第二章 第三十四幕 妖怪退治
朱莉の反魂の儀によって、葵衣の前に現れた巴御前の御霊。
葵衣は七日七晩かけて、巴御前の特訓を受けることになった。葵衣の邪魔をしてはいけないと、俺たちは寺を出る。
「なぁ、蓉子。山に妖怪が出るって何時仕入れた情報なんだ?」
「茂玄は、本当に救いようがないわね。でまかせに決まっているじゃない。ああでも言わないと、葵衣は気兼ねするでしょ?」
ぐうの音も出ません。
「わたしらは、適当に時間を潰しましょう」
蓉子は早速村に出かける。葵衣の修行が終わるまでの七日間、お世話になる家を探すためだ。
今までも同じであるが、お米を大量に出せば大体は泊めてもらえる。この時代は金より食料なのだと改めて思う。
さて、麓にある家にお世話になることになった。ここの家主は旅の話を聞くのが好きで、俺たちの話を「それから、それから」と言って聞きたがる。
同席していた息子さんが、俺に質問してくる。
「ねぇ、山には三目入道が居るんだけど襲われなかったの?」
そういえば、一目なんたらは多いけど、三目は珍しい。
「ここの山には三目入道が居て、山に行く人は大変なんだ」
子どもは正直だ。
「そうか。よし、俺たちが退治してきてあげよう」
と威勢の良いことを言う。家主は心配したが、退治してもらった方が助かると言ってくれた。
蓉子は、あまり気が進まないようであったが、朱莉が頑張るというので何も言わずに賛同した。
さて、俺たちは山に入り炭焼き小屋で三目入道が来るのを待っていた。家主の話では現れても大声を出しながら変な踊りをするだけで喰われたという話は無い様だが、やはり恐怖は恐怖だろう。
いつもは、俺と葵衣が交代で番をしていたが、頼りになる葵衣がいない。蓉子も酒を煽って寝てはいるが、いざというときは直ぐに目を覚ますので心強いというのが本心だ。
三日目の夜を迎えたとき、音頭が聴こえ、小屋の外で大きなものが動いている気配がした。
俺たちは、小屋の隙間から外を見る。そこには、三目入道が数体、四目もいる。これは確かに怖い。
だが、こちらには妖狐と陰陽師がいる。負けることはないだろう。俺自身が役に立たないのが情けないのだが。
勝負はすぐについた。
「わたしに任せておいて」
蓉子は火の精霊で壁を作り彼らの周りを囲う。自ら、その中に入って行った。最初は静かであったが、しばらくしてまた音頭が聴こえてきた。蓉子は大丈夫だろうか?
暫くして、炎の壁が消えた。そこには蓉子と入道たちが酒を呑んでいた。酒を呑みながら話を付けたらしい。驚きとしか言えない。
彼らとの話で、小屋の近くでは騒がないと決まったらしい。そして、頭目と思える四ツ目入道が朱莉の前に来て膝をつき頭を下げる。
どうやら朱莉の式神になるようだ。朱莉は儀式を行い、四ツ目入道を式神にした。
その晩は炭焼き小屋で過ごす。
翌日山を降り例の家に向かうのだが、蓉子の機嫌は悪かった。妖怪と酒を呑まざるを得なかったのが癪に障ったのだろうか? 蓉子自身、体は妖狐なのだから同じような物だろうし……。
家に着いて、家主と息子に事のあらましを話した。
「ねぇちゃん、凄い!」
息子は尊敬の眼差しで蓉子を見る。蓉子は笑って返す。
葵衣の特訓が終わるまで、俺たちはこの家で何度も冒険譚を語ることになった。




