第二章 第二十六幕 ありえない再会
北欧の戦乙女オルルーンから王オーディンの警告を伝えられた。特異点とは、また大袈裟なと思いつつも拠点にした蓼科山の廃寺への帰途につく。
メンバーは相変わらずマイペースだ。葵衣は冷静かつ洗練された動きで、朱莉は三毛介を抱き戯れながら、蓉子は自由奔放に。そして俺は、汗だくになりながら――我ながら体力を付けねば。
行きと同じように、帰りも山道を通る。西上野には武田の勢力は及んでいないから割と安心できる。割とと云うのは、武田の忍び透波や野党、物の怪がいる可能性があるからだが。
二日目の夜、信州佐久地方に入る。西上野と同じような状況ではあるが、武田の領地という事でやはり緊張度は高まる。皆も顔に出さないが同じ気持ちだろう。野営に入り、とりあえず食事を摂る。豊受気媛から頂いた常糧袋のおかげで水・食材の心配はない。ただ、野営が故、御馳走にはならないが他から見れば羨ましい状況だろう。
早速というか、蓉子は酒を呑み始めさっさと寝てしまった。流石はマイペースだ。野営のパターンで、朱莉は寝付かせ俺と葵衣で替わり番で番をする。
翌日、甲斐から佐久へ抜ける街道を横断しなければならず、そこは慎重に行動したが、ありがたい事に何も起きなかった。この付近で斥堠をしていたのは二ヶ月前か。早いような永かったような。そうこうしている内に根倉にしている廃寺に到着し、一安心した。
「今日は久しぶりに料理しますね」
葵衣が支度に入る。疲れているはずなのに感謝の念しかない。しかも美味しいから尚更嬉しい。
食後にくつろぎ、談笑して夕食の余韻を愉しむ。蓉子は酔っぱらって寝てしまっている。これが日常なんだな。
朱莉が何か感じた様で緊張した面持ちになった。蓉子も同じく真剣な顔をしている。二人に張ってもらった結界に何かが触れたんだろう。
物の怪の類なら勘弁してほしいのだが……。
俺たちは装備を整え、侵入者が来た方向に向かった。森の奥から数人の具足の音が聞こえてくる。音はどんどん近づいてくる。
輪郭がはっきりしてくると見慣れた甲冑が見える。その顔を凝視すると、領主笠原様だ。てっきり討死してしまったと思っていたが、落ち延びていてくれたのか。顔色の悪さから疲労困憊なのだろう。声を掛けようと走り出そうとした刹那、葵衣が薙刀で俺を止めた。
三人には今までとは違う緊張感が走る。三毛介の毛の立ち方もいつも以上だ。
そう、志賀城の水止めを行うための特殊部隊を率いていた山本勘助を見たときのような空気になっていた。




