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第二章 第五十九幕 葵衣の推理

 山本勘助の足跡を辿る旅は、武田家仕官の直前の今川家まで進んだ。今川家に仕官を希望したが、叶わなかった理由を当時を知る人から聞くことが出来たのだ。その夜は野営にして、葵衣が謎を整理した。




「さっきも話したように、今川義元自身が嫌がったとしても、有能な勘助を手放すのは愚策。義元の師である雪斎が許すことは無いと思うのですが……」

 葵衣が整理した。


「なんで愚策なんだ?」

 俺は聞き返す。

「今は戦乱の時代。優秀な人材が敵になったら困るのは自分たちよ。それをしないためには……消すのが楽で、確実よね」

 蓉子の発言は物騒ではあるが、確かに一理ある。


「庵原城で食客をしているのは雪斎も情報は持っていたと思います。それをみすみす九年間も放っておくのも……最終的には武田の家臣になったのですから」

「なぁ葵衣。上田原で話しかけた仮説を教えてくれないか?」

 俺は葵衣に核心をつく説明を求める。


「そうですね……。でも、あくまで仮説ですが」

 と言って語り始める。


 まずは、俺たちが出会った日の事。葵衣と蓉子はその日に、この時代にたどり着いた。

 豊受気媛とオルルーンが揃って現れたのも、この時だ。つまり、朱莉との出会いも含め、因果の中心は天文十六年閏七月十五日になる。

 その前提には、みんな納得する。


 そこで、問題なのが俺らしい。

 もし、なんらかの因果でその日が中心点ならば、転生するのはその時であって、十五年も前に転生しているのは中心点が二つになる事になる。

 単なる偶然と言えば偶然だが、このメンバーになる事が因果なら、俺の転生もその一部であるはず。

 という事らしい。



 次に、山本勘助が死体を操っていた事。蓉子にネクロマンサーと言われたが、日本の陰陽道ではその手の話は無いみたいなので、勘助はなんらかの形で西洋の魔術を習得したことになる。



「そして、導き出せる最後の仮説は――」

 全員が唾をのむ。


「山本勘助は、北欧神話に出てくる神『ロキ』が憑依しているのではないかと。『道鬼(どうき)』と名乗っていたのは、私たちが勝手に歴史から導き出した答えで、実は「ロキ」と名乗っていたのかもしれない」


「えっと、ロキってどんな神様なんですか?」

 朱莉が質問する。


「オルルーンが居た世界、ユグドラシル。そこには神様が大勢いたのだけど、ロキはその異端児かな? 神々が祝宴を開いているときに場になだれ込み、それぞれの神に罵詈雑言を吹っ掛けた。怒った神々は、ロキをほどけない紐で猛毒が滴る洞窟に閉じ込められる。ロキの妻は毒が彼にかからぬよう、毒受けを使って夫を庇う。受け皿が満杯になったときは、それを棄てに行くのだが、その時は猛毒がロキの身体を蝕むのでロキは苦しむのだとか」

 俺は朱莉に説明した。


「で、以前茂玄が間違えた『神々の黄昏、ラグナロク』。その時に、ロキを含めた全ての繋がれし者が解き放たれ、大戦争が起こる。地獄の番犬とかね」

 いつでも容赦の無い蓉子の口だが、それが北欧神話の一番の盛り上がりだ。


「山本勘助が以前言っていた、来るべき時とは、このラグナロクだと思います。オーディーンたちには、戦争で死した英雄を集めたヴァルハラがあって、そこで戦士が戦の準備をしている。一方のロキたちは巨人や化け物の軍勢を率いて激突。最終的には痛み分けですが、もしロキの軍に日本の戦慣れした武士が参戦すれば結果は変わるかもしれない。以前オルルーンが持ってきたオーディーンからの伝言はそういった意味だとすると、一応辻褄が合います」



 それで、俺が転生した十五年前に山本勘助にロキが憑依。彼の禍々しさを恐れた雪斎は庵原城で監視。なんらかのきっかけで、勘助自身は武田に仕え無駄な殺戮を繰り返した。

 つまり、山本勘助と闘う事は、北欧神話の神との戦いになる。考えただけで恐ろしいが、葵衣たちはどうするのだろうか?


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