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01勇者召喚のおまけ


・・・俺は閉店した店の前に確かに居たはずだ。


傷心した俺を気遣って姉と妹が迎えに来てくれたから、店に最後の挨拶をして振り返ったんだ。

そしたら思っていた以上に姉の車のライトが眩しくて目を瞑った。

うん、大丈夫。覚えている。

俺の記憶は正常。


「勇者様、聖者様、賢者様っ!どうかお救いください!!」



【勇者召喚】【異世界転移】



ファンタジー小説で最近人気のジャンル。確か店の常連客にも好きだっていう人がいたな。

だけど、29歳のおっさんが召喚されるのは違うだろう?

店が潰れてしまったのは確かに悲しいけど、俺は1分前までは日本で、姉と妹、それにきのことだいずの家族と一緒にこれから生きるために次の職を探すって気合いを入れたばっかぞ?

こういうのって孤独な少年とか、少女がなるもんだろ!それこそ物語の主人公タイプのさ。


「ゆ、勇者?俺が?」

「まってまずここはどこですか?」

「私、今トラックに轢かれそうになって・・・どうして」


あ、主人公あの子たちだ。

高校生っぽい学生服来た男女が3人。さっき女性の声で聞こえた【勇者】【聖者】【賢者】がきっと彼らだろう。

そうなると、俺、ほんと、なんでこの場所にいるんだろう?


