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第二章 第八幕 志賀城包囲網

 箕輪城にて、城主長野業正と葵衣(あおい)は今後について打ち合わせをしていた。

 俺は旅先で知り合った少年剣士文五郎に剣の稽古をつけてもらっていた。文五郎は十歳にも拘らず、大人顔負けの実力。少しではあるが、剣の動きを見えるようになっただけでも効果はあった。と思う。




 打ち合わせが終わり、葵衣が出てきて言う。

「すぐに出立しましょう」

 いつも冷静な葵衣にしては、焦りが見える。恐怖さえ覚える。




 二日間も連続してしっかり寝られたため、体力は十分だった。いつもより速足で古巣の志賀城に向かい始めた。




 懐かしの志賀城。斥候に出てから一月も経っていないが、久しぶりに家に帰る高揚感はある。 志賀城は山城で通りから登るのが普通なのだが、葵衣の指示で途中から山道を選ぶ。蓉子(ようこ)は不平を漏らすが、なんだかんだでちゃんとついてくる。




 陽も沈んだ後、山頂に到着し目下に城を見下ろすことができた。月もほとんど欠けた状態で闇も深いが、城の周辺は松明(たいまつ)の灯で煌々(こうこう)と照らされていた。



「ごめんなさい」

 葵衣が俺に謝ってきた。 間に合わなかった事を言っているのだろう。

「大丈夫。籠城していることを考えれば援軍が来ることがわかっているからだと思う。これからなんとかなるよ!」

 葵衣を元気づける。しかし、葵衣の今までの言動を考えると、一抹の不安は覚える。



 武田の軍勢の包囲は完璧だった。脱出も入城も厳しいのは素人目でもわかる。また、朱莉(あかり)は人外の気配を感じ取っている様だ。そして忍者である、武田の透波(すっぱ)も侮れない。

 蓉子は面白半分で冗談をいう。

「これで、忍者を騙せれば、透波抜く(すっぱぬく)ね」

 あ、なるほど。いやいや、すぐ素に戻る。


「とりあえず、今晩はここで様子見をすることにしよう」

 いつもより緊張した状態で野宿をした。




 翌朝、武田家の包囲網に動きが生じた。

 武士や兵とは言えない格好の一団が護衛の兵に護られ山を登ってくる。

 一団は鶴嘴(つるはし)を持っている。いぶかしく思っていると、葵衣が説明してくれた。

「あれは鉱夫だと思います。武田家では金山衆と呼ばれている専門部隊。城の生命線である水の手を止める作戦かと」

 水の手が止められれば城は一気に形勢が悪くなる。なんとかしなくては。


 俺たちは、行動を開始する。


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