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第二章 第三十幕 夫婦の神々

 蓼科(たてしな)神社にて全員無事に再会できたところで、山本勘助が何者かを知るべく、彼の足跡を辿る旅に出ることにした。




 出発を前に、朱莉(あかり)がお願いをしてきた。諏訪湖にある、ある神社にお参りに行きたいのだと。

 諏訪地方は既に武田の領地ではあるが、山本勘助は佐久に残っているか、甲府に帰陣しているだろう。長期滞在する訳ではないので、異論なく行動が決まった。




 蓼科山を下り、西へと進路を取る。白樺湖の北を回るルートだが、陽も落ちかけていたのでそこで野宿を行う。湖の大きさは異なるが、諏訪湖での事を思い出す。 朱莉が体を張った召喚、だいだらぼっち。

 月は見えなくなるほど細くなっていて、水特有の恐ろしさを感じる。今度は神社への参拝だから然程危険はないだろう。見張りを葵衣(あおい)と交代して眠りついた。




 翌日は丸一日歩いて終わった。諏訪湖周辺の平野部を見下ろせる高台にて野営を行った。明日はついに、神社の参拝になる。そういえば、どこの神社か聞いていなかったな。

「なぁ、朱莉。明日参拝する神社ってどこなんだ?」

 蓉子(ようこ)は耳をピクリと動かした。そういえばと言って、葵衣も話に加わる。

「古くから、この諏訪地方を治められている夫婦の神様です。足名椎命(あしなづちのみこと)手名椎命(てなづちのみこと)。須佐之男命が倒した八岐大蛇から救われた稲田媛のご両親です。そういえば、明日は朔日(さくじつ)。お参りには丁度いいですね」




 日中は、めいめいに時間をつぶす。葵衣は薙刀を振るい、朱莉は三毛介と戯れ、蓉子は酒を煽る。いつもながらの光景に安心を覚える。



 さて。陽も地平線に隠れ、月が出ていない星だけが瞬く夜が来た。

 朱莉は前回同様、諏訪湖で体を清めた後、両神社を参拝するという。朱莉の先導で、夜道を歩く。そして、鳥居が見えてきた時葵衣が感嘆の声を上げる。

「これが足長神社なのね」

 ん?足長?祀られている神が足名椎命で、妻の名が手名椎命だとすると、もう一つは手長神社?


 お参りが済んで、次の神社に到着したときに先ほどの推理が当たっていたことを確信する。そう、ここは手長神社。

 手長足長といえば、セットで現れるモンスターだと思っていたけど神様だったとは。改めてゲームの設定はなんでもありなんだと感心する。




「お待たせしました。そして、お付き合いありがとうございます」

 朱莉が、俺たちにお礼を述べる。


 俺が手長足長がモンスターだと思い、実は神様だと知って感心しているの見て朱莉が尋ねてきた。

「兄様。何か納得されたような清々しい顔をされていますが」


 陰陽師という仕事柄、神話にも関わっているのだろう。神様を経験知の足しにしていたとは口が裂けても言えない。

「え?あ、いや。手が長い、足が長い二人の短所を埋め合わせ、長所を活かすなんて、良い夫婦だな。なんて――」

「この国には、古来からの神、海の向こうから来た仏、そして怪異や魑魅魍魎(ちみもうりょう)。多くの者に護られているのです」

 朱莉は嬉しそうに語る。



 俺の考えていた事を見抜いていたのか、いつもの如く蓉子が笑みを浮かべ一言。

「知らぬが仏とはいえ、罪作りよね」

 朱莉は不思議そうに首をかしげていた。


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