いやいや、友則まず落ち着け。

疑問よりまずあの子たちの保護だろう?だってほら、俺は大人だからな。

交渉とか未成年を危険から遠ざけるぐらいはやらないと。

とは、思いますけども・・・



「勇者、聖者、賢者の召喚した人物以外がなぜここにいる」


俺の存在に気づいた騎士?達が一斉に剣を俺に向けてる。

なんでいるとかこっちが聞きたいわ・・・


勝手に人を召喚しといて敵意向けてくるとか、こりゃここに長いしてたら命が危ない。

どうにか円満に逃げ出す方法はないものか・・・



と、思ったらすぐに高校生の子たちを一緒に召喚を命じた張本人であるこの国のトップ、王様と謁見することになりました。

なんだろうね、この絶対に逃がさないぜ!っていうスピード勝負。

もちろん俺の後ろにはおっかな~~い顔をした騎士たちがいるわけだけど。


ちらっと後ろをみたらすっごい睨んでくるの。

営業や接客でそれなりに面倒な客の応対はしたけどこの怖さはジャンルが違う。

本当に命の危険性があるからな。


んでもって、王様の話というと、


この世界は魔物が蔓延っていて近年魔物の強さが高まっている。

この国は資源が豊富にあるため常に周辺国にも狙われていつ襲われるかわからない。

魔物が強くなるのはスタンピードの兆候と言われていて、かつて他国が侵略する時にスタンピードをわざと発生させ魔物に襲わせたあと国を略奪した伝承がある。

今はその前触れの可能性がある。

様々な危機に面している現状をどうにかするため、藁にもすがる思いで【異世界召喚】を試みた

国同士の諍いはこの土地に住む人間の問題。勇者・賢者・聖者は来たるスタンピードや魔物そのものの弱体化に協力して欲しい。

もちろん協力してくれるなら、戦闘技術、魔法技術は教えるし、衣食住は保証する。

元の世界に戻れるかはわからないが、目的があって召喚したのでその目的が済めば戻れるのではないだろうか。

無理やりこの世界に召喚している立場だが、どうかこの国を守ってほしい。



と、絵に描いたような悪そうでとっても太った王様が言ってました。

ちなみに王様の隣には跡継ぎだそうな王太子にお妃様にお姫様方がいる。

誰もが豪華な衣装を身に纏っているし嫌な笑みを隠そうともしなかった。


まぁ、なんか高校生たちは空気に飲まれてるのか瞳を輝かせているけど・・・



俺については、

「貴殿はおそらく巻き込まれたのであろう。こちらの都合で呼び出したわけだが、戻る方法は勇者たちと違い目的があって呼び寄せたわけではないから知らぬ。

だが余は善い王故に慈悲を貴殿に施そう。ここに残るもよし、立ち去るのも良いとする。

ここに残れば衣食住は勇者達同様に保障するが、また同様に我らの力を貸してもらうこととなる。立ち去るのならば、今後王宮に来ないと誓えば金貨50枚を授けてやろう。

さて、どうする?余は誠に善い王故、貴殿の意思を尊重しよう」



まぁそう言ってくださった。

俺としては怪しさ満載のこの場所、この国から離れることがまずこの世界で一番重要になっていたため


「あ、でしたらこれ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきませんので王宮を去ろうと思います。

金貨ありがたく頂戴します。護衛などは大丈夫です。そこまでお手を煩わせるわけにはいきませんから。お心づけ本当にありがとうございます」



で、投げつけられるように渡された王様にとっては端金だろう金貨50枚を手に、速攻王宮を追い出された。

すまんな少年少女。王様の話に目を輝かせてた君たちはきっとオッサンな俺の話なんて聞かないだろう。

鑑定された俺の体力とか魔力量とかで圧倒的な差があることで爆笑してたもんな。

きっと君たちならこの国で生きていけるさ。俺はひとりと2匹でこの世界で生き延びる。



「まずは情報収集と物資の調達。あ、もしかして移動って馬車か?」


着の身着のままで召喚されたんだ。衣服も買い替えた方が良いな。

パーカーにジャージ(作業しやすいように)はちょっとこの世界だと目立ってる。めっちゃ通りすがりの人が見てくる。


あと猫のきのこも、犬のだいずも一緒に召喚されてしまっているから、日本と違って道に舗道なんてされていないこの道は2匹にとっては辛いだろう。

召喚された時にだいずが一瞬唸ったけど、その後は黙っていてくれてホント助かった。

きっと王様に吠えたりしたら今頃みんな死んでると思う。

あ、でも勇者君達を怯えさせない&信用されるために生かされる可能性もあった・・・か?

いや、俺の直観では別室待機でその後死亡だわ。


「あーーー、お前らの餌とかどうするか・・・前途多難だわ」


50枚の金貨でどのくらい物資をそろえられるのか。まずはそこからだ。


俺は情報収集のためにおそらく城下町に繰り出した。



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大きな魔力が渦巻いている


「おや?」


その魔力の何割が私の魔力として補充されるのを感じたと思ったら、ふいに視界が明るくなった。


「ここは、あぁ宝物庫。か。」


私はすぐに状況を把握する。

あの防衛戦の最中、壮年の騎士が命じ魔術が強制的に転移の魔法陣を展開させたんだった。

魔法陣は殆ど消失しているが、この自分と王宮地下にある自身が所有する宝物庫への魔法陣は残っている。


宝物庫は王族のみ出入りが許されており、入る方法も転移魔法陣のみ。

王族は生まれてすぐ自分が所有する宝物庫へつながる魔法陣を魔力に刻み付ける。

こうすることで今回のようにその身に危険が迫ったときにすぐにでも宝物庫へ逃げ込むことができるのだ。


王族が私的に持つ宝物庫は籠城という意味合いが強い。

そのため、宝石が魔石、金貨はもちろんのこと、様々な食糧やポーションも貯蓄している。

自分の戦闘スタイルによってはこれに武具の割合が多くなるだろう。



(私は主に薬やポーション、その材料が多いけどね)


それにしても一体今はいつなのだろうか。

戦況も気になる。

仮死の魔法陣も誤って起動されてしまったから1日や2日での目覚めではないはずだ。

警戒システムが起動されていないことから王宮へ侵入者が乗り込んできたわけでもない。



私は遠見魔法を行うことにした。



「知らない人、私たちとは似つかない品のない王。聞き覚えのない言葉だな・・・国が落ちたということか?

でもそれだとどうして私は生きてる?宝物庫の存在なんてどこの国でも知っているだろうに。

価値がないと思われた?いや、そんなことはないな。実際攻めてくる理由は宝物庫の豊富さもあったはずだ。

それに勇者?だと?まさか禁術を使った異世界人か。だとすれば、ここにいては危険だな」



言葉は知らない言語だった。

きっと私の固有スキル<疎通>がなければ何と言っているかわからなかっただろう。

地味だが外交に強いスキルは本当に助かる。



「まずは仲間の確保だな」


末っ子で常に人に囲まれていたんだ。

独りぼっちはこの年になっても寂しい。

それに、ほら、私は久方ぶりに目覚めたのだから人肌恋しいのも仕方ないだろう?

直前まで戦場にいたから特にだ。



「彼女にまた会えるだろうか」


転移魔法陣の上に飾っている、私が所有する宝物庫で唯一の絵画である、

妻が描かれた美しい絵を見たら弱音が出てしまった。



自分の宝物庫に貯蔵していた全てをアイテムボックスに収納する。

ついでに1つ上だった屑な兄の方宝物庫の中身を全て。

時間経過のない宝物庫は生肉・野菜・酒の貯蔵は十分にあるし、少ないが穀物も貯蔵している。

ポーション用の薬草も貴重な種子たちも全部持っていくのだ。

きっと二度とこの宝物庫に戻ってくることはないから。


あと地上にあるおそらく今この国を治めているであろう、王の宝物庫から現代の金を。

現代の宝物庫から貰った金は、胴貨、銀貨、銀貨が半分となっているもの、金貨、白金貨と種類があった。

それぞれ雑然と山になっていたので、全種類を旅代として貰っていこう。大丈夫、全部は貰わないさ。ちょっと山が小さくなるくらいだ。



でも趣味が悪い顔付きのものはすぐにバレてしまいそうだったから持って行かないが。



私は認識阻害の魔法を宝物庫全体にかけ、アイテムボックスから食べれば姿を認識できない効果をもつ種子を取り出し飲む。


その後は特に問題なく、手ごろな王宮内に転移して城を後にした。



「なにもかもがレベルが低いな今のここの国王は」


目指すは城を叩きだされた異世界人だ。


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