7 図書室での手伝い
昨日は沢山の評価、ブクマ、ありがとうございました!
作者、とても嬉しかったです!
あれからどれくらい時間が経っただろうか、体感では一瞬のように感じていた。しかし、窓の外を見ると、太陽は着々と沈んでいる。
「小鳥遊くん。お疲れ様です。手伝ってくれてありがとうございました」
紅茶を差し出しながら、律儀に嶋崎さんはお礼を述べた。
「そんなお礼を言われるようなことはしてませんよ」
「でも……大変でしたよね…………」
彼女は申し訳なさそうにそう言った。俺は彼女が、アルコールランプでお湯を沸かしている間にさっさと本を片付けてしまったのだ。結果的に嶋崎さんは何もしていないので申し訳ないと思っているのだろう。
「いや、大変と言ったら大変でしたけど、改めて図書委員の大変さを実感できたのでよかったです。嶋崎さんは本当にすごいですね」
「もぉ……小鳥遊くん」
彼女は、俺の言葉を聞くと困ったようなそれでも嬉しそうな不思議な顔をした。この期に及んで、まだこのことを言う俺に対しての困った顔とそれでも言われて嬉しい感情が交差しているのであろう。
「嶋崎さんは、毎日こんなことをして辛くないですか?」
俺は率直にそう尋ねた。こんな重労働、普通の人なら嫌になっていても不思議ではない。それも二人ではなく一人で全て行なっているんだ。
「それが……やめたいと思ったことは一度もありませんよ?」
「なんでですか?」
「う〜ん。そう言われると…………まあ、第一に本が好きなので」
彼女はそう言うと、本棚の方を見詰めた。その優しい視線は本当に本が大好きで大事にしていることがわかる視線であった。
「俺も好きになりました」
「な、なにをですか?」
「この本たち………いや、この図書室が」
「そうですか……それは嬉しいです」
彼女はその言葉を聞くとにこりと笑った。その笑った表情を見て、俺は一つ決めたことがあった。
「嶋崎さん」
「はい、なんでしょう?」
「嶋崎さんさえよければ、これから俺も図書委員会の仕事手伝ってもいいですか?」
「え……でも」
彼女は最初単純に驚き、その後少し困った顔をした。
俺としては、今日だけ手伝うつもりでさっきは言ったのだが、やっていくうちにやり甲斐を感じて、もっと図書室の仕事をしたいと思い始めていた。
だから、頼んだのだが、返ってきたのは予想外の反応。
「ダメですか?」
その表情をされるということは、やはりダメなのか?
「いえ、ダメというわけではないんですけど………小鳥遊くんが大変ではないですか?」
「いいんですよ、俺は部活なんてやってませんし、暇を持て余してますから」
「でも、手伝ってもらうばかりでは………」
彼女は対価が必要だと思っているのだろうか?そんなものは必要ないと俺は思うけど。
「別に手伝いたくて手伝うのでなんら問題ないですよ?」
「私は少し納得できません」
彼女は強気な姿勢であった。どうしてもここは譲れないのか、何度必要ないと言っても、納得できないと言う。本当に、ただ手伝いたいと思っただけなのに……
しかし、これ以上粘っても話が進む気がしない。どうやらここは俺が負けなければならないようだ。
「じゃあ、わかりました。俺が手伝う代わりに勉強を教えてください」
「べ、勉強ですか?小鳥遊くん、そんな頭悪く……」
「俺は、嶋崎さんと肩を並べられるくらいの存在になりたいんです!」
「えっ?か、か、肩を並べる!?」
「はい!肩を並べられる存在です!」
俺は国立大学を目標にしている。そこに合格するなら嶋崎さんくらいのレベルがなければダメだ。
だから俺は、どうしても嶋崎さんと肩を並べられる存在になりたかった。
「お願いします、嶋崎さん。まだ全然追いつきませんが、いつか、となりに……肩を並べられるようになりたいので、勉強を教えてください」
「ご、ごほん。小鳥遊くんが熱心なのはとても伝わってきました。私も図書委員の仕事を手伝ってもらっているので、そのお礼として勉強を教えます」
「ありがとうございます!嶋崎さんに追いつけるように頑張ります!」
「そして?」
「肩を並べられる存在に!」
俺がそう言うと、彼女は突然後ろを向いてしまった。
そして、何故か頰など肌が赤くなっている。
あれ?何か変なことを言っただろうか?そうか、嶋崎さんは熱血教師になりきって、意欲の高い俺がいて涙してるんだ。
もう役に入りきる……嶋崎さんはさすがだ。
「じゃあ、今日からよろしくお願いします!」
「きょ、今日からですか!?」
「一刻でも早く――」
「肩を並べたい?」
「はい、(順位が)となりにいれるように」
しかし、一番も目指したい。嶋崎さんを追い越したい!
俺がそんなことを思っていると、嶋崎さんは突然後ろを向いて、奥の本棚に向かって走り出した。
きっと本が落ちそうだったのであろう。くそっ、しっかり片付けたはずなのに、嶋崎さんの手を煩わせてしまった。
彼女は本棚に向かうと少し本をいじり、すぐに戻ってきた。
「すみません。本、片付いてませんでしたか?」
「え、、、い、いえ、大丈夫でしたよ?」
「じゃあなんで?」
「少し、順番が違っただけですっ!ホントにそれだけです」
彼女は何故か頰がまた赤くなっている。走ったせいなのか、夕日のせいなのかはわからないがとても可愛い嶋崎さんの姿がそこにはあった。
これから、初めての勉強会が始まる。
出来るだけ多く更新できるように頑張ります。
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