく、鋭い鉤爪のような爪をもった前足で襲う化け物。錬太郎はなんとか躱しながら、前足の届かない中腹部に移動した。


(ふぅ・・これで前足の攻撃は届かないはず・・って、えっ!?)


次の瞬間中腹部に潜り込んだ錬太郎をボディプレスしようと化け物が、その巨体を一気に屈めた。

錬太郎は間一髪の所で胴体下から逃れて躱すと、その化け物の巨体の背に乗り込んだ。


「ガウ!グゥガウ!ガァ~!!」

「よし!これで俺を襲えないだろう・・えっ!?」


錬太郎の近くを何かが通った音がした。見るとそれは化け物の尻尾であり、錬太郎を攻撃しようと鞭打つように錬太郎の周辺を手当たり次第攻撃しているようである。


「おいおいおい・・マジかよ・・夢なら、もう良いって!!醒めてくれよ!!」

「・・・・・・・」

「何も起きねぇな・・まさかこれ夢じゃなくて現実?いやいやいや、あり得ないでしょ流石に・」


次の瞬間、化け物の尻尾が錬太郎の右手を襲った。その手の指先は木端微塵に弾け飛び、手から大量の血が流れ出る。


「ぐわぁ~!!・・なんなんだよ・・夢だとしたらこの痛みはあり得ないだろ・・くそっ・・夢だろうが、なんだろうが、とりあえず生き延びなけりゃ始まんねぇ・・くそが!!」


錬太郎は意を決して化け物の尻尾の攻撃が届かないと思われる首元に目掛けて走り出した。そして、無事にたどり着くとしがみついた。


(よし、これで全部の攻撃が届かないはず・・・・えっ!?)


安心したのも束の間、化け物は唸り声を上げると首元にしがみついた錬太郎を振りほどこうと暴れ出した。


(・・絶対に放すもんか・・諦めるもんか・・)


錬太郎は必死にしがみ付いて離されまいと頑張った。化け物は長い時間暴れて洞窟の壁や岩に自分の体をぶち当てて、その衝撃で錬太郎を振りほどこうとしていたみたいだったが突然動きが止まった。錬太郎も右手の傷の出血の関係も手伝い、意識が少し朦朧として来ている。


(うん?諦めたか?)


次の瞬間、化け物は勢い良く壁を駆け登ったかと思うと、空中でその身を翻した。


「うぉっ!?なんだいきなり・」


見ると眼前に、地面が迫っている。

どうやら化け物は首元にしがみ付いた錬太郎を今度は背中の方から潰しに掛かろうとしているみたいである。


(くそっ!そう来やがったか・・だが、そうは行かねぇぞ!!)


錬太郎は力を振り絞り、急いで背中方向から、今度は頭のある首元に潜り込むように回り込んだ。間もなくして、ものすごい衝撃が錬太郎の体を襲った。


「ぐわぁ!・くそっ諦めの悪い奴だぜ。いい加減に諦めて俺の事逃がしてくれても良いだろがよ!・・うん?」


横を見ると真横の頭が錬太郎の方向を横目で睨み付けている。


「そんな目で睨み付けた所でな!てめえの攻撃は届かないんだよ!!残念でしたねぇ~」


首の据え付き具合から、他の頭の攻撃が来ないと踏んだ錬太郎は横の化け物の頭を挑発した。

次の瞬間、化け物は突然炎のブレスを天井に向かって吐き掛けた。そのブレスは折り返すように化け物の顔に向かって降り注いで来た。突然の事にびっくりした錬太郎は首元を離れてその場から飛び出した。


「うおっ!?一体何が起こったっていうんだ?こいつ俺に頭来てやけくそになりやがったか?」


見ると先程降り注いだ炎のブレスは頭だけではなく、化け物も胸部もその炎を覆っている。


「あははは!やっぱり俺がしつこいもんで、コイツ痺れ切らしやがったな!自分の炎で丸焼きなったんじゃ、ざまぁねぇ・な・・えっ!?」


すると、目の前の化け物は身を起こし、自分に付いた炎を犬が身震いで水気を弾くように弾いた。


「おいおいおい!嘘だろ!!」


次の瞬間、化け物は勢い良く息を吸い込み始めた。明らかに炎のブレスを放つ態勢である。


(これはヤバい・・ヤバすぎる。食らえば確実に丸焼き・・いや、即灰コースだろこれ・・どうすりゃ・・)


生死と隣り合わせのクロックアップした思考と視覚の中、辺りを見ると化け物の後ろの壁に一筋の光が漏れ出ている空間が見える。先程化け物が暴れたせいなのか?単に気付かなかっただけなのかは知らないが、どうやら外へ続く空間があるようである。


(うん!?あれは光か?・・!?って事は出口じゃねぇかよ!こうなりゃ一か八かだぜ!!やってやる!!)


錬太郎は間髪入れずに走り出した。化け物はそんな錬太郎に向かって炎のブレスを放った。


       「あめぇ~よ!!」


錬太郎は先程化け物が暴れ回った事で出来たささくれだった岩影を上手く盾代りに利用しながらどんどん近づいて行く。

そして、ある程度近づくと勝負所とばかりに走り出した。化け物の下っ腹に入り込み、その下を抜ける。目の前に光の射す出口が見える。


(よし!行ける!!これでこのゲームは俺の勝ちだ!!)


そう思った次の瞬間、錬太郎の背後を強烈な一撃が襲った。

その一撃は化け物が後ろ足で蹴り出した石弾であった。

その攻撃を食らい錬太郎は光の射す出口手前で倒れてしまった。


「ぐはっ・・一体なにが・・くそっ・あともう少しなのに・・」


化け物はゆっくりと身を錬太郎の方に返すと、ゆっくりと錬太郎の方に迫ってくる。


(・・どうせ、これは夢。所詮夢なんだから諦めてしまおう。頑張っても意味なんてないしな・・・・でも、本当にそれで良いのか?俺は人生を中途半端に諦めて来て、曲がりくねって、詐欺をして金を稼ぐようになってしまったこの俺・・本当にそれで良いのか?・・刺されたあの時思ったよな?次に生まれ変わるなら良い人生をって・・・・これで良いわけねぇよな?それにゴールが目の前にあるのに、わざわざゴールしないなんて目覚めが悪いよな!・・夢だけになんつって・・・・)


一人自問自答を繰り返し答えを出した錬太郎は、最後の力を振り絞り、這いつくばるようにしてなんとか出口を目指す。すると、それを察した化け物は勢い良く駆け出した。


(くそっ・・あと少し・・あと少し・・)

「グオォ!!」


化け物が噛み付こうと、一気に飛び掛かり襲い掛かった。

次の瞬間、天井から大きな落盤が起き、化け物の頭にのし掛かり化け物は動けなくなった。


(・・運が良いな。ざまぁみろってんだ!頑張る人の邪魔するから罰が当たったんだよてめえはよ!・・あとは出口と言うゴールを目指すだけだ・・)


錬太郎は這いつくばりながら、ゆっくりと愚直に光の射す出口をひたすら目指すのであった。


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