12 本屋で本を買う
「そう言えば、嶋崎さんってどんな本を探しているんですか?」
本屋さんの店内。隣で歩く嶋崎さんにそう尋ねた。
「小鳥遊くん!店内では静かに!」
「あ、すみません……でも、嶋崎さんも……」
「あっ、」
嶋崎さんも大きな声を出していることを気付いたらしく、少し恥ずかしそうに小声で「すみません……」と謝ってきた。
「それで嶋崎さん、どんな本を買うんですか?」
今度はうるさくならないように小さい声……ヒソヒソ話くらいの声音で嶋崎さんに話しかけた。
「はい、私は今回新作の小説と、ノートを買いに来ました」
「そうなんですね。そう言えば、あのラノベの最新巻って買わないんですか?」
「最新巻は来月発売なので、まだ買いません。」
「楽しみですか?来月」
「それはもう」
「俺も早く追いつきます」
最近は何かと勉強に力を入れていたため、全然ラノベが読めていない。嶋崎さんが推していて俺も読んでいたあのラノベもまだ全然進んでいない。
早く読まなければ……
「今度、もしよかったら……感想を言い合うなど……」
嶋崎さんが少し頰を赤くしながら、俺に言ってきたため、
「はい、もちろんです!」
とついつい普通の声音で話してしまった。それを見た嶋崎さんは慌てて指を口の前で立てて、「たっ、小鳥遊くん、静かにです」と小声で言った。
やれやれ、また忘れてしまっていた。彼女が感想を言い合いたいと言ってくれたから嬉しくなってしまったのだ。
ちょうど、俺もラノベのことを話せる人と話をしたかったし。今度、読んでいる巻までの感想大会をしてみよう。
そんなことを思いながら、俺は嶋崎さんについていく。今回はラノベではなく普通の小説だった。
嶋崎さんは店員オススメの棚に置いてあった一冊の本を手に取る。
「今回は、それを買うんですか?」
「はい、ニュースでやっていたので、読んでみようかと……」
「面白そうでしたか?」
「はい、面白そうでした」
嶋崎さんが言うなら間違いはないだろう。
「じゃあ、俺も買ってみようかな?」
「あ、あの………お金が勿体無いと思うので、後でよければ私の読んでいいですよ?」
「あ、え?いいんですか?」
「はい、私も感想大会をしたいので……」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえ……」
嶋崎さんはその本を握りながら、次は授業用ノートのコーナーに向かった。
「確か、まとめて売っていたのがあったはずです」
ノートコーナーに着くと、嶋崎さんはまとめ売りのノートがないか探し始めた。
俺は何もすることがないのでその場に立ち尽くしていると、
「あ、時間かかるので他のところ見ててください」
と言われた。正直、俺も他のところも見てみたかったのでその言葉に甘えて本を探すことにした。
オススメコーナーを見渡していると、一冊の本が目に留まった。
「あれ?これ確か、海知が前に言っていた、よく当たると噂の占いの本」
海知レビューによると、ホントによく当たると評判の本らしい。ネットの口コミでも高評価だとか……
そんなに当たるなら、、、と軽い気持ちでその本を手にとってみた。
「えーと。あなたの性別、誕生日、血液型、得意なスポーツで性格がわかる?」
俺は、その誕生日、血液型、得意なスポーツを当てはめてみた。
誕生日は、6月24日。血液型o型。得意なスポーツバトミントン。
半信半疑でそのページ数のめくってみると、そこに書かれていた性格は、、、
『貴方は勘違いしやすい性格、そして割と鈍感』
と書かれていた。
全く自覚なしなんだが………
これ、本当によく当たる、占いなのか?
勘違いしやすいは、たまにあるけど鈍感とか言われた試しがないんだが……
怪しくなって、もう一つの項目を適当に調べようとしていると、嶋崎さんがノートを持ってきたこちらにやってきた。
「お待たせしました。えっと……何やっているのですか?」
「ああ、よく当たると噂の占いの本があったので、調べてみていたんです、嶋崎さんはそう言うの信じるタイプですか?」
「いいえ、全く信じないですね」
「なるほど……」
「小鳥遊くんは?」
「俺は半々ですね。都合が良ければ信じてしまうかもしれません。」
「そうなんですね……」
「今、性格を調べて、あまり当たっていなかったので、もう一つ調べてみようかと……」
「へ、へぇ……」
また一から、やり直すのは面倒なため、マイナーな運命の人の出会い運について占うことにした。
それを知るためには、さっきの項目と性格を当てはめればいいのだ。
性格欄に不本意ながらも鈍感と入力して調べてみた。
「あ、あった……えーと、貴方は今年にとても大切な存在と出会うでしょう。」
「そうなんですね……」
「まあ、占いだからどうなるかわかりませんよ?」
と言いながらも続きを読んでみる。
「えっと、その人の特徴は、年齢は同い年で、血液型はA型」
「な、なるほど……」
彼女が何故かそれを聞いてそわそわしている、どうしたんだろうか?
「えっと、誕生日は9月14日」
「なっ……」
「どうしましたか?」
「いえ……」
「長所は、勉強」
「んっ……」
「またまたどうしました?」
「い、いえ、なんでもないです」
なんだが、彼女が俯いてとても赤くなっているのだが、どうしたのだろうか?
少し心配だが続きを読もう。
「その人は、雨……などの水がとても嫌いな人」
これが最後の特徴だった。かなり詳しく書かれていたが、果たしてそんな人と今年の内に会うのだろうか?
やっぱり、占いは占いなのかもしれない。そう思って本を閉じると、嶋崎さんはまだ俯いたまま。
「あの、嶋崎さん?終わりましたよ?」
「はっ!はい、わかりました」
「やっぱり、占いはわかりませんね」
俺が嶋崎さんにそう言うと、彼女は、
「そ、そうですかね?私はいいと思いますよ?占い。娯楽にはピッタリではないでしょうか?」
なんとさっきまで信じていないと言っていた嶋崎さんが一転して真逆のことを言い出した。
どう言う風の吹き回しだろう。
とても有意義な本屋の時間だったがそれだけが不思議でならなかった。
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