少年ヨルンと魔女の果樹園2
「チルツフツステフツツツアラツマアサマサタアハウライラッ!レリゴッ!ィィイッハァーー!」
深い深い森の奥、魔女の秘密の果樹園で奇声が響き渡ります。
やたら軽やかな足取りで逃げ回る案山子をひたすら追いかけまわします。
「頑張れ少年、森の平和は君にかかってるよ」
魔女はどこから出したのかわかりませんが、座り心地の良さそうな敷物を地面に敷いて僕を応援してくれています。
ティーセットまで置いてます。
あ、本も取り出しました。
一切こっちをみてません。
別にいいです。
さて、どうしたものですかね。
案山子さんは動きが早いですからね。
とりあえず追いかけてみます。
まずは、帽子をかぶって背が小さくて金色の髪の毛っぽいものが見えている案山子から狙います。
なんだか他に比べて動きが鈍いですからね。
「チラッヘムレテフツルツムハテフルツルツルペタペタヘペベベペ」
なんだかこっちをみて文句を言っているように見えます。
よく見ると服装や大きさが魔女によく似てますね。
「魔女二号と名付けよう、覚悟しろ魔女二号」
ピシッと杖を魔女二号に突き付けます。
「痛い!?」
それと同時に後頭部に何かぶつかりました。
他の案山子が後ろにいる?
振り返ると魔女がこっちに向けて杖を向けていました。
「さすがに失礼すぎじゃあ無いかい? あれが僕二号なんて」
魔女1号でした。
「まだ言うのか」
どんぐりが飛んできました。 風のような速さで。
「痛いっ!?」
心を読まれましたね、やるなぁ魔女いちごっ。
「痛い、ごめんなさい魔女! 痛いからドングリやめて! 魔女!?」
魔女がどんどんドングリを飛ばしてきます。
魔女の周りに何個もどんぐりが浮いています。
それが次々飛んできます。
「タコタケソハムハヤナヒユヌネソムキイィァハムッッぶべらっ!?」
あ、魔女が飛ばしたどんぐりが案山子のうちの一人の頭に当たりました。
弾け飛びました。 案山子の頭が。
「ねぇ魔女!? それ当たっても大丈夫なやつなの!? 絶対痛いよね!? 痛いで済むやつなの!?」
「今日は随分元気に喋るじゃ無いか。 僕の事を馬鹿にするのはどうやら楽しいみたいだね? 存分に楽しめば良いよ」
だんだんと飛んでくるものが色々な物になってきました。
「僕も楽しむから。 君の子どもらしい驚いた顔も、その高い声の悲鳴も、すごく楽しいよ、ありがとうヨルン、今日は良い日だね」
魔女が嬉しそうで何よりです。
「大丈夫、怪我しても治してあげるから。 腕や足が千切れるくらいなら一瞬で治してあげるから」
それはそうと、果たして僕は、無事に今日帰れるのかな。