11 本屋の前で
申し訳ありません。時間がなかったため今日は短めです。
相合傘をして、下校道を歩いた。いつもなら曲がる曲がり角を曲がらずに真っ直ぐ歩き本屋に向かう。
天候のせいか、いつもよりも日暮れが早い。
次第に暗くなるのを感じながら俺たちは歩いていた。
「あ、見えてきましたね」
隣にいる嶋崎さんが本屋の方を指差した。それに「そうですね〜」と言いながら横目で嶋崎さんを見ると、本当に近距離である。フレアフレグランスのとてもいい香りがする。改めて、彼女の美しさに気がついた瞬間だった。
「では、行きますか」
店について傘を畳んだ嶋崎さんが俺の方を向いてそう言う。
「はい、そうですね」
俺はそう言ってから、彼女に近づいて、
「俺が傘持ってますよ」
と言った。きっと彼女は本探しに夢中になるはずだ。その時に傘があると邪魔になりそうだったので、申し出た。
「えっ……いいですよ……気にしないでください」
彼女は首を縦に振らない。
「いやいや、傘に入れてもらったのでこのくらいのことはさせてください」
俺も意地を張った。ここだけは譲れない。
「いえいえ、本当に大丈夫ですから!」
「いえいえ!あんなご褒美的なことをしてもらったのに、何もしてないなんて俺が許せません!!」
この言葉を発した時に、俺は、しまった……と思った。ついつい、もう一つの理由………もう一つの本音が出てしまったのだ。
「ご、ご褒美?ですか?」
今回はしっかり聞かれていたらしい。
……だって嶋崎さんと一緒に相合傘をしたのだ。嬉しくないわけがないしはっきり言ってご褒美だった。
口を滑らせてしまったのは反省だが、もう、こうなったら、そのまま言い通してやる。
「そうですよ、ご褒美ですよ、だって嶋崎さんと相合傘ができましたから!嬉しいし、ご褒美に決まってます!」
「そ、そうなんですか!?」
「そうです!だから、これくらいはさせてください!」
嶋崎さんは数秒俯いてから、無言で傘を渡してきた。
これは、怒ったか?
自分でもしつこ過ぎた自覚はあった。それにあんなにはしたない男子丸出しな言動を言ったら………
嫌われるかもな………
嶋崎さんは歩き出す、俺はその場に止まって彼女の後ろ姿を眺めていると、突然彼女が、振り返って、
「さあ、早く入りましょ?小鳥遊くんどうしたんですか?」
といつもと変わらぬ様子………いや、それよりもなんか笑顔なんだが………
何故か彼女の顔からは笑みが零れていた。あれ?おかしいな……嫌われてしまったと思ったのに。
なんかしたか俺?
そう思って、その場に立ち尽くしていると、嶋崎さんが小走りで戻ってきて、俺の手を握り引っ張る。
「ちょ、ちょっと!?嶋崎さん?」
「さあ、行きましょ?私もお返しですっ!」
そう言って俺は本屋に引っ張られていった。
しかし、お返しとはどういう意味だったのだろうか?それだけが謎だった。
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