第二章 第三幕 武田家、信濃への野望
野営とは云え、充分休息できた俺たち。体力・気力とも回復して、関東管領の元へと向かう。
二回目の野営での食事後、葵衣は真剣な面持ちで語り始めた。
「あくまで、私の学んだ事で事実かは分かりませんが――」
と前置きをし、武田家と信濃の歴史を語りだした。
元々信濃国は山河が多く、領地が独立しやすい気風があった。有力氏族の諏訪家、小笠原家などの分家も多い。分れたのは昔であって、親戚という考えは薄れていた。
武田家は先代信虎の手腕で、内訌の多かった甲斐国を統一した。先代信虎に続き現当主の晴信は対外政策を打ち出す。同盟関係を結んでいた諏訪家を攻略し始めたのだ。
先にも触れたが信濃国は独立勢力も多い。勢いのある武田家に従い、本家筋であった諏訪家攻略に加担した勢力も少なく無かった。
信濃の要所佐久地方にも武田家の侵攻が開始された。
「俺が仕えいた領主の笠原清繁様は、武田家との徹底抗戦の構えだった」
俺みたいな下級侍詳しくは知らないが、政治的関係もあるからだ。関東管領上杉家の家臣と縁戚関係を結び、上杉家から支援があったからだとか。
「そして、その後は?」
ファンタジーには興味があるが、実際の歴史には疎い俺は気になり質問をする。
「それ以降は……ごめんなさい」
葵衣は申し訳なさそうに言う。
武田信玄と言えば、越後の上杉謙信と川中島で戦っているのだから、最終的には信州を制覇しているのだが、細かい動きはわからない。武田家に下ったのか、もしくは――
蓉子は、笠原様の運命を占って楽しんでいる。
朱莉は、乱世での人の醜い裏面を知り、生死が関わると顕著に現れる。人外とは別の恐怖に怯えていて、俺の腕にしがみついている。
「もう休もうか……」
俺の合図で、みな野営らしく、それぞれ休むことになった。
葵衣はどこまで知っているのだろう。そして、これからどうするのであろう。
明日には隣国上野入りできるだろう。




