4 クール美女とお茶をする
久々の投稿となってしまいすみません。
夕焼けが差し込む図書室。室内には、アルコールランプでお湯を沸かして作った紅茶のほのかな香りが辺りを包んでいる。
俺は、嶋崎さんから出されたクッキーと紅茶を飲み、優雅なひとときを過ごしたいところだが、少しというか、かなりきになるところがあった。
「あの…………」
「はい?何でしょうか?」
俺が尋ねると、飲んでいた紅茶を一度置いて、こちら視線を向けてきた。
やはりだ。やはり彼女はどういうわけか、冷淡な瞳をしていない。そして、口調も柔らか。
それが俺にとっては、気味が悪い。今朝の状態を見たら尚更のこと。
こんなのを見せられてしまうと自分が何かしたのではないかとかなり不安になってくる。
「………俺、何かしましたか?」
全く身に覚えがないので、こう尋ねるしかない。
「………へぇ!?……いっ、いえ、何もしてないです………はぃ……」
彼女は、質問の意図がわからないのか、ただおどおどして答えた。それを聞いて、俺は質問を変える。
今の彼女の反応を見れば多分、俺は何もやっていなだろうから。
「嶋崎さんって、いつもこんな感じなんですか?」
今度は何を言いたいのか、理解したようで、彼女は視線を少し下に下げながら、答えだした。
「私………卑猥な目を向ける男子が嫌いなんです………」
「え?……」
彼女が言い出したのは、話しかけてくる男子が自分の身体に卑猥な視線を送っているいてとても嫌なこと、それで、塩対応をして男子から話し掛けられないようにしていたらしい。
「じゃあ、何で俺は?……」
彼女の意図を聞いたときに真っ先にこの疑問が頭に浮かんだ。
俺、オカマになったつもりないんだけど………
「小鳥遊くんは、いいんです………だって無害ですからね……」
俯きながら話すため、視線を合わせてもらえない。彼女の頰はいつにも増して赤らんでいる。
「無害ですか?……」
俺だって、一応男だ。無害とはどういう意味なのだろうか?
「いっかい………キスしたのに………さっきも私を卑猥な目で見なかったから……」
ポツリポツリと嶋崎さんは、言う。恥じらいのボルテージは最高潮になってるらしく、本当に今にも消え入りそうな声音だった。
そうか……やっと分かった。
嶋崎さんが、俺にこの態度をしている理由が。
きっと嶋崎さんは、信用してくれているのだ。俺が彼女をそんな目で見ないと……だから、素の状態なのだろう。
しかし、俺も卑猥な目を向けないほど、女子の身体に興味がないわけではない。
さっきは、偶々なんだ。だって、殺されると思ってたから。
そんな理由があるなんて、嶋崎さんは知らないだろうから、言わない。
だって、言ってまたあの塩対応されると、普通に怖いから。
俺の疑念もなくなったところで、再び紅茶を飲もうと紙コップを手に取ろうとしたその時、
嶋崎さんが、自分のカバンから一冊の本を取り出した。
「………それ」
「まさか、小鳥遊くんもご存知なんですか?」
彼女が取り出したのは、まさかのライトノベル。
俺が今、ハマって読んでいる本だった。
「俺もその本、読んでます……」
「……ほ、ほんとうですか!?」
妙に食いつきがいい。どうやら、彼女はよほどこの文庫のファンらしい。
「はい、俺はまだ四巻までしか読んでませんけど……」
彼女が持っていたのは、十二巻。確か、今月発売された最新巻だった気がする。
もう、そこまで読んでいるとは。勤勉なクール美女だ。
「あの…………もしかして、小鳥遊くんも読書好きなんですか?」
「まあ、本は好きです。推理小説でも、ライトノベルでも漫画でもどれもいけます……」
「へぇ…………そうなんですね」
どうやら、嶋崎さんは俺が読者好きなのが意外だったらしい。俺も嶋崎さんがライトノベルなんて意外だった。
「嶋崎さんも本読むのが好きなんですね。意外でした」
「そうですか?読書は勉学と共通するところがありますし、小説は漢字が覚えられるから好きですよ?」
さすが学年のクールビューティーは、勤勉だ。
読書さえも勉学に繋げてしまう。
実は、彼女、定期考査では、一年生の時からずっと一位だったりする。
その事実は、今日の昼、カイペディアから教えてもらった。
俺も勉強は得意な方だが、彼女には到底及ばない。
これは、彼女に勉学の方法を教えてもらえる又とないチャンスなのでは?と思い尋ねようとすると、
キンコンカンコン〜〜〜
と完全下校を知らせる学校のチャイムが鳴った。
ちくしょう……せっかくお話が聞けるチャンスだったのに……
俺が、そんなことを考えて、一人で悔しがっていると、彼女は椅子から立ち上がりさっさと下校の支度を始めた。俺も、立ち上がって紙コップの後始末などを手伝った。
そして、支度が終わると、図書室を出た。
校内を共に歩く。もう、校内には殆ど生徒が残っていなかったので、誰ともすれ違わない。
それを見て、俺が嶋崎さんに、勉学の方法を教わろうと思い尋ねようとすると、
「あの………小鳥遊くん。よかったら明日も図書室に………来ませんか?」
恥じらっているのか、視線は合わせない。
夕焼けのせいか、本当に頰が赤らんでいるのかはわからないが彼女の頰は茜色だった。
「はい、もちろん。俺でよければ………」
即答した。俺としても尋ねたいことがあったから願ったり叶ったりだ。
それを聞いた、嶋崎さんは小声で「お待ちしてます」
と言った。
そのあと校門でそれぞれ別れ、帰路についた。
ゆっくり進める予定なのでよろしくお願いします。