第二章 第三十二幕 義仲の聖地
諏訪を発ち木曽に入る。ここ二日は割と整備された道、民家に泊めてもらうことができ楽な旅だ。二日目のお世話になった邑日義。そこで、木曽義仲の話を聞く。
俺は今朝蓉子に叱られていた。いつもは皮肉程度なのだが、はっきりと言われる。葵衣の木曽に対する想いにどうすれば良いのか。
葵衣の性格は、しっかり者。しかも他者を優先して気を遣える素晴らしい性格だ。だからこそ旅を急ぐために自分の気持ちは言わないだろう。
蓉子は俺をみて、やれやれと言う顔をして、朱莉に聞いてきた。
「ねぇ、朱莉。この木曽って源義仲が旗揚げしたところでしょ? その名跡なんてあるのかしら?」
「えと、確か八幡様が建てられているとか、聞いたことはありますが――」
「じゃあ、葵衣は知っている?」
「え?多分旗揚八幡宮だと思います」
「わたし達も山本勘助討伐への旗揚げになるし、願掛けに行かない?」
流石は蓉子。話しの流れが上手い。
「じゃぁ、葵衣。道案内お願い。そんなに歩かないでしょ?」
「そうですね、では出立しましょう」
八幡宮に到着し、本社の八幡様に全員で願掛けをする。八幡様は武士の、特に源氏が信仰する神でもある。不思議とやる気が湧き、あの強敵山本勘助を倒すことも可能じゃないかと、思えてくるのが不思議である。
俺は信心が薄いせいかすぐに頭を上げたが、葵衣は随分と永い間祈っていた。多分、旅や闘いでの俺たちへの無事も祈っているのだろう。
「あ、遅くなってごめんなさい」
葵衣が礼拝を終え、みんなが終わっている所を見て慌てて声をあげた。
末社まで丁寧にお参りをして、昼近くになっていた。
簡単な食事をしている中、蓉子がまた俺に声をかける。
「ここまで、お膳立てしてあげたんだから。次はあんたが頑張りなさい」
流石、蓉子と思っていたが、まだストーリーの途中らしい。
また、俺は考えるが思いつかない。ラノベやゲームでは次は何をするかすぐわかるのに……。
聖地巡礼? そういえば巴御前に関する所は行っていないな。
「なぁ、葵衣。木曽義仲のお墓とかここら辺にあるのかな? どこで亡くなったかは知らないけど、良く繋がりが深い所にお墓があるし。もしかしたら、巴御前のお墓もあるかもしれないし」
蓉子は、半分合格、半分失格といった顔つきで俺を見た。
「茂玄さん。ありがとうございます。でも、気を遣わなくても大丈夫です」
半分失格の意味はすぐに分かった。巴御前の名前を出してしまったことだ。
「葵衣、日本人って面白いわよね。産まれた時は神社にお参り、死んだらお寺。巴御前に憧れている葵衣が墓前に来てくれたら、故人も喜ぶんじゃない? 加護も得られるかもよ」
蓉子の頭の回転、気転は流石だ。普段の酔っ払いが凄いスペックだったとは。
「そうですね。ここから川を挟んだ反対側にお寺があります。名前は日照山徳音寺」
食事が終わって、徳音寺に向かう。




