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第二章 第六幕 箕輪城への光明

 少年剣士、疋田文五郎と共に馬を取り返し、新たに異国の馬を土産に村に凱旋した。

 陽が昇り始め、村人が仕事に入るために動き出していた。

 村長の息子は、全員の無事と、愛馬との再会、異国の馬に大変興奮していた。人に喜ばれるのは嬉しいものである。

 一方村長は――良い事の後は悪い事が起こると面倒くさい対応をしていた。




 疋田文五郎は幼いながらも素質と十分な気概を備えた剣士だ。

 武術はからっきしな俺は、少しは見習いたいものである。一方、文五郎は葵衣(あおい)の薙刀術に惚れ込み、「葵衣姉さま」と呼び懐いている。なんとなくジェラシーを感じる。

 村を後にするとき、文五郎は是非叔父に会ってもらいたいと同行を提案してきた。

 あの村長には期待ができない以上、文五郎が女神の示した突破口なのだろう。

 葵衣の顔を見ると、笑顔で従う事を話してくれた。




 箕輪城を抜け、大胡城(たいこじょう)へと到着したのは夕刻であった。

 文五郎が門番と話し、城内に伝令を送り、入城の許可が下りた。

 まぁ文五郎は一侍の親族かと思っていたが、出てきたのは城主、大胡武蔵守。

 度肝を抜かれる。一方葵衣は予想通りだったのか、落ち着いて挨拶をしていた。

 文五郎は、故郷を出た理由、旅中の修行、そして俺たちとの馬泥棒の怪について話した。

 武蔵守様は綻びた(ほころびた)顔で聞いていた。可愛い甥ということもあるのだろう。

 噺が一通り終わり、膳が運ばれてきた。




 宴が終わり、俺たちは城にて夜を明かすことにさせてもらえた。

 思えば、屋根の有る所で寝るのは何日ぶりだろうか。

 冒険者としてはありがたい事だ。他の三人もゆっくり休めるだろう。




 翌朝、俺たちは文五郎と共に武蔵守様に呼ばれた。葵衣の薙刀の腕に興味を持ち、甥の腕前を見るため二人に模擬試合を提案したのだ。そして木製の薙刀と木刀が渡される。


「えっと、これで試合を行うのですか?」

 葵衣が不安そうに武蔵守様に尋ねる。

 俺たち以外は怪訝な顔をする。この時代では当たり前の事なのだろう。


「これだと、どちらか怪我しませんか?」

 葵衣の意見はもっともだ。無知な俺でも剣道では防具と竹刀が使われていることは知っている。葵衣としても、文五郎の腕は確かであるとしても子どもに攻撃をすることになる。万が一怪我でもさせたら後味が悪くなるであろうことは想像に難くない。


 葵衣は竹と鹿の皮を所望し、薙刀の先端と模擬刀をこしらえる。武士たちはなるほどと感心する。



 蓉子(ようこ)は、酒を呑みながら、朱莉(あかり)は相棒の猫又の三毛介を膝に乗せ撫でながら試合を観戦する。

 葵衣と文五郎の打ち合いはある種の芸術を彷彿させた。

 打ち込みに対し体を綺麗に捌く。お互いの切っ先は確実に急所を狙う。


「そこまで」

 武蔵守の声で、試合は終わった。二人とも緊張から解き放たれ、呼吸と発汗を覚えている。


「文五郎も、良く精進しておる。今後も怠りなくよう」

 文五郎は「はい」と返事をし、叔父に褒められた事を誇らしげな顔をした。

「さて、葵衣殿は見た事のない形であるな。その動きも相まって、巴御前を再来かと思えたほどだ」

 憧れていた巴御前の再来と評価され、葵衣はいつになく感情を表に出して喜んでいた。


 武蔵守様も葵衣の実力を認め、大層気に入ったようだ。

「さて見事な技に、何か褒美を授けたいと思う。何か希望はあるか」

「では、箕輪城の長野様へのお取次ぎを願いたいのですが……」

「左様か。では文をしたため、文五郎を使者として同行させよう」



 城主と言えば、仕事も多いため昼頃まで城でゆっくりしていく様に言われる。流石に、パーティーで役に立っていない俺は一念発起し、文五郎に剣を教えてもらうことにした。

 葵衣は城に興味を持ち見て回り、蓉子(ようこ)は城内の兵とばくち、朱莉(あかり)は俺の稽古を見ていた。三毛介は退屈そうにあくびをしている。




 それぞれ、時間を潰した後武蔵守様の文と文五郎を共に箕輪城へ出立する事になる。


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