第二章 第七幕 密談・薙刀娘と権力者
少年剣士・疋田文五郎との出会いによって、領主との縁ができた。領主・大胡武蔵守様から紹介の文を預かり、使者として箕輪城に赴くことになる。箕輪城までの道のりは二十キロ。平野部であるので半日も歩けば到着する。
陽が沈みかけ、空が茜色に染まる。
正式な使者であり、城主の甥という事もあり、今回はすんなり門を通ることができた。
戦の気風が漂う中であったためではあるが、簡単な宴が開かれる。
主の長野信濃守業正は西上野・箕輪衆を束ねているだけありカリスマ的なオーラを醸し出していた。
武芸にも秀でている長野業正は、文五郎の旅の話や、葵衣の薙刀術の話に興味深く聞き入っていた。
「今宵は城で明かすが良い」
大胡武蔵守様からの文を読み、詳しい話は明日する運びとなった。
昨日に引き続き、屋根のある所で寝られる幸福感。転生前は恵まれていたのだと、改めて気づかさせれる瞬間だ。
陽が昇り、見張りや門番など夜通し働いていた者が任務を交代する。
そして、長野業正から呼び出しがかかった。
「では行きますか」
と皆に声をかける。
「茂玄さん。ここは私に任せてもらえないでしょうか?」
いつも以上に緊張した面持ちで提案する葵衣を見る。
「これからは戦の話になると思います。史実を知っている私は、少しでも役に立ちたいのです。あくまで、私の知っている歴史通りならですが――」
葵衣はこの後の事を知っている。俺と出会ったときに言いかけた事。多くの命を預かる覚悟をしたこと。俺には何ができるだろうか。
「葵衣ったら、おじさまが好みなのかしら?」
蓉子が軽く冗談を飛ばす。
「信濃守様は、強いから好みよ」
葵衣も返して、場が和む。
「強い人が好きですって」
蓉子が俺をちらりと見る。
では、俺は文五郎に稽古をつけてもらうか。少しでも葵衣の力になれるように。
薙刀娘と西上野の権力者の密談が始まる。




