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9 朝の道で

沢山のブクマありがとうございます!



翌朝、いつも通りに通学路を歩いていると、背後からヌメッとするような気持ち悪い手つきで誰かから、背中を叩かれた。


うわぁ……気持ち悪っ!


と内心思いながらもそれは口にしない。したらホントにメンタルブレイクが決まってしまう気がしたからだ。

病んでる時に言われたらより深い傷になるよな。


そう思い俺は普通の態度で彼に接する。



「おう、おはよう」


「ああ、おはよう」


あまり元気のない声で挨拶をする男は海知さんである。


「昨日の記憶はあるか?」


「残念ながら、放課後から全くないな。どうしてだろう。」


「ま、まあ、覚えてないならそれでもいいだろ」


「なあ、俺が石化した後、どうなった?」


「しっかり覚えてんじゃねーかよ」


「忘れらんないな、何故か」


「印象深いから仕方ないかもな……」


海知くんは、しっかりと覚えていた。そして、石化していたことも自覚ありだったらしい。


「あの後、石化くんを引っ張って本人の家まで連れ帰ったよ」


「やっぱり、持つべきものは親友だな……」


何故か感動してしまっている海知くんに対して俺は、


「人目についたから途中で放置するか迷った」


と正直に述べた。これだけは、はっきり言いたい。どんだけ注目されたか。かなり恥ずかしかったんだからな!

これだけは絶対譲れなかった。


「やっぱり、持つべきものは普通の友達だな」


海知くんは遠い目をしてそう言った。


このやろう、せっかく運んでやったのに、感謝せずにこんな風に言いやがって、次は放置してやる。


俺の中で「石化海知くんの放置件」は決定的なものになった。


とはいえ、


「言っておくが、お前があんなの持ってきたのが悪いんだからな?言われて当然だよ」


知らせた俺も若干悪い気もするが持ってくるとは思っても見なかったし、まさかあんなに笑顔で俺に見せてくるとは誰も予想してない。

恥じらうという言葉を知っているのだろうか。


まあ、それをしないのも含めて海知の長所なのだが。


「だって、まさか嶋崎さんが図書室にいるとは思ってなかったし」


「俺が呼ばれた時点で察しろよ」


「ん……まあ、そうだな。それはそうと、なんでお前は嶋崎さんから呼び出されてるんだ?」


その質問に俺はどう答えていいかわからず一瞬、止まってしまった。


「あの様子だと死刑ってわけじゃないんだよな?」


「ま、まあな……」


「じゃあ、なんでだよ?」


海知が再度尋ねてくる。これに俺はどう答えるか悩んだ。


俺が勉強を教えて欲しいと頼んだから。と言いたいが、頼んだのは、昨日の図書室だ。誘われたのは一昨日である。その時は何故か嶋崎さんが誘ってくれた。

趣味の話をしたいのかとその時は思っていたが、昨日は本のことは話せず仕舞いであった。


何故呼ばれたんだろう………

改めて自問自答してみるが回答は出てこない。

俺にはあまり危険を感じていないらしいが、それでも男女で密室の空間にいることには変わりない。


なんで、俺はそこまで信頼されているのだろうか……


これも考えてもわからなかったから、


「昨日は勉強を教えてもらってた……」とだけ答えた。


そうして、歩いて行くとまたまた学校の正門にたどり着いた。

海知はなぜか挙動不審になっている。海知センサーがビンビンである。


そこまで警戒しなくても………って言うか、昨日の件については、お前が完全に悪いからな。


と内心思いながらも歩いていると、


「小鳥遊さん」


と背後から俺の名字を呼ぶ声がした。やはり朝は『君付け』ではなく『さん付け』なんだな。


そう思い振り返ると、そこには嶋崎さんがいた。


「嶋崎さん、おはようございます」


「はい、おはようございます。昨日は大丈夫でしたか?」


「はい、おかげさまで………」


「そうでしたか………紳士でない人を連れて帰りとても大変でしたね」


「うぐっ!」


その言葉を聞いた瞬間に、海知くんは泡を吐く。


「あ、すみません。いたのですね。気づきませんでした。」


「ぐはぁ!」


これは地味に効く、ボディーブロー。

海知は嶋崎さんを発見するとすぐに俺の後ろに隠れていたから嶋崎さんが気づかなかったのも仕方がない。

なんせ、登校ラッシュ時だから。


怯えていた海知さんだが、それでも俺たちの会話を聞いていたようで、嶋崎さんの言葉にかなりのダメージを受けた様子だ。


また、石化すんのかよ……と思っていたら今度はゲル状になり始めた。


レパートリー豊富だなっ!!


今にも溶けきりそうな海知を支えていると、嶋崎さんは、俺にある袋を渡してきた。


「あの、作りすぎたのでクッキー、お昼に食べてください……」


そう言って彼女はクッキーを差し出してくる。


「あ、ありがとうございます……」


「い、いえ、では私は急ぐので……今日も図書室で待ってます」


「了解です。必ず行きます」


俺がそう言うと彼女は少し俯き頷くと小走りになりながら玄関に向かっていった。


それを見届けた後、クッキーの袋を見る。四、五枚入っているだろうか……昼後の軽食にピッタリな量である。まさかのクッキーを貰えるとは、ありがたい臨時報酬だ。



そうだ、きっとこれは、ゲル状海知さんのお世話の代わりということか……


それでこれを……神さまも意外に優しいな!


よし、今日もゲル状海知さんのお世話頑張るか!!


ブクマ、評価、ぜひよろしくお願いします!

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