表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/549

第一章 第一幕 天上の酔っ払い

 ここは大陸と海を挟む(くに)日本(ひのもと)』。

 大陸と半島の文化を取り入れながら、独自の文化を発達させていた。




 初代の(みかど)の元で樹立したこの(くに)は、内外との争いは途切れる事は無かった。しかし、他の(くに)に比べれば安定した珍しい土地でもある。


 しかし、日本(ひのもと)全土を巻き込んだ未曾有(みぞう)の戦乱が起きる。

 初代の(みかど)が邦の樹立を宣言してから、二一二七年後。御家争(おいえあらそ)いに端を発し、京の都を巻き込んだ十年にも及ぶ勢力のぶつかり合い。後に応仁乱(おうにんのらん)と記録される歴史の一大事件である。

 この騒乱は飛び火し、全国各地で戦乱が日常化していた。


 しかし戦乱開幕時の当事者は、ほとんど生き残っていない。そして新たな名目で争いが続く。


 ある者は、自国の(たみ)を富ますため。

 ある者は、戦乱の世を終わらせるため。

 ある者は、(おの)が権力を手にするため。


 群雄が割拠(かっきょ)し、それぞれの想いを叶えるべく、名乗り争う戦乱期。大陸の春秋戦国(しゅんじゅうせんごく)時代になぞられ「戦国時代」と呼ばれた世。




 この地、この時、因果で結ばれた四人の若者と女神と天使が存在した。

 彼らの存在は、歴史には残っていない。しかし後世には、民間伝承として(つづ)られた(うた)がある。


「 

  時は戦乱 地獄絵図

  

  古き女神が 導きて

  異邦の天狗(てんぐ) 舞い降りる

  

  

  魑魅魍魎(ちみもうりょう)を (ほふ)る武士

  薙刀(なぎなた)振るいし 智慧(ちえ)の神

  

  数多(あまた)の式神 (つか)巫女(みこ)

  天の(ことわり) (ぎょ)妖狐(ようこ)

  

  陰にて 乱を収めゆく――

  陰にて 乱を収めゆく――

 」






 ここは天上。

 二人の女性が酒を()み交わしている。世の因果の乱れを収めた、日本の女神と北欧(ほくおう)の天使。


 日本の女神は豊受気媛(とようけびめ)

 豊穣(ほうじょう)を司り、稲荷神(いなりしん)(おさ)として、民間信仰を集めている。その正体は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)に近しい、神格の高い女神である。古くから、この(くに)日本(ひのもと)』を見守る神の一柱である。


 天使はオルルーン。

 北欧神話の主神オーディンに仕える戦乙女(ヴァルキュリヤ)戦乙女(ヴァルキュリヤ)は、戦死した勇者の魂を戦死者の館(ヴァルホル)に導く。いずれ起こる、神々の大戦『神々の黄昏(ラグナロク)』に備えるために。




珍天狗(ちんてんぐ)は、物怪(もののけ)扱い。神に仕える身なれど、滑稽(こっけい)なり。その翼じゃ当然の表現なもし」

魔女狐(まめぎつね)こそ、本当に女神なの? 敬われる事自体が筋違いなのよ」


天狗(てんぐ)の意味を知っておるか? 神の(いぬ)。つまり使い魔やな」

「豊穣と言っても、身体(からだ)から食べ物を出せるって聞いたわよ。気持ち悪くて、食べられないわよね。そして、実は単なる化狐(ばけぎつね)の親玉でしょ? 人のこと言えて?」


(うぬ)天狗(てんぐ)共は乱世や兵乱を望んでおろう? 神の(しもべ)を造るために。人を殺める目的で、権力者を(たぶら)かす。この邦の迷惑は、(うぬ)らが原因であろうや」

「この蛮国では、人を(たぶら)かすのは獣。その筆頭である狐の親玉が、何をかまして」


天狗(てんぐ)霊験(れいげん)高き妖怪なれど、人に(だま)される事も多い。つまり、間抜けの代名詞ぞな」



 (ののし)りながらも会話が弾む。酒も酒菜(さかな)も逸品ぞろい。(ぜい)を尽くした(うたげ)の席が、(とど)まることなく続いている。



「しかし、(うぬ)の造る酒は格別じゃな。珍天狗(ちんてんぐ)の世界の者は幸せじゃ。されど()(くに)の酒には劣るが」

「いやいや、この山海の(さち)も、なかなかどうして。蛮国(ばんこく)だと思っていたけど、食べず嫌いはだめね。それだけ発展していない自然豊かな…つまり田舎(いなか)なんだけど」



 すでに出来上がっている二人は、この(うた)(さかな)に、(うたげ)(たの)しむ。



(ほふ)るなど、(いさ)ましき(ほま)れなれど。粗相にて死んだ引籠(ひきこも)りの墜人(おちびと)であったな」

「妖狐ね…。確かに、身体(からだ)は元(きつね)。そして名前も同じく蓉子(ようこ)



 奇妙な組み合わせで、決して交わらないはずの若者たち。

 こんな女神と天使に使われた、もとい選ばれた四人の若者の物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