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第四章 第五幕 蜘蛛の正体

鋸山に手掛かりがあるかもしれないと、頂上を目指した俺たち。

蓉子の放った炎の精霊の動きで、場所を探り、暗闇にうごめく巨大な蜘蛛とであう。


「兄様、どうしましょうか?」

「どうしましょって、どうしましょ」

朱莉の質問にはまともに答えられなかった。


「あの蜘蛛は、光を食べているのかしら・・・」

蓉子の推察に、同意した。


ドーム状の光がすべて失われ、漆黒が辺りを包む。

「とりあえず、一旦引き上げよう。この暗さではまともに戦えない」


いままで、入り口からの光が頼りであったが、今は闇。

葵衣たちの姿は認識できない。


「まずは、動かないで。自分がいた位置から、一番近い壁に手を付けて、その壁沿いに入り口まで移動して」

葵衣の案は流石だ。これなら無事に入り口まで行けるだろう。


暗闇の中、慎重に進む。入るときは俺が先頭だったので、今は俺が最後尾だ。

「茂玄、伏せて」

蓉子の声に、咄嗟に反応してしゃがむ。頭の上を何か強い風が通ったようだ。

「わたしが時間を稼ぐから、早く出口に向かって」

蓉子にしては珍しく、本気だ。


蓉子は、俺の肩を叩き、一番後ろに周る。


背中に熱さを感じる。蓉子は火の精霊を使ったのだろうか。

俺は葵衣、朱莉を急かせ、ようやく出口まで到達した。夕刻にはまだ早いが、辺りは夜と変わらない。気のせいかもしれないが、月も星も明るさが足りない。


少し遅れて蓉子が出てきた。

「蓉子、助かったよ。ありがとう」

「あの蜘蛛、光を食べるだけかと思ったけど、生き物も食べるみたいね。糸を飛ばしてきたから、風で散らばしたのよ。後は、光を好むようだったから、火の精霊を浴びせながら抜けてきたところ。あの大きさだから、簡単には出てこないと思うけど、早めに退散しましょう」

精霊魔法を使い過ぎたのか、蓉子の顔にはいつもの様な余裕の表情はなく、辛そうだ。


「葵衣、ここ足場が悪いので、蓉子に肩を貸してやってくれないか?」

何か怒られるかと思ったが、蓉子はあっさり葵衣に肩を借りていた。

「どさくさに紛れて、わたしの身体を触られなくて良かったわ」

うん、いつもの蓉子だ。


一旦、頂上へ抜け、日本寺にて策を練る。

もう一度、寺にて蜘蛛の怪異について聞き込みを行ったが、正体はわからなかった。


「茂玄、あんたゲーム好きなんでしょ?あのモンスターは何か教えなさいよ」

寺に向かう途中で、徐々に体力が回復したのか、いつもの蓉子に戻っている。

「すまん、正直わからない」

俺のストレートな答えに、みんな固まる。ですよね。


この間、オルルーンに頼んだ資料があれば、役に立つかもしれないけど・・・


天は我を見捨ててはくれなかった。

無駄を承知で、山海経に情報がないか調べようと思い、スカルダッシを開けた。

中には見慣れぬ書籍があった。

「オーディン様からユグドラシル周辺の情報は頂いたので、まずは入れておく」

本の最初のページに簡単な手紙が挟まれていた。

ナイス、オルルーン。そしてオーディン様。


期待に胸を弾ませ、本をペラペラめくって情報を探す。

ユグドラシルを舞台とした北欧神話。知らない事が結構書かれている。この地域だけでも、こんなに情報があったのか。驚きながらもページをめくる。


蜘蛛の挿絵が見えたので、ページをめくる手を止め、少し読んでみる。

いやこれは、違うな。

続けて読むうちに、関連しそうな項目を見つけた。

「ミズガルズのウンゴリアント」

ミズガルズって、北欧神話の中心地だよな・・・

ウンゴリアントの項目を読み進める。


これは・・・、北欧神話の主軸ではなく、そう「指輪物語ロード・オブ・ザ・リング」の話だ。

簡単に説明すると次のようになる。

世界の原初から存在する蜘蛛のモンスター。闇の化身。

高峰ヒアルメンティアにある谷に巣を張り、光を食べて過ごしていた。

メルコールと共闘し、古代に存在した神々の生命線、二本の樹木「テルペリオン」「ラウレリン」を襲撃、ウンゴリアントの毒によって枯れさせた。

ウンゴリアントは巨大化し、多くの光を欲しメルコールの持つ宝石をも食べようとする。

メルコールは目的の宝石が食べられるのを拒み、ウンゴリアントと対決。メルコールが負けそうになった時、メルコールの眷属が助力に入り、ウンゴリアントは闇を羽織り撤退する。


その後、ある島で光を食べつくし、それでも食欲が収まらず、最後には自分を食べて果てたという。


まず、間違いはないだろう。

これで、色々な現象が説明できる。


葵衣たちに、ウンゴリアントの伝説を説明し、今後の対策を練る事にした。


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