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第二章 第二十九幕 遅れた理由

 山で道に迷い遭難した俺は、白い狐を見つけ後を追った。初めは(もや)だったが徐々に深い霧に変わる。

 霧の中で、北欧の戦乙女オルルーンと豊穣の女神豊受気媛(とようけびめ)にそれぞれ話を聞き全員の無事を知る。女神の眷属の白い狐の案内で集合場所の蓼科(たてしな)神社に向かう。




 蓼科神社に着いた時には陽はすでに高く昇っていた。いつの間にか白い狐は消えている。心の中で女神と狐に感謝する。


「随分ゆっくりの到着ね。道にでも迷っていたのかしら?」

 蓉子(ようこ)はわざとらしく欠伸(あくび)をして、いつもの口調で声をかける。でも、なんか嬉しい。


「兄様、御無事で何よりです」

 朱莉(あかり)は心配が安心に変わり、年相応の笑顔で迎えてくれた。


「えと、葵衣(あおい)は?」

 一人居ない、一番頼りになる彼女の姿が見えぬ事で不安になる。女神からは全員の無事は聞いていたのだが――。


「葵衣はまだね。茂玄に愛想をつかして来ないのかも」

 彼女の性格を考えれば絶対にありえない事だが、蓉子の俺への口撃(こうげき)は流石だ。当の本人としても、葵衣を信じているからこその発言だとは思うが。




 三時間ほど、葵衣を待っている。蓉子は山頂からの絶景を肴に酒をあおり、朱莉は式神との交流を深めている。俺はさしてできることが無い。手持ち無沙汰が時間をより永く感じさせる。


「お待たせしてごめんなさい」

 葵衣の声がした。俺は思わず彼女に駆け寄り両手を握る。

「あの、茂玄さん?」

 驚きの声を上げる葵衣が俺は我に返らせ慌てて手を解く。


 あらあらと言いながら、蓉子は俺を見る。

「無事で何より。葵衣にしては珍しく時間がかかっていない?」

 蓉子が葵衣に問いかける。明らかに俺との扱いが違う。


「まぁ色々ありまして……」

 葵衣がいきさつの説明をしてくれた。

「まずは、本堂に置きっぱなしのこれを取りにいっていました」

 オルルーンに貰った収納ボックスを見せる。これは、スターダルカッシ。ゲームで大量のアイテムを持ち運べるようななんでもボックスだ。

 普段俺が荷物持ちとして持っていたが、あの時は置いていた。葵衣はそれを取りに行ったという。女神から貰った常糧袋(じょうりょうたい)と同じくらい大事なものだ。


 そして、山本勘助の放った式神を倒しつつ、俺たちの時間を稼いでくれていた。

 本当に冷静で、強くて、仲間想いで。頼もしさを改めて感じ入った。

 でも、だからこそ無茶はしないでもらいたい。




 全員が揃ったところで、俺は逃走中の出来事を話した。狐の道案内の件は端折ったが。

「そうだったんですね」

 葵衣が感じいった言葉をだした。

「ねぇ、山本勘助の足跡を辿ってみませんか?」

 葵衣の提案に全員が賛同した。


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