2 突然美女に誘われる。
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翌日
今日は俺の一番嫌いな曜日だ。
その名を月曜日という。
休日という至福のひとときを過ごしていたにもかかわらず、この単語のせいで俺は再び学校に登校しなければならないからだ。
この日は、やはりナーバスになる。しかし、サボることは許されない。高校というのは自発的に通学するものなので、不登校児はそのままほっとかれる。
大学進学を希望している俺にとっては、そんな選択はできないのだ。
いつも通りの通学路を歩いていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。
振り返ると、満面の笑みを浮かべてこちらを見る男子がいた。
海里海知――それが彼の名前だ。
中学時代からの俺の友人は、普通しか取り柄のない冴えない男だ。
まあ、それは、俺も同じなのだけれど……
海知とは、中学のバトミントン部で、一緒だった。
俺の悩み事を話せる数少ない友人だ。
そんな海知は今日も元気に俺に挨拶する。
「よぉ〜、朝から目が死んでんなぁ……」
「一言目がそれかよ……」
「月曜日だけ出現するイベントだしなぁ……」
「ゲームイベントみたいにいうな、ポ○モンじゃねーよ」
「目は、死んだコ○キングだな」
「進化したら強くなれるからいいんだよ……強パ確定だぞ?羨ましいだろ?」
「立ち直るなよ……どうせ努力値なんて皆無だろ?」
「まあ、そりゃそうだな」
こんな感じで学校までふざけ合うのが朝の日課である。
学校の校門に到着すると、人で溢れかえっている。
さすが、ひと学年6クラスの学校である。
都会では普通かもしれないが、ここはそんなに都会じゃない。ここら辺の学校にしては、大きい学校だった。
玄関に向かおうとしていたら、また背中をトントンと叩かれた。
今日は、やたら海知が背中叩いてくるなぁ……俺、そんな肩こってないんだけど……
とか、思って振り返ると、叩いた主は、昨日溺れて助けたあの女性であった。
うちの学校の制服に身を包んでいる。どこかで見たことあるような気がしていたけど、うちの学校の生徒だったのか……
「あれ……たしか、昨日の……」
俺がそう言うと、彼女は、
「はい、昨日あなたに助けられた者です。昨日は本当にありがとうございました」
と、ピシッとお礼を言ってきた。瞳は冷淡、口調も柔らかくない、昨日の焦った感じなんて皆無な女性だった。
「ああ、はい……」
俺が呆気に取られていると、横で海知が『お前、あの嶋崎未来さんになんかしたの?』と聞いてきた。
俺が回答に困っていると彼女は、海知に『はい、彼に助けてもらいました』とこれまた冷淡に答えた。
「そ、そうなんですね…………」と海知も畏縮した。
「私は、嶋崎未来と申します。どうかお名前をお聞かせ願えないでしょうか?」
そう聞かれたので、取り敢えず「小鳥遊凪です」と自己紹介した。
そうすると、
「小鳥遊さん………ああ、あの小鳥遊さんね……」
と何やら自分で納得している様子。そうして、暫く考え込んでいたかと思えば、
「小鳥遊さん、放課後図書室にいらして下さい。少しお話しがあります」
これは、普通の高校生なら完全にお誘いなのだが、彼女の目は全く笑っていない。
ただひたすらに冷淡を極めるだけ。その威圧に押されて俺は、「はい……」と消え入りそうな声音で答えた。
そして、彼女は玄関へと、歩き出す。
気付けば、かなり通行の邪魔になっていたので俺と海知も歩いた。
嶋崎さんの歩く速度は速い、すぐさま見えなくなった。
彼女の姿が見えなくなると、隣で歩いていた海知が話し掛けてきた。
「お前、マジであの嶋崎未来になにしたの?」
「困ってたから助けた?」
彼女にもプライドがあるだろうから内容は伏せておいた。
「そうか……でも、お前あの塩対応で有名なクールビューティの嶋崎さんに話しかけられるなんてな……」
「なんだそれ……あの人の二つ名?」
「アニメの見過ぎだよ……異名と言えばいいんじゃね?」
「対して変わんねーよ」
「そうか、たしかに……」
ガチめに納得しているところ悪いんだけど……
もうちょっと情報ちょうだい?
「で、その嶋崎さんがどうしたんだよ?」
「お前が、嶋崎さんの事でその反応の方がすげぇよ。あの人、普段自分から話しかけるなんてまずしないんだぜ?学年のイケメンが告っても速攻で振るし」
「だからなんだよ?」
「え?待ってお前ホントに知らない?ほら、塩対応の!お前去年学級委員会でその人のこと俺に話してたじゃん」
海知がお前の記憶力大丈夫か?的な目を向けてくる。
失敬な、ボケてねーよ!
記憶を思い起こしてみる。
去年俺は、学級委員になった事があった。
年一度、学年の学級委員が集まる学級委員会、そこに彼女もいて、俺はその人を海知に話してたらしい。
そんな感じで状況整理をしながら、遡ってみると記憶が蘇ってきた。
ああ、あの時のなんか冷め切った女か……
思い出した。話しかけると素っ気ない塩対応をするクールビューティを。
確かに似ている、さっきのあれは、塩対応で有名な学年の美女、嶋崎未来だ。
確かにアレは印象的だった。俺をミジンコ以下の生命体のように見ているようなそんな感じだった気がする。
だが、相手も人間だろ?俺は、呼び名とかで人をみたりしないから関係ない。
「思い出したけど……だからなんだよ?」
俺は再び同じ問いを投げかけた。
「男子全員がお前を恨むぞ?」
どうやら俺が彼女から話しかけられたから男子全員から恨みを買うらしい。
「お前もか?」
「いや、話せたからオッケーです!」
「なんだよそれ………」
「でも、お前、そんな人に直々に呼び出させるなんて……もしかしたら殺されるんじゃね?」
「もうちょっと生きてたいなぁ……」
ふざけてそんな風に返答したが、果たして彼女がそんな事するだろうか?
だって昨日はそんな感じ微塵もしなかったから。
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