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第四章 第十一幕 種明かし

日我上人の祈祷も効果が無かった。そして、葵衣が接触を持つために火渡りを成功させるが、他の層から「まだ、信じられぬと」声が上がった。


あの僧の言い分は、間違っていない。ぱっと出の俺たち、しかも一度失敗をしているのだから、話を通してくれない気持ちはわかる。でも、今はこの闇に対処するかが問題のはずなのだが、日本特有の村社会なのであろう。


日我上人は黙っていた。葵衣も黙っているが、諦めた様子はない。

何か次の策を持っているのだろうか。


「わかりました。確かに火渡りは、秘術であれど方法を知っていればできます。もちろん、私は方法を知っていました。では、次の試練はいかがでしょうか?」


火渡りを行った、少し奥にまた何か道の様な物が有る。

葵衣は、その道から何かを拾い、上人に渡した。

「上人様は、見てお分かりかと思いますが、これは焼き物の欠片です。あちらの道には、その欠片が敷き詰められています。私の修行で得た秘術を、ここでお見せしたいと思います。これでよろしいでしょうか?」

上人は、葵衣を見ていた。内心では葵衣を信じ、話を聞いても良いと思っている様に思える。しかし、周りの関係者からの信を得られなければ、どの様な結果が得られようとも納得が得られないのも確かである。

上人は、小僧を一人選び、葵衣が渡した焼き物の欠片を確認させる。小僧は、その先端で自分の手のひらをつつき、痛い事を確認し、上人に報告した。

続いて、葵衣は、その小僧に道を確認させ、焼き物の欠片が敷き詰められている事を上人に伝える。

「皆のもの。この小僧の確認で、あの道は、この様な焼き物の欠片が敷き詰められている。彼女が無事に渡る事ができたら、私の名において彼女を認める。万が一、渡り終えたときに彼女の足の裏に血が確認できなかったら、以後、私と同じように信じてもらいたい」


葵衣が行う、次の秘術は火渡りではない。物理的な刃の上を歩くものだ。並べられた日本刀の階段を上る術もあるが、あれは既に知られている。しかし、この様な尖った道を歩くのは初めて見るのではないだろうか?


「火渡り」同様、この焼き物の道も、葵衣はやってのけた。

寺の僧たちが、葵衣の足の裏を確認し、只々驚いている。


「葵衣と申したか。見事であった。火渡りやその術、君のこの国に対する気持のは、私の名において真実であるとここに誓う。皆も従うように」

これで、寺や周りの村からの視線も良くなるであろう。そして、上人とのパイプもできた。


「では、葵衣殿。奥にて話を伺おう」

「ありがとうございます。仲間と共に伺います」


俺、朱莉、蓉子が葵衣に近づき、上人の後ろに従う。


「皆の手前、無茶を行わせて済まなかった。しかし、火渡りだけでなく別の手も準備しておくとは、なかなか先見の目が有り、私も感心しております」

「ありがとうございます。私達の旅は長かった故、常に次の手を準備しておくのが身についておりました。上人様こそ、私達の様な国外の者を信じていただき、そして寺の方たちを説得していただき感謝いたします」

上人と葵衣との間で挨拶が始まる。


「葵衣殿、仲間の方々は随分と変わった方が多いようですな。特に、蓉子殿は」

流石高僧ともなると、蓉子が人でないのはわかるらしい。

「この事は他言無用で、お願いします」と前置きしたうえで、俺たちの素性、なぜ旅をしているか、今までどの様な怪異と対峙してきたかを説明した。

「いやはや、誠に今生でその様な話が聴けるとは。御仏に感謝と共に、葵衣殿たちの今後の活躍に期待させていただこう」


少し、場がなじんだところで、種明かしをして欲しいと俺は葵衣に頼んだ。日本刀の階段を上るのも。

「実はそんなに、難しい事ではないのだけど」

火渡りは、熱が伝わる速さ、つまり熱伝導率の差を利用した物だという。だから、炭がきちんとできていて、炭が崩れない様に気を付けながら歩けば出来るものなのよ。炭が崩れて、足の裏にくっつくと火傷をするから、少し練習が必要なのと、あとは怖がらずに思い切って行う事。


日本刀の階段は、日本刀の特性を知れば出来るという。

日本刀は、刃を滑らせて切り込むように作られている。だから、刃の上に足をのっけて体重をかけても切れる事はない。気を付けるべき点は、刃の上で足を横に滑らせない事ね。


「葵衣殿は博識であるな。私も、そこまでは知っているのであるが、最後の焼き物の道はいかがした物か」

「あ、あれはですね・・・」

焼き物の破片を道いっぱいに敷き詰めておいて、歩く場所だけ平たい石で叩いて先端が出ないようになっているのです。


秘術といっても、種明かしをしてしまえば、マジックと同じなんだな。

日我上人も、葵衣の種明かしは一本取られたという感じだった。話を体でのリアクションは無かったが、とても優しい顔で俺たちを歓迎してくれた。


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