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第二章 第四幕 西上野での出会い

 信濃国を抜け、上野に入国する。

 後北条家の誇る黄地八幡の闘将、北条綱成(つなしげ)の智謀が冴えわたり、関東管領含む大包囲網を打ち破った河越夜戦で苦渋を飲まされた上杉家。大失態したとは言え、まだまだ戦力は十分にあった。

 とは言え、戦下手は求心力を失うもの。この地では人望も篤い長野 信濃守 業正(なりまさ)が中心になっていた。葵衣の狙いは彼であるようだ。


 これから、人との遭遇も十分ありうる。

 ゲームなら、この程度の服装なら問題ないが――最低でも蓉子(ようこ)の耳と尻尾はなんとかしないと。

 蓉子にその事を話すと、「バカね、問題ないわよ」と簡単にあしらわれてしまった。

 信濃と甲斐の決戦は不可避の世情。上野でも緊張の糸が張られているようだ。




 入国して二日程して、長野家の居城箕輪城(みのわじょう)に到着した。

 城の門前まで来ても業正への面会どころか、城に入り込むのも手立てがない。戦雲が立ち込める昨今では更に厳しいのも当たり前だ。


 葵衣は思案するも良い手が浮かばないようだ。

 とりあえず、城から少し離れた邑で休むことにした。

 さて、どこに向かうか? 蓉子は棒を立てて倒す。ダウジングの一種だろうか? ここは男として、リーダーシップを発揮したいと思う。


 とりあえず元来た道を引き返そうと意を固めたところ、天から声が届く。

 天には女神の姿が映っていた。流石は女神だ。ゲームあるあるだな。

「あ、豊受気媛(とようけびめ)様」葵衣は頭を下げた。


 無関係な人には見聞きできないらしい。少し奇異な目で見られている。

「こなたたちと(えにし)がある者が、北方の邑に居る」

「そちらに向かい道を拓け」

 葵衣と朱莉(あかり)は女神に一礼した。蓉子は俺が提案をしようとした事を見抜いていたのか、にんまりしている。




 翌日夕方、上野の北方砦に近い邑に到着した。

 村長の家を訪ね、女神から貰った食料袋から米を一升ほど提供したらすんなりと受け入れてくれた。

 囲炉裏を囲み、食事を摂っているのだが雰囲気が変だ。 俺と同じくらいの息子さんは、顔に(かげ)が差していた。蓉子はその色香を使って、息子から事情を聴き出してくれた。


 彼は大事にしていた馬を、何者かに盗まれたらしい。人外だろうとの事だった。

 馬はこの時代では凄く貴重なもの。盗まれた気持ちは察する。

 続いて、武者修行と称した少年が後を追って行った事も気がかりの様だ。

 まぁ武芸者とは言え、自分より年少者が行ったのだから尚更だろう。


 一方、村長は少年武芸者に心配はしているものの、馬に関しては然程未練は無い様だ。

「まぁ、そんな事もあるさ。次は良い事があるだろう」

 と、ケラケラと笑っていた。


 馬はともかく、少年は気になる。

 村長一家が止めるのを説得し、連れ去られた森へと向かうことにした。

 女神の言う(えにし)。村長なのか、武芸者なのか。行けば判るはずだ。



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