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第二章 第二十三幕 人間万事塞翁が馬

 大胡城にて榛名湖の伝説を聞いた蓉子(ようこ)は興味を持ち、俺たちは向かうことになった。文五郎は同行したかったようだが、蓉子に上手く丸め込まれた。グッジョブ!



 榛名湖は榛名山の頂上にある。急ぐ旅でもないので麓の村で一泊してから向かうことになった。そう、馬泥棒事件のあった村だ。


 村の入り口で異変に気が付く。景観は変わらないのだが、人気(ひとけ)というか活気が感じられなかった。


 多分という条件付きで葵衣(あおい)が説明してくれた。

 前回の志賀城救出の援軍派兵にこの村から男手が数多く徴兵されたのだろう。そして、戦死した多くの兵に含まれていたのだろう。悲しそうな顔と申し訳なさそうな声だった。朱莉(あかり)も俺の袖を掴む。三毛介は朱莉を慰めている。

 なんとなくではあるが、時々村長宅を見つける村人の冷たい。



 村長の家に着き、その理由が判明した。

 馬泥棒から馬を取り返した時、追加でアラブ馬を持ち帰った。息子さんは気に入って乗り回して落馬。足を骨折したらしい。

 村人は憐れみと調子に乗った息子への嘲笑をしていたらしい。当の村長は、あのひねくれな性格からか、次は良いことが有るとケラケラと笑っていたそうだ。

 そして、志賀城の件での徴兵である。骨折した息子は対象から外され生き残ったとの事である。



 村長の家に対しての冷たい視線の理由が分かった。村の活気がない理由も理解ができる。

 領主は領民の豊かさを求め戦を行う。領民は領主の命で死地に向かい傷つく。残された家族は悲しみを背負う。何のための犠牲なのだろうか?

 俺たちは偶然か必然かは不明だが出会い、女神豊受気媛(とようけびめ)と天使オルルーンの力を借りて、ここまで来た。

 多くの命は散ったが、少なくとも何人かは救えた。この事を改めて噛み占める。



 村長の今までの言動を考える。

 馬泥棒に遭った時は、次に良いことが有るだろうと考え、新しい馬を手に入れた。

 馬が増えたときは、次には悪い事があるだろうと楽観せず、息子は落馬で骨折する。

 息子の骨折は、次に良い事が有るだろうと再び考え、徴兵から免れた。



 人間は、一つの事で一喜一憂してはいけないという格言である。

「人間万事塞翁が馬」

 まさにその一言に尽きるだろう。


 そして、村長は表には出していないが、内心は喜んでいるのだろう。

 これが「北叟笑む(ほくそえむ)」なのだと。


 俺はこの身で、故事を目の当たりにして、人間の一面を知った。



 さて、次は榛名湖だ。


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